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「お兄さまはヤンデレ化する攻略対象なのです!」と告げてきた妹が、前世の妹だった俺が求めるハッピーエンド  作者: 彩瀬あいり


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14 ミレイユと攻略対象①

※ミレイユ視点第二弾です


 貴女の胸に一輪の花をというゲーム。バッドエンドではヒーロー全員が病むけど、勿論ハッピーエンドだってあるんだよ。当たり前だけど。


 狙った男子を落としてよかったよかったの他に、いちおうストーリーとしてのハッピーは、奇跡の百合と呼ばれる薄紅色の百合を咲かせることにある。敵を倒して国を救いました的なやつじゃないから、あんまり目立たないし、さらっと流されちゃうから重要視されてないけどね。


 ヒロインのステータスによって花が咲くかどうか決まる。

 国内のあらゆる場所で育てられるレベルまで行くと最上だけど、とりあえず実験が成功して、これから他の場所でも育成していこうっていう状態もある。バッドエンドだと全然ダメでしたってかんじ。


 ゲームをやっているときはたしかにあたしもそこまで深く考えてなかったけど、いまこうしてこの世界にいると、奇跡の百合って結構大事なんじゃないかなって思う。どんな病気にも効く、超高性能医療薬っていうか。希少だから使われないだけで、お金を積めば『死』以外の病気は治せるんじゃないかって言われてる、らしい。

 セラちゃんが教えてくれたんだけど、粉末にしたものは超高値で取引されてるんだって。


 あなはは恋愛が主軸のゲームだから添え物扱いだっただけで、同じゲーム会社が作っているファンタジー系の育成ゲームにおいて奇跡の百合は、付与に使うとすべてのステータスを爆上げするアイテムなんだとか。

 基本的に上昇値はランダムで1~3を振られるものなんだけど、奇跡の百合は絶対に+10固定。

 ゲーム内のミニイベントの報酬として用意されているアイテムで、普通にプレイしていても三つは入手可能。それ以上はお店で買うかんじ。ただめっちゃ高い。

 とある特定条件を満たせば、主人公のスキルが解放されて、自分で作成できるようになるらしいんだけど、その条件ってのが超面倒くさいんだって。


 お金ないから、あたしはそのゲームやってないけど、動画サイトで実況プレイだけは見たことあるんだよね。


 魔法学校に入学していろんな魔法アイテムを作っていく物語。ゲームの題名は『わたしと幸せのアトリエ』

 主人公は妖精の血を引く女の子。名前はたしかフェシリダーテ。長いからフェルって呼ばれてる。小柄で可愛い、がんばり屋の女の子。


 王女さまなんだけど側室の子ってことで、王妃さまに目の敵にされちゃってるの。

 王宮も追い出されちゃったけど、錬金術師だった亡き母親の血を継いでいるフェルは、国を助けるために魔法具をつくるのだ。

 国内の貴族とか外国の王子さまとかが出てくる恋愛エピソードもあるけど、メインはアイテム作り。

めちゃくちゃ数が多いとかで、クリア率を百パーセントにするのが困難な、コンプリ勢にとっては、すさまじい鬼ゲーらしい。


 その程度の認識なのに、どうしてその特定条件云々を知っているのかといえば、これ『貴女の胸に一輪の花を』のデータに関係があるからなんだよ。


 同じゲーム会社が作っているせいなのか、『あなは』のセーブデータがあれば、作成できるアイテムが増えたりやコラボしたコスチュームを着ることができる。

 これは『あなは』側でも同じ。コスプレアイテムとして、フェルの衣装がもらえる。あれ可愛かった。


 ただそんなレアなアイテムをそう簡単に作れたりはしないわけでね。

 特定条件っていうのが、『未クリア状態のセーブデータ』なの。どのキャラともエンディングを迎えていないデータ。

 『あなは』より後に発売されているゲームなので、特典を享受するためには、データを消す必要がある。あのスチルとかあのスチルとか、手に入れたものを捨てなければならない。


 ということで、両方をやっているひとにとっては、厳しい選択なんだって。


 奇跡の百合はお金を出せば買えるから、まあ作成スキルは絶対に必要ではないし、それ自体はクリア率にも影響しない。だから、本当におまけ要素程度のものらしいけど、オタクっていうのはそういうの手に入れたいものじゃん。そういう(さが)じゃん?


 まあ、そのアトリエゲームはともかくとしてだよ。

 この世界に生きている身としては、奇跡の百合が普通にたくさん普及するのは、めちゃくちゃすごいし、日本でいうと、国会とかで議員のひとががんばって予算取ってやんなきゃいけないぐらい、大事なことなんだろうなってこと。

 もしお兄ちゃんが言うとおりだとしたら、リリカも転生者だろうし、がんばって奇跡の百合を育ててもらいたいなって思う。

 誰ルートを狙ってるのかはわかんないけど、お兄ちゃん以外ならべつに誰でもいいよ。お兄ちゃんは絶対ダメだけど。

 お兄ちゃんは今度こそくーお姉ちゃんと結婚するんだから、絶対ダメだけどね!



     ◇



「あの子、マスデックさんじゃない? なにしているのかしら」


 今日はセラちゃんとお出かけ。喫茶店のテラス席でお茶してたら、リリカの姿を目撃した。なにしてるのかなって不思議そうに言ったのも納得で、なんかずーっと道を行ったり来たりしてる。


 ふふーん。あなはプレイヤーの美由ちゃんは、あの行動の意味がわかるのだよ。


「このあたりって、騎士隊の詰所近くで、騎士さんがいっぱいいるじゃない? そういうの目当てなんじゃないかな」

「マスデックさんって、そういうミーハーな子だったっけ?」

「あたしだってべつにミーハーじゃないけど、騎士隊の制服着た団体が通るの見たいなーって思うよ」

「誰がミーハーじゃないって?」


 日々、王都見物に連れまわしてキャーキャー行ってるあたしである。

 でも、この気持ちはそんな軽薄なものじゃないし、バッドエンドへのフラグを折ろうっていう崇高な目標があったりするわけですよ。


「セラちゃんだって、お兄さんが気になるから、ここの喫茶店を選んだわけでしょう?」

「気になるの意味が違うでしょ。私はバカ兄が失態をやらかさないか、心配しているだけよ」

「またまたあ」

「あなたみたいなブラコンと一緒にしないでよね」


 ぷうと膨れてそっぽを向くセラちゃん、超かわいい。

 いま言ったとおり、攻略対象のひとりであり、セラちゃんの双子の兄であるパジェット・アルケットは、夏休みのあいだ、騎士隊への体験入隊イベントへ参加しているのだ。

 時間帯によっては憧れの騎士服を着たパジェットと会って話ができる。普段とは違う衣装を着ているので、大事なスチル回収要素なんだよね。


 完全ランダムだから、ここに来れば絶対に会えるわけでもない。

 あたしたちは、セラちゃんがパジェットから聞き出した日程をもとに、今日ここに来てるんだけど、リリカっていい勘してるのかもね。たぶん、もうちょっと待ってたら警邏に出てくるはずだよ。




ゲーム内容に関することは、兄視点では開示できないので、ここぞとばかりに設定説明回となっております。

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