はずれかぶ農園計画スタート!甜菜選抜と畑作りと……なぜかじいじが張り切る
王都から戻ってきた翌朝。迎えてくれたのは、領地に残っていた三名の文官さんたち――いや、もはや“覚悟を決めた精鋭”とでも呼ぶべき顔つきの人々だった。
「フィリア様! 甜菜候補の苗床、準備できております!」
「王都からの指示書、抜け漏れなしで確認済みです!」
「はずれかぶ……いえ甜菜の大規模生産計画、即日開始できます!」
勢いがすごい。
王都から派遣される三名の文官さんと合わせて、計六名で動くことになるせいか、妙な“やる気の塊”になっている。
そんな中、荷台から荷を降ろしている領内の商人さんが、集めてくれた“はずれかぶ”の束を私に見せてくれた。
「フィリア様。道中で譲っていただいた、はずれかぶの苗木と……こちらが、本物のはずれかぶです」
「ありがとう! これで甜菜栽培が始められるね!」
わくわくしながら手を伸ばした瞬間――
キィィン……!
私のアイテムボックスが、まるで待ってましたと言わんばかりに光りだした。
「また光った!?」
「それはまさか甜菜反応……!?」
「フィリア様のアイテムボックス、やはりチート……!」
困る。褒められれば褒められるほど困る。
でも光った部分に手をかざすと……
「こっちの苗……甜菜の反応が強い!」
「では優先して苗床へ移植しましょう!」
アイテムボックスのおかげで、不純物の混ざった苗の中から“確度の高い甜菜候補”を一発で選別できた。
これは……想像以上に便利かもしれない。
そんな中――
「よーし! 畑仕事なら儂に任せよ! このアレス、若い頃は農耕部隊の副隊長として――」
「じいじ、邪魔だから少し下がってて!」
「ぐふっ!?」
勢いよく鍬を持ったじいじを母上と文官さんが物理的に止めに入る。
「オルドラン様、畑をひっくり返さないでください!」
「苗床が未完成です!」
「フィリア様の甜菜が全滅します!」
「む、儂の気概がなぜ伝わらんのだ……」
じいじ、気持ちだけで十分だから。ほんとに。
母上は母上で、完全に仕事人の顔になっていた。
「甜菜は水分も土も管理がシビアです。まずは仮畑で育成しつつ、収穫した種で本格的に畑を拡大しましょう」
「了解しました、セシリア様!」
文官三名が同時にメモを取りながら返事する光景は、ちょっとおもしろかった。
私はというと、選別した甜菜候補の苗を一本一本ていねいに苗床へ並べていく。
「よし……これで第一期甜菜育成、スタートだね!」
「おおーっ!」
領地の空気がひとつ明るくなる。
新型薪に続く第二の主力商品――甜菜糖計画が、本当に動き始めたのだ。
じいじはというと、
「……儂はいつ働けるのだ?」
と、鍬を抱えたまま拗ねていた。
たぶん働ける日は……いつか来るよ、じいじ。




