第95話 未来から来た殺人鬼が色々な設定をまとめて語り出したんだけど、勝手になんかの物語の伏線回収してない?
解決編に入ったなって皆さんもなんとなく分かる時あると思うんです。なんか急にちょっと前の些細なこと話し出したりとかして、あ、いま伏線回収しようとしてるよねこれ、みたいになりますよね。
でも、心当たりのないことを急にキュッと話し出されるとゴチャゴチャ喋ってんなーって思っちゃうんで、これから解決編に入ろうとしてる人は「解決編入るよ」ってまず言ってくださいね……。
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久しぶりに捜査一課特殊任務係から呼び出されまして、もう縁切れたのかと思って気持ちよく過ごしてた私の気持ちは薄暗くなりました。
トクニンは名前だけの追い出し部屋ならぬ追い出し部署なんですよ。だから、そんな連中と知り合いだと思われたくないんです、私は。でも連絡無視すると死ぬまで連絡してくるんで、今回も仕方なく行くことにしました。
※ ※ ※
「なんか変な人が『鈴木さんを呼べ』って言ってるんですよ」
警察署の敷地の隅にあるボロい建物に着くなり、トクニンの節穴刑事が説明してきます。またなんかめんどくさいことに巻き込まれてるみたいです、私。
「そんな奴はいないって答えればよかったでしょ」
「それが『いるのは分かってる』って言われて言い逃れできなくてですね……」
「言いくるめられるの早すぎません?」
「それに、未来から来たって言うもんで、みんなでちょっとワクワクしちゃいまして……」
疑うことを知らないんですよね、トクニンの人たちって。未来人なんて半分くらいはウソですからね。
※ ※ ※
別室にはトクニンのリーダーの木偶野警部が待ってました。そばには気難しそうなおじさんがいます。こいつが未来人ですよ、きっと。木偶野警部が言います。
「おお、鈴木さん、やっと来てくれたか。こちらは未来人のジャスパー峯岸さんだ」
ジャスパー峯岸がなんか大御所みたいな雰囲気出してうなずきます。未来人ってことは私の遥か後輩なわけですよね。礼儀終わってますよ、こいつ。とか思ってたら、ジャスパー峯岸が喋り出します。っていうか、なんでちょっと昭和の芸能人みたいなネーミングセンスなんだよ。
「ぼくちゃんは未来からやって来た」
なんかふざけた喋り方してます、ジャスパー峯岸。だからすぐに返しました。
「それはよかったですね。もう帰っていいですよ」
「ぼくちゃんは他にこの時代に送り込まれた連中が仕事しないのから来たの」
「あの、私、今日は1日Netflix観て過ごそうと思ってたんですよ。無料期間が終わっちゃうんで。大した用事ないなら呼び出すのやめてくれます?」
「……ぼくちゃんが君のこと知ってるって不思議じゃないの?」
一丁前にツッコミ入れてきました、ジャスパー峯岸。
「未来人だからでしょ。勿体ぶってないで喋りたいことあるならさっさとお願いしますよ。イカゲームとか観たいんですよ」
早く帰るつもりだったんで立ったまま話聞いてたんですけど、ジャスパー峯岸がクックックって笑うんです。長くかかるかもしれないって思ってめちゃくちゃため息出そうでした。
※ ※ ※
「聞いて驚け。ぼくちゃんは死体から脳が抜き取られた事件の犯人なのだ」
急にジャスパー峯岸が罪の告白してきました。
「なんですかそれ。知らないんですけど」
「世間を騒がせてるはずなんだけどな……」
木偶野警部も刑事のくせに首を捻ってます。ジャスパー峯岸が悔しそうな顔してます。
「あのさ、死体から脳が抜き取られてるの。その犯人がぼくちゃんなの。ちょっとは怖がろうとしようよ」
「なんかそういうのありがちじゃないですか」
「ありがちなのか、この時代では……。だけど、なぜぼくちゃんが脳を抜き取っているのか、疑問に思っていることだろう」
「『はい』って答えた方がいいなら『はい』って言いますよ」
「……君、未来でも噂になってるぞ。事件が起こっても全然動じなかったって」
いつの間にか未来で有名になってたみたいです、私。嬉しくもないけど。
※ ※ ※
「ぼくちゃんたちの時代じゃ、脳の中の情報を取り出すことができるんだよ。ぼくちゃんは重要な情報を回収するために未来から来たの」
木偶野警部が身を乗り出してジャスパー峯岸に尋ねます。
「その重要な情報とは? お宝のありかとか?」
いい歳して小学生みたいな質問してます。そしたら、ジャスパー峯岸が言うんです。
「そんな小学生みたいなものじゃないぞ」
なんかジャスパー峯岸とツッコミのセンスが似てることにものすごい敗北感があります。
「その情報はこの時代にSDカードや白い光玉っていう水晶の玉に刻まれてるんだけど、ぼくちゃんはそれを探してんの。というか、そういう媒体に記録されるのを阻止しようとしてんの」
なんかやたらと説明が多いんですよね。だから私、気づいたんですよ。これなんかの伏線回収しようとしてるって。そういうの私のいないところでやってほしいんですけど。
「情報の持ち主はその内容を恋人の身体にタトゥーで彫り込んだらしいんだよ。おっかないよね」
「いや、あんたは脳味噌抜き取ってんだから、それ以上におっかないでしょ」
横で話を聞いてた節穴刑事が口を挟んできます。
「それでその重要な情報ってなんなんですか? お宝のありかですか?」
「だからー、そんな小学生みたいなもんじゃないんだって言ってるでしょーが。まあ、ぼうちゃんもどういう情報なのか知らないんだけどね」
さすがのジャスパー峯岸もイラついたみたいです。私が普段食らっているアホな返答を他人がやられてるのを見るのは気分がいいですね。っていうか、情報がなんなのか知らないんかい、ジャスパー峯岸。とか思ってたら、またジャスパー峯岸が伏線回収してそうな口振りで言うんです。
「ぼくちゃんの他にも色んな勢力がいるんだよ。≪十人会議≫って組織をこの時代に作って情報守らせようとしたりとか、怪盗を操って情報盗ませようとしたりとか……」
これ以上長々と話されるとイライラがマックスになりそうだったんで口を挟ませてもらいました。
「いや、あの、そういうそっちの事情とか知らないんで、なんか伏線回収してるみたいにゴチャゴチャってまとめて説明するのやめてもらえます? こことここが繋がってんだみたいなのやりたいのかもしれないんですけど、興味ないんですよ、私は」
そしたら、ジャスパー峯岸が私をまじまじと見つめて言うんです。
「いや、鈴木さん、君がこの一連の騒動の渦中にいるんだけど……」
「そんなこと言われても知らないんで、勝手に巻き込まないでほしいんですよ」
ジャスパー峯岸が魂の抜けたみたいな顔してます。
「えーと、じゃあ、ブラックマンバって組織についての話も聞きたくない感じ?」
「松平健がどうしたんですか?」
って私が言ったら、木偶野警部が口を挟んできます。
「鈴木さん、それはマツケンサンバしゃないかな」
そしたら、ジャスパー峯岸が目を丸くしてんです。
「ぼくちゃんの時代にもブラックマンバをマツケンサンバっていうノリがあるけど、鈴木さん、君が始まりだったのか……。ずっとなんなんだって思ってたよ……」
なんか知らないうちに未来に語り継がれてたみたいです。嬉しくもないけど。ここまでずっと訳わかんない話聞かされてイラついてたんで、さっさと終わらせることにしました。
「で、なんなんですか? 結局、なんか未来から来たターミネーターだよみたいな自慢しに来ただけってことですか、カウパー峯岸さんは?」
「カウパーじゃない、ジャスパーだ。というか、ぼくちゃんはここまで赤裸々に喋ってるのに、なんで君たちはそんなに反応薄いわけ? ぼくちゃんが探してる情報を守ってる連中があちこちでタイムループ作ってるとか、ブラックマンバが争奪戦の資金集めにデスゲーム運営してるとか言っても響かなそうだよね」
「その詰め込み式の説明やめた方がいいですよ。伏線回収してますよ感が強すぎて鼻につくんで」
結局、ジャスパー峯岸がゴチャゴチャ喋りたそうにしてたんで、あとはトクニンのみんなに任せて帰ることにしました。
木偶野警部とか節穴刑事はこういう話好きそうだから目を輝かせて話聞こうとしてたんですけど、当のジャスパー峯岸は私じゃないと嫌だったらしくてげんなりしてました。
帰り際にもなんか色んな設定みたいなこと喋りまくって私の気を引こうとしてたみたいですけど、うるさいんでAirPods耳につけたら黙ってました。




