ベトベト木加工班、始動……したい!
はずれかぶ――いや、甜菜の生育準備は整った。だけど、植物って育つまで半年とか一年とか、当たり前にかかるんだよね。
「よし、甜菜は一旦畑に任せるとして……」
私は腰に手を当てて言い放つ。
「本命の“ベトベトの木加工品”開発、始めます!」
家族と文官たちは、はたと我に返ったように目を見合わせた。
「……そうだった。俺たち、甘味に夢中になりすぎていたな」
「砂糖の魔力は恐ろしいわねぇ……」
「閣下(祖父)まで浮かれてたしな……」と文官A。
祖父はそっぽを向いた。
「……す、少しだけだぞ?少しだけ甘味に心奪われておったのだ」
(少し……?スイーツ売り場で子どもみたいにはしゃいでいたのは誰だ)
まあいい。問題は別にある。
■ ベトベト加工班の現実
「さて、加工を始めるには……人手は……?」
数えてみる。
・派遣文官3名
・じいじ(祖父)
・私
・領内唯一の木工師、ボルドさん(60代ヒゲもじゃ)
以上。
……うん、少ない!!!
文官Bが手を挙げた。
「姫様、我々は文官でして、工具の扱いは……その……」
「書類仕事ならともかく、実作業はさすがに……」文官Cが苦笑い。
木工師ボルドさんは、困ったように後頭部を掻いた。
「まぁ、手伝ってくれるのはありがたいんですがね。正直、ベトベト木は扱いが特殊すぎて……。ワシ1人で教えながら作業はきついですわ」
だよね。
私は腕を組んで唸った。
「人手……どうしよう……」
■ じいじの一言が全部解決しないパターン
そんな中、祖父が胸を張って言った。
「よし、ここはワシの豊富な経験と伝手で――」
「じいじ、人を呼ぶのはダメ。王様から“情報管理強化”の命令出てるから」
「……ぐぬぬ」
残念ながら“王様マブダチ権限”も今回は使えない。
■ そこでアイテムボックス……?
私は自分の手袋を見た。アイテムボックスには水路づくりで活躍した“土加工”の機能がある。
(……木に応用……できないかな?)
でも木は土じゃない。それに、私がアイテムボックスで加工できるのは、あくまで“素材を入れた状態で圧縮したり整形したり”程度。木材加工ができるかは未知数だ。
「姫様、その顔……また妙案を思いついたのですね?」
文官Aがキラリとした目を向けてきた。
「いや、まだ。まだだけど……ちょっと実験してみたい」
■ 試作室(小屋)にて
小屋の中央に、太いベトベト木の丸太が置かれた。
表面はその名の通り、触るとベトベトする樹液で覆われている。
「よし……入るかな?」
私はアイテムボックスに手をかざす。
――ピカーッ!
光った。
「え、光った!?姫様、前もそうでしたよね!?」
「これは……新たな機能解放の予兆では……?」
「姫様すごい……!」
みんなの期待が一気に膨らむ。
(いや、やめて。プレッシャー増えるから)
丸太は吸い込まれ、アイテムボックス内部に転送された。私は外から“整形イメージ”を送る。
(樹液だけ外に押し出して……木材自体は板状に……)
光が強くなり、手先がじんわり熱を帯びる。
――ぴかーーーーっ!!
「まぶしっ!」
小屋の中が白く染まり、光が収まると……
目の前には、
樹液がほぼ抜かれたツヤツヤの木材板
が、アイテムボックスから“スポッ”と排出されてきた。
木工師ボルドさんが目をむいた。
「……姫様。これ……何年ワシがやっても無理な加工ですわ」
文官Cが震えながら言う。
「姫様、もしかして……ベトベト木の“最大の難点”消しませんでした……?」
祖父は鼻を鳴らして言った。
「さすが我が孫よ!!」
いや、偶然なんだけど。
――こうして、
“アイテムボックス加工によるベトベト木改革”
が始まるのだった。




