表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
名家の末娘に転生したので、家族と猫メイドに愛されながら領内を豊かにします!  作者:
回り出す仕組み

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

102/105

それでも領地は守られている

朝の報告は、いつも通りだった。


被害報告、ゼロ。

衝突、なし。

規則違反、軽微。

外部からの干渉、確認されず。


フィリアは、その一覧を黙って見下ろしていた。


「……今日も、問題なし」


言葉にすると、少しだけ実感が薄れる。


数字は正確だ。

記録は整っている。

現場確認も、すべて一致している。


誰も困っていない。

誰も泣いていない。

誰も、声を荒げていない。


「領地としては……完璧、なのよね」


隣でじいじが、うなずく。


「被害が出ておらん。崩れてもおらん。反乱の芽も、見当たらん」


「……うん」


「領主としては、これ以上ない成果じゃ」


それは、否定できなかった。


■成功している現実


市場は回っている。

食料は足りている。

医療は機能し、教育は根付き始めた。


原種区画も、守られている。

外部との線は、越えられていない。

内部の秩序も、崩れていない。


「全部、守れてる……」


フィリアは、自分の手を見た。


小さな手。

それでも、ここまでを動かしてきた手。


(間違ってない)


少なくとも、結果はそう言っている。


■誰も責められない


問題がない以上、誰かを責める理由も、存在しない。


職員は職務を果たした。

管理者は規則を守った。

住民も、線を理解している。


「誰も、悪くない」


それは、事実だった。


「……うん。悪くない」


繰り返すほどに、その言葉は、重くなる。


■それでも


午後、巡回の途中。


子どもたちが笑っていた。

職人が仕事に集中していた。

医療所では、軽い怪我がすぐ処置されていた。


平和だ。

本当に、平和だ。


「……ねえ、じいじ」


「なんじゃ」


「この領地、今――“失敗してる部分”って、あると思う?」


じいじは、少し考えてから答えた。


「表に出とる限りは、ないな」


「……だよね」


「ただし」


「?」


「“成功している”という事実は、必ずしも“すべてが見えている”という意味ではない」


フィリアは、足を止めた。


■守られている、という事実


被害は出ていない。

崩壊もない。

反乱もない。


領地は、確かに守られている。


「……それでも」


フィリアは、胸の奥の、言葉にならない感覚を探した。


何かが、欠けている。

でも、それは数字にならない。

記録にも、報告にも、残らない。


(守れている、のに)


(……何を?)


答えは、まだ出ない。


ただ一つ確かなのは――


「……私は、ちゃんとやってる」


それだけは、否定できなかった。


成功している現実。

被害ゼロの結果。

誰も悪くない結論。


その上に、静かに積もる違和感だけが、

まだ、名前を持たずに残っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ