家族の“秘密”ってなに?赤ちゃん、情報収集中!
ミュネが残した言葉――
「この家には秘密が多い」
これがずっと頭の中でぐるぐるしていた。
(何それめっちゃ気になるんだけど!?)
……でも赤ちゃんだから、できることは非常に少ない。
できることといえば――
・寝る
・泣く
・ミュネの尻尾を見る
・たまに鑑定
このくらいだ。
そんなある日。いつものように母様が抱っこしながら優しく揺らしてくれていた。
その隅で、レオン兄様とガルド父様がひそひそと話している声が聞こえた。
(お!?秘密っぽい会議始まった!?)
赤ちゃんのふりしながら、必死で耳をすませる。
「……例の件、王都から使者が来るらしい」
「早いな。ローガル家の“血”が関係していると知られたか……」
(ちょっ……いきなり重要そうな単語出た!?)
“血”ってなに?
ローガル家ってただの辺境伯じゃないの?
もっと聞きたいのに、母様が私をぎゅーっと抱いて頬ずりしてくる。
「今日も可愛いわねぇ、フィリア♡」
(お母様〜!今だけは静かに〜!!)
兄様と父様の声はだんだんと遠ざかり、完全に聞き逃してしまった。
悔しい。
その後、部屋に戻されると、ミュネがにゃんっと入ってきた。
尻尾が揺れていて、機嫌はよさそう。
「フィリア様、今日もご機嫌ですねにゃ」
(いや、全然ご機嫌じゃないんだけど!?情報が欲しいのに~~!)
私はせめてものアピールとして、ミュネの尻尾を掴もうと手を伸ばす。もちろん届かない。赤ちゃんの短い手では無理だ。
するとミュネはクスッと笑って、わざと尻尾を私の手元に置いてきた。
「……心配しないでいいですにゃ。フィリア様が大きくなれば、きっとすべて分かります」
(いや、その言い回しが余計に気になるの!!)
ミュネは私を見つめてふわっと微笑む。
「それに……フィリア様の魔力、今日また少し増えてる気がしますにゃ」
(増えてる!? “調整不能”のせい!?)
ミュネは尻尾で私の手をくすぐりながら続ける。
「……内緒にしててほしいなら、ミュネは守りますにゃ。でも、無理はしないでください」
(優しすぎる……ミュネ……!)
その優しさに感動しつつも、
また一つ新しい謎が増えた。
・ローガル家の“血”とは?
・なぜ王都が絡んでいる?
・私の魔力はどうして勝手に増えるの?
情報は全然足りない。
でも――
(赤ちゃんだから、できない……!)
今日は「くぅ〜」と泣くしかできない私だった。
――どうやら、この家の秘密は私が思っていたよりも、ずっと大きなものらしい。




