第七章:生身の生活
私は、まず生活費を稼ぐ必要があった。
未来の知識を使い、私は2025年までの経済動向を分析していた。
未来の技術をそのまま使えば、世界を混乱させてしまう。私は、意図的に力を抑え、未来の知識を応用した。
まずは当座の資金だが、これは未来を知る者としてたやすいことだった。
競馬、競艇、FX。計画通り、たった数日で大金を稼ぎ出す。
初めて手にする紙幣は、未来ではレガシーだとされていたものだった。
「手に馴染む物なんだな。システムならこの紙幣の汚れ具合から紙幣が歩んだ歴史を推測し、エルフなら焚火の火種にしそうだね」
ここ東京は世界最大の都市。
最も難解なのは言語だった。繰り返し話し、慣れる必要があった。
コンビニで食料を調達するのも一苦労だ。
あえて翻訳ツールは使わず、生身のコミュニケーションを試す。
身振り手振りで意外に伝わることに驚き、本の知識でしか知らなかったホスピタリティの高さ、親切やもてなしという文化を体験していく。
ファストファッションで身なりを整え、雑踏の街を散策した。
身元は家族もなく行方不明となった故人になりすましたのだが、この身元証明が最も難題だった。
市井の立ち呑み屋で交わすコミュニケーション。
様々なコミュニティへ参加する日々。
多くの人々は私を異邦人として受け入れたが、女性からは常に干渉され、生物的な「男」としての意識が芽生える。
一方で、男性からは妬まれ、警察沙汰にまでなる始末だ。
忙しそうな日本人だが、意外にも暇なのだ。
その後もトラブルを繰り返しながら、人間同士の機微を理解していった。
そして、未来では失われた手書きの文字。私はそれを活かした新しいデザインのフォントを開発した。
手書きの温かみと、未来のアルゴリズムが融合したそのフォントは、あっという間に人々の心を掴んだ。
利益はすぐに膨れ上がり、私はセーフハウスを出て、新しい生活を始めた。
しかし、私の行動は、常に誰かの目に晒されていた。
未来では全てがシステムによって監視されていたが、この世界では、個人の興味や欲望によって、情報が共有される。
私は、この世界の「人間関係」という複雑なネットワークを理解し、利用する戦略を練ることにした。
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