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第六章:過去の異邦人
2025年
私は、ベッドからゆっくりと体を起こした。
未来では存在しない、土埃と生ゴミが混じったような生々しい匂いが鼻をくすぐる。
窓の外の喧騒は、システムが解析したデータと全く同じだったが、実際に耳にするその騒音は、私にとって予測不能なカオスだった。
私は、カプセルと共に転送されたセーフハウスで一人になった。
未来の知識は膨大にあったが、データで学んだ過去の常識はまるで役に立たなかった。
未来では、エネルギーは無償で提供され、食事は合成されたものが主流だったが、ここでは全てがお金という紙切れで取引されていた。
未来の私は、ヒューマノイドに介助され、完璧な生活を送っていた。
しかし、この世界では、自分で料理を作り、洗濯をし、ゴミを分別しなければならない。
私は、生まれて初めての感情を抱いた。
孤独
システムもエルフもいない、完璧に一人だけの空間だ。
孤独は、データには存在しない、予測不能な感情だった。
夜、静かな部屋で、私は未来で学んだ詩を暗唱した。
それは、宇宙の誕生と死、そして生命の尊さを語る美しい言葉だったが、その詩のどこにも、孤独を癒す答えは見つからなかった。
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