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名家の末娘に転生したので、家族と猫メイドに愛されながら領内を豊かにします!  作者:
守る仕組み

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54/105

人が増えた、その先へ――静かな再配置と領地の呼吸

人口調査が一段落したのは、あの騒ぎから十日ほど経った頃だった。


机の上に積まれた紙束を見下ろしながら、フィリアは深く息を吐く。


「……うん。大体は、把握できたわね」


完全ではない。

だが、“何も分からない”状態からは、確実に脱した。


ガルドが横で書類を確認しながら頷く。


「世帯数、年齢構成、職種、大まかな居住位置。少なくとも“誰がどこで何をしているか分からない”という最悪の状況は脱しましたな」


文官の一人が補足する。


「特に移住者の内訳がはっきりしました」


・木工・大工系職人と見習い

・その家族(配偶者・子供・老人)

・職を求めて来たが、まだ所属が決まっていない者

・噂を聞いて来て、空き家に“とりあえず住み着いた”者


「……“勝手に住み着いた人”って、字面が強いわね」


フィリアが苦笑すると、文官も困ったように笑った。


「悪意はありません。大半が『ここなら働けそうだ』と考えて来た人たちです」


「うん、それは分かってる」


問題は――

人が悪いかどうかではなく、配置が合っているかどうかだ。



■人材の再配置


フィリアは地図を広げ、指でなぞる。


「じゃあ、不足してるところから埋めましょう」


まず目を向けたのは――


・薪の供給

・簡易住宅の維持補修

・水路・井戸の管理

・農地の拡張と補助作業


「木工に集中しすぎて、生活基盤が置いてきぼりだったわね」


ガルドが頷く。


「職人は増えたが、それを支える仕事が足らん」


そこで――


・木工見習いの一部を「建築補助」に回す

・農業経験者を優先的に畑と開墾へ

・体力のある単身者を薪・水路班へ

・高齢者や手先の器用な者を倉庫管理や検品へ


「“全員が最前線で稼ぐ”必要はないのよね」


「回る仕組みがあれば、全体が強くなるな」


配置替えは強制ではなく、面談形式で行った。

意外にも不満は少なかった。


「役割がはっきりした方が助かる」


「何をすればいいか分かるのはありがたい」


そんな声が多かった。



■学校の配置を決める


次に決めたのは、寺子屋――いや、もう学校と呼ぶべき施設だ。


「今建築中の一ヶ所に纏めよう」


地図には、三つの村が大きく丸で囲まれている。


「この三点の中心付近のみにしましょう」


文官が目を丸くした。


「歩いて通える距離だし、教育人員も余っていないから!」


・子供

・大人

・移住者


誰もが“生活のついで”に学べる位置。


「教育は特別なものじゃなくて、日常に溶け込ませたいの」


ガルドは静かに感心したように言った。


「……無理なく、長く続く配置か」



■しばらく、様子を見る


再配置と学校計画を終えたあと、フィリアは椅子に深く座り直した。


「……あとは、少し様子見ね」


すぐに新しい施策を打ち続けると、現場が疲弊する。


・人が配置に慣れるか

・生活に不満が出ないか

・思わぬ問題が浮上しないか


「出てきた問題を、潰していきましょう」


文官たちは深く頷いた。



■砂糖生産の現状


最後に確認したのは――砂糖。


「生産量は?」


「徐々に、ですが確実に増えています」


甜菜の処理、精製、乾燥。

どれも人手と慣れが必要だが、流れは安定し始めていた。


「出荷は……もう少し待ちましょう」


今は内部需要と備蓄を優先。


「焦らなくていい。続く形を作るのが先よ」



夜。


執務室を出たフィリアは、領地を見渡した。


灯りが増えた。

人の気配がある。

騒がしいが――崩れてはいない。


「……大丈夫」


呟いたその声は、自分自身への確認だった。


この領地は、まだ成長の途中。

そして――ちゃんと、呼吸を始めていた。


次に問題が起きたら、また考えればいい。


そう思いながら、フィリアは静かに夜道を歩いた。

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