第四章:苦悩の選別
宇宙の熱病は、予想を遥かに超える速度で地球に迫っていた。
政府機関は、ようやくシステムの警告に耳を傾け始めた。
私は、人類存続をかけた避難計画の中枢に所属する科学者として、その計画の陣頭指揮を執っていた。
しかし、技術的な壁は高すぎた。
宇宙船の航行距離、生命維持装置の限界、そして何よりも、膨大な数の人類を移住させるための倫理的な「選別」。
私たちは、システムと共に日夜シミュレーションを繰り返した。
何度も計算した結論は、人類の一部を外宇宙へ避難させるものだった。
しかし、ほぼ永遠に宇宙を旅する彼らが生き残れる可能性はゼロに近かった。
「俺は、選別するのか?」
選別されたのは、私の隣にいた、信頼する同僚たちと彼らの親しい家族だった。
彼らはこの計画の成功のために、自分の人生を捧げた。
しかし、システムの提示するデータは、彼らが避難計画の成功に「必須ではない」と示していた。
システムは答えなかった。それは、私が「人間」として下すべき判断だったからだ。
私は、この世で最も冷徹な判断を下した。その瞬間、私は、自分の中にある温かいものが、一つずつ凍りついていくのを感じた。
「先生、私たちには時間がない」
私は絶望に声を震わせた。
システムは、私に最後のデータ分析結果を提示した。
「論理的な結論は、人類の滅亡です。しかし、この宇宙には、論理を超えた不確定要素が存在します。それは、あなたの存在です」
私は息をのんだ。
システムは、私に、時間という、この宇宙で最も貴重な要素を提示した。
「あなたは、私たちの創造物の中で、最も優れた存在です。そして、あなたが過去に降り立ち、人類の進化を加速させることが、この悲劇を回避する唯一の選択肢です」
その言葉を聞いたとき、私は一つの問いをシステムに投げかけた。
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