SUMIF($星の子どもたち$=wonder)
PD-C-3(音もなく消えた)
20040101-0:05:54-1(1)
〈群馬県北部:神社の参道前、走る車〉
PD-C-1(世界すら生まれなかった)
20040101-0:07:32- 1(2)
〈東北自動車道: 金子SA下り250m〉
PD-Kn-0(光とは何か、知らないまま)
20040101-0:13:04- 1(3)
〈東京都足立区:浜谷交差点コンビニ付近〉
PD-C-17
シャンは光を察知する。一度顔を向け、反射的に走る。ひたすらに。黒い大きな闇を抜けようとするが、恐らく抜けられない。心臓が果てしなく膨張し、身体中のあらゆる臓器を圧迫する。横に見えたコンクリートの壁に手をかける。背面の虫はケラケラ笑う。無情に。いつかできた石の穴から、爪がスッと滑り落ちる。小さな砂を混えて。星は静かに見守っている。よく見ると、笑っている。点と線が繋がり、足ができる。頭ができる。やがて心臓ができる。あるはずのない黒い心臓、それはやがて色も何もない心臓となり、シャンは叫んだ。
背後に迫る黒い塊が、シャンの上でひょっと宙を浮かせ、再び地に着く。限りなく重い、シャンが一生を懸けても持ち上がらないそれを、東の空に光る星が一度瞬いたその瞬間だけ、持ち上げた。それが、シャンが存在していた証だった。
20040101-0:25:12- 1(4)
〈石川県小松市岳下霊園・国道305号〉
PD-C-10
目の前に広がる雑木林。低木が斜面を覆い、枯れかけた蔦が木の生命を吸収する。木々の葉と蔦の間にある空間は、誰も知らない。そこに何があるのか、定義の空白地帯の中にあるのか。光の塊のように白く染まったリンは、知らない宇宙を探し、歩みを始めた。まだあるはず、みんなが知らない、私だけが知ってるユートピアが。歩みを進めて数十歩、リンは突如視界を覆う大きな光に囲まれた。あれ、私が作るはずの世界が、実はもう既に、私の生まれる前から決まっていた。私が作りたかった世界が、作るはずだった世界が。リンは青い瞳を見開き、口を大きく開いて絶望を叫ぶように、彼女の創り出す世界へ身を投じた。ゆっくり、そして確かに実態のない白が、リンをそっと撫でた。
20040101-00:33:14-1(5)
〈山形県酒田市国道7号 山田南交差点〉
闇に色を感じたとき、板は少しだけ歪めた。少しずつ水分を含んだその板は、あらゆる粒子が眠り込むその間、寒さに凍える葉のように、ゆっくりと色を変化させた。灰の箱の奥にある、霞を立てる淡い輪郭の奥のさらに奥、心臓を囲む巨大な壁が蒼く染まる頃、雫が一滴、板から抜け出した。それと同時に、無数のヤヌイたちは木の中、ため池の淵、トンネルの中に身を潜める。秒針の動きを恐れるように。手を動かす間隔が徐々に長くなった頃、少佐は床に着くことにした。周りの音も徐々に小さくなってきた。秩序を構築することを忘れ、闇に生きる何かのなれ果てとなった者たちは、水に波紋も立てることなく、絶え間なく動き続けた。
「今日は、5。」
小兵たちは風の信号を伝えあい、所々で旋風が発生した。書類が部屋に掛けられた青い木星に届くほど、ふわっと宙を舞う。窓の淵に咲くアイリスは、根を張ることを忘れ、今にも落ちそうな造花と本来の姿を彷徨っている。少佐は一つ息をつき、ハルニレの扉を開け、作業場を出た。長い道を剥げた地面の直前で曲がり、木製の螺旋階段を登る。徐々に差し込む光を避けるように、確実に影を踏み、登る。星は表情を消し、灰一面に広がる触手のような無数の物体は、それぞれに悟られぬよう、静かに祈りはじめた。
少佐が大きな扉の前に立った頃、窓の反対側で疼く黒い塊から、コトンと音がした。弾む事なく、下方に集中するエネルギーを吸収した黒い塊は、何事もなかったかのように、静寂の空間を整えた。むしろ、限りなく細分化された時の流れでは、動力をはたらく事象など存在しない。ヤヌイは何者にも認識不能なほど小さく風を揺らすが、定位置から動じない。小兵たちは、無意識的に動き始め、森の中で拾い集めたガラス玉を、板の上に2つ落とし、静かに視線を落とす。そこには感情も欲情もなく、2つのガラス玉は限りなく純粋な意識を保ったまま、転がり続ける。やがて流動的な物体へと変化したガラス玉のゆく先を、翳りのない瞳で追い続けた。限りなく微細で意味を持たない神聖な動きを、小兵たちはただ静かに見守るほかなかった。いつしか、2つの柔いガラス玉は、静かに最期のメロディを探していた。
PD-H -(観測不能)
20020101-07:09:54-2(7)
〈島根県北部:沿岸(推測地)〉
了




