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名家の末娘に転生したので、家族と猫メイドに愛されながら領内を豊かにします!  作者:
守る仕組み

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32/105

足りない材料、足りない家畜──そして“封緘使”来訪!

菓子職人ティロが到着した翌朝。

彼は調理場で砂糖瓶を抱きしめながら宣言した。


「よし!まずは簡単で失敗が少ない“ホットケーキ”から始めましょう!!これは砂糖菓子の基礎、基礎の中の基礎です!!」


ミュネと私は、期待のまなざしで彼を見つめた。


ティロは胸を張る。


「必要なのは……小麦、砂糖、卵、牛乳!!

さっそく生地を――」


そこで、ティロの手が止まった。


「……卵、どこですか?」


「え?」


「鶏卵です!ホットケーキに必須の!」


ミュネが申し訳なさそうに耳を倒す。


「にゃ……卵……貴族料理でもほとんど使わないので……買うにも“そもそも売ってない”ですにゃ……」


ティロ「えっ」


私「……うち、鶏……いないわよね?」


ルードさんを呼ぶ。


「姫様……我が領地には“卵を安定的に産む家禽”はおりません……。野鳥はいますが、家畜としては扱われておらず……」


ティロ、崩れ落ちる。


「た、卵がないと……ホットケーキどころか、プリン、カスタード、焼き菓子も何もかも……!!」


ミュネがさらに追い打ちをかける。


「牛乳も……“牛”がほとんどいないので……にゃ……いるのは荷物運び用の雄ばかりで……搾る対象がいません……」


ティロ「ぎゃああああああああ!!」


(わかる……叫びたい気持ち……)


私は思わず頭を抱えた。


「デザート……想像以上にハードル高くない……!?」


■ ■ 緊急招集、商人オットー!


私はすぐに商人オットーを領主館に呼び出した。


「卵を産む鶏種、牛乳の出る雌牛、飼育施設、世話係……急ぎ調達できる物と、人材の紹介をお願いしたいの!」


商人オットーは少し考え込み、答えた。


「鶏は隣領から“丈夫な地鶏種”を買い付けられます。十日ほどかかりますが……」


「牛は……これは時間がかかりますな。手に入れるなら、王都の家畜市か……牧畜で有名な西方の商団から。こちらも日数は必要です」


(なるほど、家畜そのものが貴重なんだ……)


「飼育施設は……家畜小屋の建設が必要だ。

職人を派遣すれば三日ほどで小規模のものは建てられます」


ミュネが胸を熱くして言う。


「ひ、姫様……これで……奥様のスイーツ夢も……にゃ……」


ティロも目を輝かせた。


「卵と牛乳が揃えば……!なんでもできます!!なんでも!!」


(うん……なんでもやる前に焦がさない練習をしようね)


私は力強く頷いた。


「じゃあすぐ手配をお願い」


商人たちが深く頭を下げ、駆け出していく。


──が。


その直後。


館中に響き渡る、厳かな声が聞こえた。


「封緘使──到着!!」


空気が凍る。


■ ■ 封緘使、来る。


玄関の大扉が開くと――

青のマントを纏った騎士団数名と、その中心に立つ一人の人物。


黒を基調とした礼装、王家紋章入りの封印箱。

“国家機密扱いの案件”にのみ派遣される存在。


封緘使ふうかんし


王家直轄の監察官にして、情報と機密の番人。

彼は深々と礼をした。


「領主家ご令嬢。王家より、透明樹液板と砂糖精製の調査を拝命して参りました」


ミュネは緊張で耳がピーン。


ティロは「ひえぇ……」と小声で震え。


ルードさんは顔色が完全に仕事モード。

私は背筋を伸ばし、応対した。


「遠路はるばる、ようこそ。透明樹液と砂糖、何でもお見せします。遠慮なくお尋ねください」


封緘使は静かに頷き、淡々と言った。


「ありがとうございます。しかし──まず確認したいことがございます」


「なんでしょう?」


彼の視線が調理場方向へ向く。


「この領地で“砂糖を用いた菓子作り”が行われているとの報がありましたが……その材料の確保状況は?」


(……材料、足りてないタイミングで来るの!?)


ティロとミュネが同時に叫びそうになるのを私は手で制した。


「ええ、その件も含めて説明したいことがあります。材料不足、家畜の導入、そして……

砂糖を無駄にしないスイーツ研究体制について」


封緘使は静かに目を細める。


「……どうやら、こちらの領地は我々が想像していた以上に“本気”のようだ」


その表情は──興味と警戒が半々。


こうして。


透明樹液板、砂糖精製、家畜導入、スイーツ計画。すべてを巻き込んだ大プロジェクトは、ついに王家の監査官を巻き込む段階に突入したのだった。

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