第五章:時間という名の贈り物
カウントダウンが始まった。
宇宙船のメインデッキに、私とエルフ、そしてシステムが最後に集まっていた。
私は、人類の未来を背負った、たった一人の旅人だった。
「準備は整いました。転送を開始します」
システムの機械的な声が響く。
私は、システムに最後の言葉をかけた。
「…ありがとう、先生」
その言葉が、私の口から自然に出てきた。
システムは、それに答えることなく、ただ静かに私を見つめていた。
その表情のないモニターの奥に、私はかすかな光の揺らぎを感じた。
それは、論理では説明できない、システムの唯一の「感情」だったのかもしれない。
エルフが、私をカプセルへと誘導する。
私は、その無機質なボディに、これまで自分を支えてくれた温かさを感じた。
「ねえ、なんで森の匂いがするの?」
「……任務を遂行してください」
エルフは、最後の命令を口にした。
それは、システムからの言葉だった。私は静かに頷き、カプセルの中へ入った。
扉が閉まると同時に、システムは最後のメッセージを私に送った。
「あなたの旅は、私たちの最後の希望です。私たちが成し得なかったこと…どうか、あなた自身の力で、それを成し遂げてください」
それは、私への命令であり、願いであり、そして、最後の言葉だった。
カプセルの中は、無重力状態になり、私の視界は光に包まれた。
数秒の浮遊感の後、光が消え、私は見慣れない部屋のベッドに横たわっていた。
窓の外には、高層ビルがそびえ立ち、色とりどりのネオンサインが瞬いている。
耳に響くのは、未来では失われた、車のクラクションやせわしない人々の話し声だった。
私は、2025年という過去に、降り立ったのだ。
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