家畜と金欠と封緘使の財布──そして降ってきた“開発祝金”!
封緘使が到着した翌日。
私たちは調理場で――
重大な事実 に気づいてしまった。
「ティロ、最初のスイーツは何を作りたい?」
「そうですね……簡単で、姫様や奥様でも成功率の高い……“ホットケーキ”なんてどうでしょう!?」
「いいわね!材料は……小麦と砂糖はあるし……」
……そこで、ティロが固まった。
「姫様……卵は?」
「あ」
ミュネ「……にゃ」
ティロ「牛乳は……?」
「……」
ミュネ「……にゃ……」
ティロ「…………バターは?」
(存在すらしてないよ!!)
封緘使たちも顔を見合わせた。
「ま、まさか……卵と乳製品が……この領地には?」
ルードが苦しそうに頷く。
「……ありません」
封緘使
「(小声)ここまで原始的とは……いや透明樹液板作ってるのに、なんで……?」
まさに領地の“文明バランスの謎”。
■ ■ 家畜導入作戦、始動!
「となると……鶏と牛を手配しないと……」
「飼育小屋、牧場、世話係も必要だにゃ……」
ティロが両手を上げる。
「卵が無いとプリンもケーキも作れません!!牛乳が無いとアイスどころかバターも!!」
「う……うん……わかってる……」
思考が止まりかけたとき――
ルードが衝撃の事実を告げた。
「姫様……その、肝心のお金が……」
「……?」
「金庫に、金貨が……二枚しかありません」
副文官「銅貨は十枚……」
封緘使
「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」
文官たち
「いや、本当に……何も無くて……」
ティロ
「こ、この状態でスイーツ革命を……!?」
封緘使の一人が頭を抱えた。
「家畜の購入、飼育者の雇用、施設建設……全部金がかかる。どうするのかと思えば……これとは……!」
ルードが肩を落とす。
「……誇りも何もありませんが……領地財政は常に火の車でして……」
(これは……やばい……!)
■ ■ その時――封緘使の一人が静かに立ち上がった
「…………仕方ない」
ジャラッ。
私と文官たち
「……え?」
封緘使は懐から袋を取り出し、机にドンッと置いた。
「私の……ポケットマネーを使いなさい」
全員
「!?!?!?!?」
ルード
「そ、そんな……国家の使者が個人的に援助など……!」
封緘使は冷静だった。
「砂糖と透明樹液板は、王家にとって国策級の発見。鶏や牛の数頭ごときで研究が止まるほうが損失だ」
(この人……冷静に見えて、めちゃくちゃ理解ある……!)
封緘使は指を折って計算を始める。
「鶏二十、牛五、飼育者の雇用三ヶ月分……施設の修繕費……このくらいで十分だろう」
ティロ
「すごい……!ありがとうございます!!」
ミュネ
「ひ、姫様……この領地……国家の財布で生きてるにゃ……?」
(違う意味で国家機密になってきたんだけど……!?)
■ ■ しかし――その日の午後
執務室の扉が叩かれる。
「姫様ぁぁぁーー!!」
文官が封筒を抱えて駆け込んできた。
「王家から追加の書状です!!」
「まさか……また何か?」
封を開くと、中には重く分厚い袋。
【開発祝金・二百金貨】
【新産業育成支援金・百五十金貨】
【玩具産業育成・五十金貨】
合計――四百金貨!
ルード
「ひ、姫様ぁぁっ!!ついに……!ついに領地にお金が……!!」
文官たち涙ぼろぼろ。
封緘使
「……助かった……私の財布も死ぬところだった」
ティロ
「これで……これでスイーツ作れますねっ!!」
(よかった……!お金の問題、ひと段落!)
■ ■ そして問題は次へ──
ルードが書類をまとめながら呟く。
「姫様……量産体制の話なのですが……」
「透明樹液板の工房、薪生産の規模拡張、おもちゃ作り……どれも職人が来ていません」
「……あっ」
ミュネ
「そ、そもそも……この領地の総人口って何人なんですかにゃ?」
ティロ
「確かに……職人どころか、農民さんも見かけない……?」
封緘使
「重要問題だな。人口が少ないと、産業拡張どころか自給自足も危うい」
ルードが重い口を開く。
「姫様……この領地の人口は……わずか二百六十人です」
……静寂。
ミュネ
「にゃ……にゃにゃにゃにゃ!?!?」
ティロ
「村規模じゃないですか!!」
封緘使
「あの透明樹液板をこの人数で!?逆にどうやって今まで回ってたんだ!?」
私
「……え、えっと……これから増やしていけばいい……よね……?」
文官と封緘使たちが一斉にため息。
「姫様……領地再建は……ここからが本番です……!」
こうして、
金欠 → 封緘使の財布救出 → 開発祝金 → しかし人口問題発覚
という怒涛の展開を経て――
領地はようやく“産業拡大編”に踏み込むことになるのだった。




