王都の市場は宝の山?そして深夜の再び甜菜大実験!
王都の更に中心部の巨大な門をくぐった瞬間、私は思わず声を上げた。
「ひろーいっ! ひとがいっぱい!!」
そう、これぞ王都。
人、人、人。そして屋台とお店がずらっと並ぶ賑わいの渦。
じいじはというと、胸を張っていた。
「どうじゃ? これが王都よ。昔はわしもここで暴れ――」
「お義父様、武勇伝は後日にしてください」
母上が抑え込み、じいじは「むぅ」と唸りながらも引き下がった。
本当は王様にすぐ会いに行きたかったらしいが、さすがに“突然の訪問”は偉い人でも無理だった。
王宮からの返事は「明日の午後以降ならお時間が」だった。
そのため今日は丸一日観光!
王都市場の熱気に圧倒
オットーが案内役として張り切っている。
「嬢ちゃん、ここは王都最大の市場っす! 何でも揃いますぜ!」
干し肉、薬草、布、武器、小物、香辛料。
通路に漂う匂いだけでお腹が空く。
私はキョロキョロしながら歩いていたが――
ある屋台に吸い寄せられた。
──香ばしい匂い。
前世で嗅いだことのある匂い。
「これ……お団子……?」
「ん? 砂糖は高くて買えんからな。これは蜜って言って、木の樹液を煮詰めた甘みじゃよ嬢ちゃん」
店主のおばちゃんが説明してくれた。
(やっぱり砂糖は高級品なんだ……!もし甜菜から砂糖を作れたら、これ絶対覇権取れるじゃん!?)
私は心の中でガッツポーズ。
「あとで甘いやつ作ってやる」と、密かな闘志を燃やす。
珍しい商品からヒントを探す
市場を巡るうち、母上は値段交渉スキルを発揮しまくる。
「これ、三袋で銀貨一枚? 高すぎます。半分で」
「ちょっ……う、うちも商売なんだが……」
母上、容赦ない。
じいじはと言うと、武具店で剣を持ちながら吠えている。
「この剣は腰が甘い! 昔はもっと──」
「お義父様、騒がないで」
母上の冷静なツッコミが飛ぶ。
オットーはオットーで、
「嬢ちゃん、ドラゴン焼き(ただの大きい焼き鳥)食べます? 旨いですよ!」
と屋台グルメを勧めてくる。
こうして歩くうち、私の頭の中は産業アイデアでいっぱいだった。
(この布、染料の技術次第で化けるな……この香草、乾燥してパック詰めすれば絶対売れる……この木工品、うちの森の木で作れないかな……)
でも何より気になるのは、やはり甜菜だ。
再び宿で、深夜の実験タイム!
その日の夜は、庶民向けの宿に泊まった。
「嬢ちゃん、厨房貸してもらったので、あとはご自由に!」
オットーが交渉してくれたおかげで、
私は甜菜(仮)を抱えてニヤニヤしていた。
「はぁあ……やるしかない、甜菜糖……!」
台所の片隅、椅子の上に立ちながら実験スタート。
①甜菜をカット(固い!幼女の腕力では無理なのでじいじに頼む)
②砕く
③水と一緒に煮る
④灰汁を取る
⑤濾す
⑥さらに煮詰める
⑦カラメルっぽくなるまで頑張る
コトコト煮込んでいると……
「おお、この甘い匂いは!」
じいじが鼻をひくつかせて現れる。
「リオナ、これ……もしや砂糖か?」
母上も驚いて鍋を覗き込んだ。
「すごい……本当に甘い……!」
「これ売れるんじゃねぇか!?」
オットーも目を輝かせる。
煮詰めた鍋の底には、薄茶色の、ザラッとした甘味の固まりが残っていた。
(やった……! 前世の記憶曖昧でも、ちゃんとできた!甜菜糖、成功!!)
思わず小さくガッツポーズすると、母上が嬉しそうに笑った。
「リオナ……あなた、本当に天才ね……!」
いや、違う、前世補正……と言いたいけど黙っておく。
じいじは腕を組みながら、誇らしげに言った。
「よし、明日これを持って王宮へ行こう。
国王も甘党じゃからな……喜ぶぞ」
(……じいじ、最強すぎない?)
こうして、
新産業「砂糖」誕生の瞬間は、
ひっそりと王都の宿の台所で生まれたのだった。




