ローガル領、産業ほぼ壊滅の事実に気づく一年後の赤ちゃん〜
あれから一年。
私は無事に成長し、ついに――
ハイハイ解禁。
言葉も簡単な単語なら話せるようになった。
そんな私を家族は口々に
「天才!」
「天才じゃ!」
「天才ですにゃ!」
と褒めるけれど――
(いや前世の経験込みだから……チート扱いしないで……)
とはいえ、去年の“家族会議事件”以降、ローガル家は確かに少しだけ進化した。
・勢いで森を全伐採 → 禁止
・何でも赤ちゃん頼り → 自粛
・計画無しで突発イベント → 会議後に(形だけ)検討
(いや、じいじはまだ暴走しそうになるけど)
だが。
一年領地を観察して、私は気づいてしまった。
――この領地、産業ほぼ死んでない?
農業は何とか形になってきたけれど、正直この辺りの土地は肥沃でもなく、水路は造ったけど水源は遠い湖に依存。
(今年はなんとかなったけど、それだけじゃ領地経営は安定しない……)
そこで私はミュネを使って領民の話をこっそり聞いたり、兄様の読んでいる資料を覗き見したり、母様に質問したりした。
そして判明した領地の産業一覧。
1:塩
2:接着剤
以上。
(え……終わった……?)
まず 塩。
これは国の管理下にあり、
価格は “買い取りも売値も固定”。
つまり――
利益を増やす方法は量を増やすしかない。
でも。
(そもそも どうやって作ってるか全く知らないんだけど!?)
塩田なのか煮詰め方式なのかすら不明。
この国、情報が縦割りすぎない?
次に 接着剤。
領内の奥にある森に“ベトベトの木”と呼ばれる木が大量に自生しているらしい。
名前の時点でいやな予感しかしないけど……
・切る
・砕く
・絞る
→ 接着剤完成
(いや加工雑!!)
しかもこの木――
・木材として使えない(ベトベトだから)
・燃やすと煙がヤバい(ベトベトだから)
・放置するとすぐ増える(ベトベトだから?)
・唯一の用途は“接着剤”のみ
(これ……外来種か害樹じゃない……?)
確かに接着剤としては優秀らしいが需要は多くないから利益は限定的。
――結果。
ローガル領、収入源ほぼ二つ。しかも伸びしろ薄い。
(え、どうやって今まで続いてたの……?)
さすがに深いため息が出る。
「ふぃ、りあ……?しゃー……?」
ハイハイで寄ってきた兄様が心配そうに覗き込んでくる。
私は正直に言った。
「しょ……うばい……ない……」
兄様「えっ!?商売!?フィリアが商売の話してる!?」
(あ、しまった、喋りすぎた)
父様も母様も駆け寄ってくる。
父様「しょ、商売……?フィリアは何か気づいたのか……?」
母様「まさか……一年でそんな……」
いや赤ん坊の語学成長に驚いてほしいけど、まぁいいか。
私は魔力をぽふっと出しながら
“このままじゃ領地が危ないよ” の気配を伝える。
ぽわん。
父様は肩を震わせた。
「……ついに我が娘が領地経営の危機を示した……!」
(そんなつもりじゃないんだけど!!!)
とにかく私は決意した。
ローガル領、産業改革します。
農産物をそのまま売っても儲からないなら!
① 加工して付加価値をつける(食品加工)
② 農業以外の特産品開発(工業・手工業)
③ ベトベトの木の新用途開発(ワンチャン化けるかも?)
④ 塩の製造工程を把握して効率化
一気に全部は無理だけど、
まずは“何かひとつ”成功させれば道が開ける。
私は立ち上がり(ハイハイだけど)、家族の前で宣言した。
「……つくる……!あたらし……もの……!」
兄様「新しいもの!?開発!?フィリアが――開発宣言!」
じいじ「よーし!なんでも手伝うぞ!!」
(じいじ、暴走だけはやめて)
父様は涙ぐんで言う。
「ついに……ローガル家に革新の風が……!」
母様はそっと私を抱きしめた。
「えらいわ、フィリア……領地を良くしたいと思ってくれるなんて……」
(まあ、破綻したら私の生活も終わるしね……贅沢三昧をするには!!!)
こうして私は――
ローガル領 産業革命プロジェクト
“ベビー・イノベーション計画”
を静かに始めたのであった。
(赤ちゃんが革命を起こす世界線……!)




