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「お兄さまはヤンデレ化する攻略対象なのです!」と告げてきた妹が、前世の妹だった俺が求めるハッピーエンド  作者: 彩瀬あいり


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23 交流会イベント①


 規模を大きくした交流イベントの開催日だ。

 学院の講堂を借りて、たくさんのテーブルを運びこみ、立食形式でおこなう。

 今日は生徒会長ではなく、寮長として壇上に立ち、ラルフが開会の挨拶。そこからはテーブルごとに各地の名産品だの、自慢の料理だのを摘まみながら会談する。

 各テーブルにはお品書きがあり、気になった品について知ることができ、なんだったら取引もできるよう、窓口になる家名が記されていた。


 オルファン家は食べ物系を直接取り扱ってはいないので、俺自身は食べるほうに専念だ。

 見渡してみると、いくつかの島に分かれていることが見えてくる。やはりそう簡単に派閥争いはなくならないか。

 それでもミレイユが同じクラスの女子を、くー子がいるラザフォード侯爵家のテーブルへ招いて、プレゼンしているのが見える。そこにはリリカ嬢の姿もあり、楽しそうな笑顔を浮かべていた。元気そうでよかった。


 パジェットくんの姿も近くにある。彼は彼で男子を勧誘してくれているようだ。

 おにぎりを渡してるのが見えた。

 あれはなー、かぶりつくから貴族女子的にはアウトかもなー。

 ひとくちサイズなら許容範囲かもしれんが、米の魅力というか、見た目のインパクトを考えると、三角おにぎりのほうがいいだろうし。海苔を巻いたやつは、ちょっと見慣れない色合いかもしれないが、焼きおにぎりは匂いで集客できると思う。


 今日の目的は、まず見てもらうこと。知ってもらうこと、としている。

 話題にしてくれたら、それでいい。

 ただでさえ東方の料理は未知の分野。調味料は流通しはじめているけれど、完成する料理はやはり洋風の見た目だった。隠し味程度にしょうゆが使われていたりとかな。


 そのときだ。どこか嫌みったらしい女の子の声が響いた。


「まあ、なあにあれ、ひどい色。焦げているし、あちらは真っ黒。土まみれになっているのかしら。あなたにはお似合ねえリリカ」


 なんだあの、典型的な意地悪お嬢さまみたいな子。

 金色の髪をコテでくるくる巻いたみたいな髪型。ああいうの縦ロールっていうんだっけ?


「アリアーネさま……」

「あなたみたいな女に名前を呼ぶ許しを出した覚えはないのだけど?」

「申し訳ありません、お嬢さま」


 すごい。あそこまでテンプレみたいな意地悪を言う子、はじめて見た。

 でもそうか、あれが例のデヴィントン侯爵家の我儘お嬢さまか。たしかにミレイユは、ああいう子、苦手だろうなあ。


 リリカ嬢のことがとにかく気に食わず、難癖をつけているのがよくわかる。いつものことなのか、周囲のご令嬢たちも遠巻きだ。

 いじめはよくないし、見て見ぬ振りをするのも同罪だとは言うけれど、あそこまで家の権力を笠に着ているお子さまに対して、どういう態度を取ればいいのか、難しいところである。


 うつむいてしまったリリカ嬢を庇うように傍に立ったのは、同格の権力を持つであろう、ラザフォード侯爵家のクリスティーヌだ。


「アリアーネさん、わたくしの用意した料理に、なにか不手際でもあったかしら?」

「まああ、これはラザフォード侯爵家のものでしたの。どうりで我が国では見慣れない奇異なものだと思いましてよ」

「そうですわねえ、たしかにローズメア王国ではまだ普及しておりません。ですからこうして、皆さまに知っていただこうと思い、用意させていただいたのよ」

「ですが、あまりにも食に対する冒涜ではありませんの? このように焦げて固まったようなものまで。まあ、たしかに、クリスティーヌさまにとってリリカは邪魔ですわよね。なにしろ光魔法の大きさで負けていらっしゃるようですし」

「勝ち負けの問題ではありませんわよ?」


 なんだろう、このキャットファイト的なやり取りは。

 リリカ嬢は完全に涙目だ。


「クリスティーヌさまは焦っていらっしゃるのかしら」

「なにに対してでしょう?」

「ラルフレイル殿下は、他国から留学されてきたフェシリダーテ王女と縁組をなさるのではないかともっぱらの噂ですし。元婚約者としては、心穏やかではいられませんよね、わかりますわ、そのお気持ち。学院卒業間近になって、婚約発表どころか解消だなんて」


 観衆がどよめいた。

 フェル姫とラルフの件は、みんなが薄々と、たぶんそうなんだろうなーと思いつつも、国が正式に発表していないから黙っていた。相手は他国の王女だから、もしも間違っていたとしたらとんでもない醜聞となり、国際問題に発展するからだ。


 それをまあ、よくも堂々と言ったもんだな、この子。

 さすがのくー子もこれには黙った。現時点では、肯定も否定もできないもんな。



「よろしいかしら?」


 割って入ったのは、この場で唯一、発言が許されるであろう張本人。フェシリダーテ姫であった。姿勢よく歩いてきたと思えば、アリアーネ嬢とくー子のあいだに立つ。


「本来であれば、別の場所を設ける予定でした。具体的には卒業式典。ですが、この場を収めるためには仕方がないと判断いたしました。まずはひとつ。クリスティーヌさまはラルフレイル殿下の婚約者ではございません」

「失礼しましたわ、婚約者候補筆頭、というのが正しいですわね。いつも殿下のお傍にいて、もはや婚約者であるように振る舞っていらしたので」

「アリアーネさん、でしたかしら? わたしはもう何年も前からラルフレイル殿下より、直接お話を伺っておりますのよ。クリスティーヌさまの婚約者について。勿論それはラルフレイル殿下ではございません。ねえ、ユージーンさま?」


 フェル姫が俺の名を呼んだ。

 ぶっこんできやがった、この女。

 だが、ここは喜んで乗ってやろう。俺だっていいかげん腹が立つ。黙って聞いてりゃ好き勝手言いやがって。



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