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第41話 しつこいアパレル店員みたいな刑事に事件紹介された

 警察もさすがに難事件だと情報提供を呼びかけるじゃないですか。それだけ気合い入れてると思うんです。


 でも、この前会った刑事はちょっとありえませんでした……。



〜 〜 〜



 真理に辿り着いたんです。めちゃくちゃ観光地観光地した場所に行けば逆に事件に巻き込まれないんじゃないかって。だから、10年来の女友達の頼光寺(らいこうじ)と軽井沢に行くことにしたんです。


 軽井沢の駅を出てすぐのところでスーツの女の人に声かけられました。


「未解決の事件どうですかー? バリエーション揃えてますよー」


 なんか新作のトップスすすめるみたいなノリで言ってくるんです。しかも隣の頼光寺じゃなくて私に。


「間に合ってます」


「いや、お姉さん、死線をくぐり抜けて来たような目をしてらっしゃいますよ。どうですか、難事件をひとつ」


「あの、私、そんな戦士とかじゃないんで……」


 頼光寺が面白がって私を小突いてくるんです。


「事件ひとついっちゃいなよ〜」


「なんで軽井沢まで来てそんなことしないといけないのよ?」


 承諾してないのにスーツの女が手に持ったファイルを開いて見せてくるんです。


「天岩戸伝説に絡めた連続殺人なんていうのもありますよー。あとは死体から脳みそだけが抜き取られてた事件も人気ありますよー」


 お土産屋さんかってくらいフランクに事件すすめてくるんです。話聞くと、このお姉さん、地元警察の刑事らしくて、未解決の事件を片付けるべく野良探偵を募ってたみたいです。人材の探し方終わってません?


「いや、あの、私、ここには事件に巻き込まれないつもりで来たんで、遠慮しときます……」


「じゃあ、ライトな事件の方がいいですかねー? 民家に押し入った仮面の殺人鬼の事件なんかも取り揃えてますよー」


「事件の重さ関係ないから。っていうか、充分ヘビーな事件でしょ。その前に事件自体が要らないの」


「またまたー! お姉さん、お似合いですよー!」


 めちゃくちゃ嬉しくないことを言われてる気がするんですけど。頼光寺もなんかニヤニヤするだけで私のこと助けてくれないんですよ。行きの新幹線の中で散々事件から離れたいって話してたんですけどね。っていうか、あれがフラグってやつだったんですかね?


「山中に潜んでる盗賊団の事件なんかですと、別の轢き逃げ事件と合わせるといい感じですよー」


「なんのコーディネートなんですか。っていうか、山の中に盗賊団いるのやばすぎじゃないですか」


「刑事さん、この人、よく事件に出くわすんですよ。もっとエグい事件でもいけますよ」


 あろうことか、頼光寺が女刑事に要らん知恵を授けようとしてるんです。


「ちょっと、頼光寺! なに余計なこと言ってんの!?」


 親友に売られた……とか思ってたら、女刑事がワナワナと震え出すんです。え、なに? って思ってたら、いきなり握手求められました。


「もしや、あなたが鈴木さんですか?! あの≪死神の王≫と呼ばれてる?!」


 なんか軽井沢にも私の噂が届いてんですけど。しかも、めちゃくちゃ禍々しい二つ名を勝手につけられてるんですけど。っていうか、女の子につける名前じゃないよね?


「鈴木さんがいらっしゃったのなら、この辺り一帯の事件は全て吸い寄せられたも同然! 署を代表して御礼申し上げます!」


 私って一体なんなんですかね? 勝手に私中心に事件の一極集中が起きることにされてるんですけど。警察署が出してるとかいう謎の栗饅頭もらってやっと解放されましたよ。


 久々の休みで気抜けたのか、事件に過敏になってたのか知らないですけど、そのあと普通に体調崩して寝込んじゃいました。軽井沢楽しむ暇もなく、そのまま東京に戻りましたよ。なんだったんだ、私の休日。


 ちなみに、栗饅頭に毒仕込まれてましたんで、それはこっちの警察にプレゼントしました。軽井沢の警察によると、事件紹介する女刑事なんて初めからいなかったらしいです。

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― 新着の感想 ―
死 神 の 王ッッッッッ! 某孫や見た目は少年を越えましたね!
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