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第43話 サイコパスに狙われた私の両親が楽しそうだった

 サイコパスに目をつけられると基本的には自分のまわりの大切な人がダシに使われたりしますよね。恋人の命を守るためにボロボロになるなんて経験したことのある人も多いと思います。


 でも、ダシになるには旨味がなきゃいけないわけなんですよ……。



〜 〜 〜



 久しぶりに母からLINEが来まして、普段そんなに連絡取らないんでなんだろうって思ってたら、なんかのURLなんです。開いてみると、ビデオ通話みたいなのが繋がるんです。


『あー、繋がったー!』


「お母さん? 何してんの? そこ、どこ?」


 なんか薄暗くて殺風景でちょっと汚いところにいるみたいなんです。


『お父さんもいるよー』


 横から父が顔を出して手を振ってます。2人ともなんかニコニコしてるんです。いいことでもあったんですかね?


「何してんの、2人して?」


 すると、画面にワイプが現れて優男みたいな感じの人が出てきたんです。


『やあ、鈴木さん、久しぶ──』


『あー、この人よ! この人が私たちをここに連れてきてくれたんだけど──』


『いや、僕がいま説明をしているので、お母さんは黙っていてもらえますか?』


 なんか初っ端から噛み合ってないみたいです。っていうか、母って誰かと噛み合うことない気がしますけどね。とか思ってたら、画面の向こうで両親が言い合いしてます。


『ほら、お母さん、話聞かないから怒られてんじゃん……』


『怒られてないでしょー! だって──』


 父と母の映像がミュートされたみたいです。なんか言い合ってる映像だけになってて滑稽でした。優男が咳払いをして話し出します。


『君のご両親はとある場所に移させてもらいました。ふふ、君は驚いているかもしれませんね。まさか、あの日、僕を解放したことがこのような事態に繋がるとは……』


「あ、すいません、初対面だと思ってました。どっかで会いましたっけ?」


『……………僕は一度、警察で君と会話したことがあります。都内の連続殺人について話したことがあるのを思い出したことでしょう?』


「都内で連続殺人なんてしょっちゅう起こってるから分かんないんですよね」


 なんか自意識過剰の人っぽくて私は苦手でした。何か言えば察しくれるとか思ってるんですよ、こういう人って。ちゃんと言葉にしないとダメだって私は思うよ。


『では、この言葉を聞けば思い出せるかもしれませんね。「人の肉の味を知っているか?」』


「あの、ヒントとか要らないんで答え教えてもらえます?」


 優男はガッカリしたみたいでした。いや、こっちこそなんか変なクイズ出されてガッカリなんですけどね。しかも、このくだりの間ずっと両親がなんか無音の中で喧嘩してんですよ。



※ ※ ※



 この前、警察の無能部署でサイコパスを尋問するみたいなことがあって、その話されてなんとなく思い出しました。


「あー、なんかいましたね、そんな人。お久しぶりです」


『……僕はそれほど印象に残らなかったですか?』


「未来予知する人とか粉々になっても再生する探偵とかがいる中で、単にサイコパスだって言われても……まあ、正直キャラ薄いですよね。平行宇宙から来たとかならまだしも」


『ふふふ、しかし、それも今日で変わることになるでしょう。君のご両親の命は僕の手のひらの上にあるのですからね』


「あー、なるほど。あれから私の両親を捕まえようとしてたってことですか。ずいぶん時間かかりましたね。1ヶ月くらい前ですよね、警察署で会ったの」


『ご両親が心配ではないのですか……?』


「いや、心配ですけど、それをいちいち表現する必要あります?」


『ふふふ、強かな人だ。それだけに、僕の相手に相応しい。君にはご両親の居場所を探し出してもらいますよ。2時間以内にね』


「2時間過ぎたら?」


『どちらかに死んでもらいます。どちらかは君に選ばせてあげましょう』



※ ※ ※



 サイコパスの画面が消えて、両親と話せるようになりました。


「──ってことみたいなんだけど、そこがどこだか分かる?」


『なんか脱出ゲームみたいだねー! ウチの方だと近場でやってないのよー! 最近流行ってるでしょ? やってみたかったのよー」


 初心者でガチの脱出ゲームなのはかなりの飛び級ですね。っていうか、知らない場所に連れ去られてなんでこんなに楽しそうなの、この人たち? 父が首を捻ってます。


『2時間以内かー。今日の夜、あそこのレストランで予約してただろ? 2時間とかなら間に合いそうだな』


『その前に吉岡さんのところにお礼しに行かないと。この前ラッキーのお世話してくれたから』


 ラッキーってのは実家で飼ってる犬なんです。


「ラッキー元気なの? もう結構おばあちゃんだよね?」


『ちょっと緑内障が進んでんのよー。あまり見えなくなってきてんの。だからこの前もね、熱海に行く時に吉岡さんのところにね──』


 画面にサイコパスのワイプが出てきました。


『近況報告している場合ですか。2時間以内にどちらかが死ぬんですよ?』


「あ、ずっと見てたんですか、今の会話とか?」


『当たり前でしょう。これは命をかけたゲームなんですから。片手間にやってないですよ』


「普段あまり連絡してなかったんで、聞きたいこといっぱいあるんですよ」


『どこの世界にデスゲームを近況報告に使う人がいるんですか。そんなに話したいなら普段から連絡取り合ってください。さあ、こんなことを話してる間に、刻一刻と家族の時間は減っていきますよ』


 そしたら父が、あちゃーみたいな顔してんです。


『この前ウチに来たハッカーの奴と、先週だったかに助けてやったスパイが俺たち探しにくるかもな……。勝手にこのゲーム終わらせないようにしないと……』


 なんかデスゲームを時間いっぱい楽しもうとしてんです。よく考えたら、私ってこの人たちの子供なんですよね……。この人たちやばすぎでしょ……。っていうか、ハッカーとスパイって何よ? とか思ってたら、母が言うんですよ。


『そんなこと言ったら、この前ウチに間違ってきた悪魔さんが来ちゃうわよ。誤解を解いてあげたら私たちのこと守るとかなんとか勝手に言ってたじゃない』


「待って、悪魔って何よ? ちょっと連絡しない間にどんな日常送ってんの?」


 その後、ホントに悪魔が来て両親助け出しちゃいました。確認したら両親とも悪魔と契約してるわけじゃなかったんで安心しました。悪魔もなんか礼儀正しかったです。やっぱりこまめに両親と連絡取らないとダメですね。変な契約結んじゃうみたいなこと聞きますしね。ちなみに、サイコパスはいつの間にか回線切って逃げてました。

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― 新着の感想 ―
親御さんも界隈で有名そう……
 鈴木さんのご両親、なんだかすごい人たちでしたね。この前のサイコパスも再登場。彼は三度目の登場もあるのでしょうか?  個人的には、交換殺人のお姉さんと軽井沢のお姉さんのその後が気になっております。
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