人がいない!?──じいじの神案“土地プレゼント移住計画”始動!
開発祝金が届き、領主館は一気に明るい空気に包まれた。
……が。
その喜びも、ほんの数分で霧散した。
文官ルードが、疲れ切った顔で書類を抱えながら言った。
「姫様……産業拡大の“最大の壁”が浮上しました」
「最大の壁?」
「人手が、いません」
ミュネ「にゃ……」
ティロ「ですよねぇえええ……!」
封緘使「人口二百六十は……もはや村だ」
ルードが指を折りながら説明する。
「透明樹液板工房、薪加工、玩具製造、家畜飼育、農地拡張……
どれも『担当者』がいないのです」
ティロが震える声で言う。
「このままだと……俺が牛の世話をしつつ菓子を作り、ついでに積み木を削る事に……!」
ミュネ
「わ、私が透明板の研磨と、牧場の掃除!? 無理にゃ!」
封緘使
「そんな労働力の使い方したら、この領地死ぬぞ……」
ルードも深刻な声を落とした。
「姫様……“移住者”を募集する必要がございます。しかし……」
「しかし?」
「お金がありません。先程の金貨も移住者に直接払ってしまったら直ぐに無くなります。家なども建てなければなりませぬし‥」
(そこに戻る!?)
封緘使が手を振る。
「もう私の財布は当てにしないでくれ……
さっき鶏と牛を買ったら、財布の中が“カラ”になった」
ミュネ
「封緘使様の財布まで限界なのにゃ……」
ティロ
「となると……移住者への“給金”も“支度金”も出せない……」
私は頭を抱えた。
(人手が無い→呼びたい→でもお金が無い→じゃあ作れない……これ、詰んでない?)
そんな絶望ムードの中――
杖をつく音がコツン、と響く。
ゆっくり歩いてきたのは、我が領の誇る大黒柱。
じいじ(領主)だ。
「お前たち……なぜ頭を抱えておる?」
ルードが泣きそうな顔で訴える。
「領主様……人手が足りません!移住者を呼びたくても、お金が……!」
じいじは顎髭を撫でながら、あっさり言った。
「金が無いなら、金の代わりに“土地”をやれば良かろう」
……静寂。
私
「………………え?」
ルード
「と……土地、でございますか?」
封緘使
「まさか……土地を……?」
じいじはドンッと杖を床に突く。
「わしらの領地には、使われぬ土地がいくらでも余っておる。草原、畑跡、森の一部……全部宝じゃ」
「それを――“移住者への贈り物”にすればよい!」
全員
「おぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
ティロ
「土地を!? タダで!? 大胆すぎる!!」
ミュネ
「でも……土地をタダで貰えるなら来る人は多そうにゃ!」
封緘使も目を細めた。
「……土地は金と同等の価値がある。これは、他の領地も絶対に真似できん。人が殺到するぞ」
じいじは指を立てる。
「ただし、条件は付ける」
「農家なら農地を。
家畜飼いなら牧場用地を。
木工や林業経験者には森を。
宿屋経験者には宿を運営できる場所を。
経験と職能に応じて土地を与えるのじゃ!」
文官たち
「「「天才か!!!」」」
ルードは震える声で紙に書き留める。
「これなら……支度金を出さずとも、移住者が自分で生計を立てられます……!」
ティロも拳を握った。
「農家が来れば食糧が増える!
牧畜の人が来れば卵も乳も安定!
林業の人が来れば薪も木材も量産!
宿屋の人が来れば移住者の滞在場所も!」
封緘使
「そして透明樹液板も玩具も……職人が自然に集まる」
じいじは満足げに頷く。
「『働けば土地が手に入る領地』など、夢のような話よ。お前たち……掲示所に大々的に告知を出すがよい!」
私も手を握りしめた。
「……じいじ、すごい……!これなら“お金を使わずに”人が集まる!」
こうして――
“土地プレゼント移住計画”
は正式にスタートすることになった。
■ ■ 後日
封緘使は遠い目をして呟く。
「……この領地、次から次へと事件が起きるな……だが……これから面白くなりそうだ」
ルード
「ええ……過去最悪の財政から、一気に未来が開けようとは……」
ティロ
「人が来れば……スイーツも量産できますよ!!」
ミュネ
「卵も牛乳もミルクもバターも……全部揃うにゃ!」
私
「よし!
――次は“移住者募集の大号令”だ!!」
こうして領地は、
金欠 → 祝金 → 人口問題 → 土地革命
という凄まじい流れを経て――
本格的な“産業拡大編”へと突入していくのだった。




