表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
名家の末娘に転生したので、家族と猫メイドに愛されながら領内を豊かにします!  作者:
回り出す仕組み

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

100/105

線は、誰のために引かれたのか

夜。


執務室の灯りは、もう一つだけになっていた。


机の上には、報告書。

数字。

規則書。

例外規定の付録。


すべて、きれいに揃っている。


「……合ってる」


フィリアは、小さく呟いた。


収支は健全。

医療は機能している。

教育も回っている。

原種管理区画への侵入は、記録上ゼロ。


対外的な圧力も、規定通り処理されている。


「……完璧、なんだよね」


それが、逆におかしい。


フィリアは椅子にもたれ、天井を見上げた。


■線を引いた理由


最初に線を引いたのは――

“守るため”だった。


外から奪われないように。

知られすぎないように。

混乱を起こさないように。


例外を作らない。

感情を挟まない。

すべてを制度で処理する。


(……正しい)


少なくとも、当時は。


「外敵のため?」


違う。


「内部のため?」


それも、半分は正しい。


でも。


フィリアは、胸の奥に引っかかる感覚を、指でなぞるように考えた。


(……私のため、でもあった)


迷わないため。

悩まないため。

決断を個人の感情にしないため。


“領主フィリア”が壊れないように。


■強すぎる仕組み


制度は、人を守る。


でも同時に――

人を、押し出す。


規定に当てはまらないもの。

数値にならない違和感。

正式な申請にならない“声”。


「……落ちた?」


守ったからこそ、見えなくなったもの。


線の内側は、完璧だ。

線の外側は――

そもそも、記録されない。


「誰も悪くない、って結論……」


それは、制度の中だけの話だったのかもしれない。


■問いが、戻ってくる


フィリアは、静かに目を閉じた。


「……この線は」


誰のために引かれたのか。


外敵を防ぐため?

内部を守るため?

それとも――


(……私が、楽でいるため?)


答えは、まだ出ない。


でも。


“声”が、制度の外に落ちた可能性。

記録に残らない違和感。

誰も悪くないのに、辻褄が合わなくなる現象。


それらが、一本の線で繋がり始めていた。


■気づいてしまったこと


フィリアは、ゆっくりと立ち上がった。


「……線は、引き直せる」


でも――

引き直すということは。


迷うということ。

判断を、再び“人”に戻すということ。


「……それが、領主の仕事か」


窓の外は、静かな夜だった。


守られている領地。

壊れていない日常。

何も起きていない、はずの世界。


それでも。


フィリアは、確信していた。


線は、問い始めた者の前にしか現れない。


そして今――

その問いは、確実に彼女の中にあった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ