人口爆増で領地崩壊の危機!?
■王都――報告書を受け取った王、震える
翌朝。
王城の一室では、封緘使が届けた分厚い書簡を前に、国王・宰相・農務大臣・学術院長が青い顔をして固まっていた。
「……これは、冗談ではあるまいな?」
宰相が震える声でつぶやく。
「冗談ならどれほど良いか……」
農務大臣は書簡を持つ手を震わせながら言った。
書簡には――
・青天麦は収穫量3割増の高耐性麦
・銀光豆は兵糧級の超保存豆
・蒼霧草は強力な薬草
・金露の木は甘味料
・赤花コショウはスパイス
と明記されていた。
「金露の木、赤花コショウはまだしも他の物は雑草扱いで流通しておらず、発見者はフィリア様」
と書かれている。
王は額を押さえた。
「……甜菜砂糖に続いて、今度は“国を揺るがす五大宝植物”か……あの子は一体どこまでやるつもりなのだ……?」
学術院長は書簡を読み返して目をこすった。
「青天麦は……飢饉対策の最前線に出せます。
銀光豆は保存食革命です。輸送軍にも必要です。蒼霧草は……薬学書を書き換えるレベルですよ!」
農務大臣が叫ぶ。
「五つとも国家資産級!王国の歴史がひっくり返るぞこれは!」
宰相は胸を押さえた。
「まずい……対応を誤れば貴族同士の奪い合いも起こりかねん……!」
王は椅子から立ち上がり、踵を打ち鳴らした。
「――研究所を動かせ。院長、直ちに“宝植物特別研究班”を設立せよ!そして他領へ金露の木、赤花コショウ以外の拡散計画を今すぐ立案だ!」
「はっ!!」
王は書簡を強く握り直した。
「……フィリア。君の判断は正しい。だが、この国は……君に頼りすぎているな……」
王城は朝から晩まで、宝植物対応に奔走する大騒ぎとなった。
一方その頃――
⸻
■領地――人口2.6倍の衝撃!
「……この数字、本当に合ってるの?」
フィリアは、予備集計の紙を二度見した。
【領内人口:先月比 2.6倍】
文官は首をガクガク振りながら答える。
「く、繰り返し確認しました……ですが移住者の数があまりにも多すぎて……!」
・寺子屋を求めて来た家族
・仕事を求めて来た職人見習い
・噂を聞いて流れ込んできた漂流者
・さらには食材・家畜導入の話を聞いた農家一家まで
「……食料も家も……まったく足りない……!」
フィリアは頭を抱えた。
そこに文官の叫び声。
「さらに!今後も増える見込みです!!」
「なんで!?なんで来るのこんなに!?」
文官は泣きそうな声で答える。
「“働けば食える領地”という噂が国中に……」
「あああーーーそれ言っちゃったのか……!」
嬉しいような困るような……
■急遽、“全住民大規模調査”を開始!
フィリアは立ち上がった。
「よし……全住民の“総人口調査”をする!
移住者の職業、家族構成、住居希望、保有スキル――全部調べる!」
封緘使たちが動き出す。
・各村に調査班を派遣
・テント住まいの人の把握
・子供・老人の人数
・職人の技能レベルチェック
・家畜飼育経験者のリスト化
・医者、薬草師、鍛冶志望者も分類
文官が言った。
「領主様、村が多すぎて人手が足りません……!」
「なら、寺子屋の高等生徒にも手伝ってもらおう!」
教育された子供たちは優秀だ。
数字を扱わせるには最高の人材だった。
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■生活基盤整備――まずは“住む場所”から
人口が2.6倍になって最初に困るのは“住居”。
「テントから家に移ってもらわないと……冬が越せない!」
木工場は建設したばかりで職人不足。
だが――
「とにかく仮設住宅を大量に建てよう!
木材は工場の老人職人に選別してもらって、
見習い達はひたすら組み立てに専念!」
木工見習い達は不慣れながらも汗を流し、
次々と簡易住宅を組み上げていく。
鍛冶屋見習いが釘を作り、農家出身者が土台の整地を手伝う。
「領主様、作業がうまく回り始めました!」
「よし、この調子でいこう!」
■食料問題――青天麦が“救いの光”に
「領主様、移住者の食料が不足しています!」
「……青天麦の試験栽培を急ごう!この麦は雨に強いから、畑の整備が終わってなくても植えられる!」
農家たちの目が輝いた。
「倒れにくい麦なら、開墾地でも育ちます!」
「救いの神だわ……」
大量の移住者が働き手になったことで、
畑の開墾スピードも急上昇する。
■薬草需要の増加――蒼霧草が注目される
調査の結果、怪我人や病人も多いと判明した。
「蒼霧草の簡易薬だけでも作ろう!寺子屋で薬学班を組んで!」
薬草好きの子供たちが嬉々として作業を始める。
「煮出すと色が変わるよ!」
「これ、解熱効果すごいね!」
領地に、小さな“薬学革命”の火がついた。
■銀光豆――保存食として全員に分配
食料不足が続く中、銀光豆が評価された。
「乾燥豆なのに、煮るとすごく美味い!」
「腹持ちもいい!」
移住者たちの不安が和らいでいく。
■そして再び――王都からの急報!
忙しい最中、伝令が駆け込んだ。
「フィリア様に緊急通達!!王都より――“宝植物の国家級研究班”設立の知らせ!」
フィリアは息を呑む。
「……動いたんだ、王様……」
伝令は続ける。
「青天麦・銀光豆・蒼霧草は、王命により全国展開を前提とした調査・研究体制へ入るとのこと!」
文官が震える声で言う。
「フィリア様……本当に、国の歴史が変わりますよ!」
フィリアは静かに首を振る。
「まだ。まだ何も変わってないよ。変えるために……まずは、この領地を生きられる場所にしないと」
人口が増え続ける領地。
生活基盤の整備。
宝植物の研究。
王都との連携。
仕事は山のようにある。
だが――
フィリアの目には、不思議な光が宿っていた。
「さぁ、次は“本調査”だ。この領地の未来をつくるために――動くぞ!」




