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名家の末娘に転生したので、家族と猫メイドに愛されながら領内を豊かにします!  作者:
守る仕組み

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31/105

王家の驚愕と、菓子職人の来訪──静かに動き始める甘い革命

王家へ“透明樹液板セット”と“白砂糖もどき”を献上して三日後。領地に、一通の返書が届いた。


封には王家の紋章。文官ルードが息を呑む。


「ひ、姫様……王家からの返信でございます」


「もう……!?」


早すぎる。だが、透明樹液と砂糖の価値を考えると──当然かもしれない。


ルードが手袋をはめ、緊張しながら封を切る。中には二枚の書状が入っていた。


一枚目は、研究班から。


『透明樹液板、ならびに彩色板。強度・加工性ともに“未知の可能性あり”と評価。王立研究所にて正式調査を開始したい。生産体制の概要提示を求む』 


続く二枚目は、王族直筆と思われる丁寧な文。


『砂糖の精製成功、まこと驚嘆すべき報である。甘味料は政治・軍事・経済の観点から極めて重要。追って王都より“封緘使”を派遣する。文化技術としての菓子制作に関しても、危機管理を含めて協議したい』


ルードはごくりと唾を飲んだ。


「こ、これは……姫様……王家は本気です。特に“封緘使”を送るとは……国家的に極秘扱いとする意思表示……!」


(だよね。砂糖なんて、下手すると戦争の火種になりかねないし)


私は深く息を吸った。


「王家が正式に動いてくれたなら……こっちも次に進まないとね」


そう言った瞬間――


コンコン。


扉が叩かれ、ミュネがぴょこっと顔を覗かせた。


「ひ、姫様……お客様が来ておりますにゃ……」


「誰?」


「例の……菓子職人候補の方ですにゃ!」


■ ■ 菓子職人、到着す。


案内されてきたのは、二十代半ばほどの若い男。髪は少しぼさっとしていて、服は質素。だけど目だけは驚くほど真剣だった。


「はじめまして! 元王都パン工房職人、ティロと申します!」


声がよく通る。だがその直後、彼は深く頭を下げた。


「まさか……本当に砂糖を精製した領地があるなんて……!それを扱える可能性があるなんて……光栄すぎて……震えが止まりません!!」


(パン工房では出世できなかったって聞いたけど……この熱量、むしろ才能の塊では?)


ルードが彼に念押しするように口を開いた。


「ティロ殿。ここで扱う砂糖は“国家機密”です。外部への漏洩は、たとえあなたの家族であっても許されません」


ティロは真剣な眼差しで、胸に拳を当てた。


「誓います!砂糖を扱えるだけで……職人としての夢がもう一度蘇るんです!絶対に、命を賭けても守ります!」


(……よし。この人なら信頼していいかも)


私は笑顔で手を差し出した。


「ようこそティロ。私たちと一緒に、美味しいスイーツを作りましょう」


ティロの目がうるっと濡れた。


「は、はいっ……!夢みたいです……!」


その時、ミュネが控えめに耳を下げて言った。


「ですが……姫様……問題がひとつ……」


「問題?」


ミュネが、昨夜の“母上のやらかし”を思い出すように顔を引きつらせる。


「砂糖……奥様が“追加で作ろうとして”……

二瓶ほど、黒い炭になりましたにゃ……」


ティロ「ふぇっ!?!?!?」


私は天を仰いだ。


(母上……!!)


■ ■ 一方その頃、王都。


献上品を受け取った王家研究班は、興奮の渦中にあった。


「この透明樹液板……精度が高い!」


「この青色……染料を混ぜた?それとも特殊処理?」


「砂糖……これ本当に甜菜から……?どうやって純度を……?」


そして王族側の重臣たちは、さらに深刻な表情をしていた。


「透明樹液板は……軍事利用も可能では?」


「軽く、加工しやすく、丈夫……盾に?いや、光学器具の基盤にも……」


「砂糖の精製は……諸外国の商会が黙っていないぞ」


「封緘使の派遣は急げ。この領地……下手をすれば他国に狙われる」


緊張と期待。不安と興奮。

そのすべてが入り混じった会議が、夜遅くまで続いた。


(こちらの世界の文明レベルで砂糖と透明板……それは、歴史が動くレベルの衝撃だった)


――王家側も、領地側も。

すべてが水面下で急速に動き始めていた。


■ ■ 夜、領主館。


ティロが調理場をじっと見回していた。


「ここで……砂糖を……!ここで……スイーツを……!!」


ミュネが申し訳なさそうに隣に立つ。


「どうか……奥様が来る前に……何とか基礎を……にゃ……でないとまた……焦げと爆発が……」


ティロは拳を強く握った。


「任せてください!!俺、今日から寝ずにでも練習します!!“焦がさない”ところから手伝います!!」


(ああ……この子、本当にいい子……!)


こうして――


王家が動き、菓子職人が来て、

領地の“甘い革命”の第一歩は静かに踏み出された。

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