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名家の末娘に転生したので、家族と猫メイドに愛されながら領内を豊かにします!  作者:
守る仕組み

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封緘使気づいてしまう“軍用転換”の恐ろしさと、久々の胸の高鳴り

木工場の建設計画が進む中、封緘使は人々の喧騒から少し離れ、丘の上から領地全体を見下ろしていた。


風にマントをはためかせながら、彼は目を細める。


(……姫様は気づいておらんのだろうな)


2×4規格材。

大量生産された角材。

同寸法の壁パネル。

平地での迅速な基礎作り。


(この方式……軍用に転換すれば、“要塞”が短期間でできてしまう)


短い期間で壁が立ち、計算された区画に沿って戦闘施設を積み上げ、防壁を連続して敷設できる。


封緘使は戦場で幾多の補給基地の建設を見てきたが、それでも数週間かかるものだった。


だが姫様の建築方式なら――


(……最短三日で“軍営”が立つ。最悪、戦が起きれば、この領地が戦略拠点として争奪される)


恐ろしいまでの有用性。


しかし同時に、彼の胸の奥で別の感情が沸き上がっていた。


(……おかしいな。私はもう“戦う者”ではないと、今回を最後に引退を決めたはずだったのに)


気づけば胸が高鳴っている。


この領地は、今まさに“文明の黎明期”に立っている。そして自分は、その瞬間を間近で見ている。


(面白い……実に面白い……!)


封緘使は思わず口角を上げた。


それは、戦場で「何かが始まる」と直感した時と同じ高揚だった。



そんな時だった。


ふと、領主館の庭先で、姫様が何やら見慣れぬ板を並べていた。


黒と白の丸い石。

格子状の盤。


封緘使は思わず声をかけた。


「姫様、それは……何を?」


姫様はニコッと振り返った。


「リバーシ!裏返して遊ぶゲームだよ! 試作品作ってみたの!」


「……リバーシ?」


封緘使は興味深げに近づく。


「黒と白の石を置いて、相手の石を挟んで裏返していくの。最後に多いほうが勝ち!」


簡単に説明しながら、姫様は胸を張った。


「封緘使さん! 私と勝負しよ!」


封緘使は少し笑った。


「よかろう。老体の暇つぶしには丁度良い」



――数分後。


盤面には、白黒の石がびっしり。


封緘使の黒:45

姫様の白:19


姫様

「…………え?」


ティロ(見物)

「ひ、姫様!? 圧倒的負け……!」


ミュネ(見物)

「封緘使様が……強すぎるにゃ!?」


封緘使は微笑みながら石を指先で弾いた。


「姫様、戦略ゲームは好きでしてな。軍での作戦会議のようで、つい本気になってしまいました」


姫様は悔しそうに頬を膨らませる。


「くぅぅ……! 初勝負で負けるなんて……!」


封緘使は盤を丁寧に整えながら言った。


「しかし……これは良い。子供から老人まで遊べる。教育にも使える。盤と駒を量産できれば、玩具として売り出す価値が十分にありますぞ」


「ほんと!?」


「ええ。戦略性があり、なおかつ簡単……久々に楽しませてもらいました」


そう言う封緘使の表情は、どこか若返って見えた。


(……結局私は、この領地がどうなるか、最後まで見届けたくなってしまったようだ)


心の中で苦笑する。



その頃、外では――


ルード

「姫様!! 新たに“石工職人”“染物師”“皮革加工職人”“家畜医師”なども到着しました!!」


ティロ

「また来たぁぁぁ!!」


封緘使は立ち上がると、マントを翻しながら言った。


「……さて、遊んでばかりもいられませんな。姫様。文明を前へ進めるとしますか」


姫様は悔しさを残しつつ笑った。


「うん! 次は絶対勝つから!」


「それは楽しみですな」


こうして――


領地の産業革命は、軍人の心すら再び燃やし始めていた。

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