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第27話 迷宮入りした事件の犯人っぽい人が刑事の友達になって調べさせようとしてる

 迷宮入りした事件の犯人って、よく刑事とかにちょっかいかけてるじゃないですか。新しい事件起こして、過去との繋がりがどうとかいうやつ。あれってきっと気づいて欲しくてやってると思うんですよ。


 でも、ちゃんとその事件に詳しい人を選んだ方がいいですよ……。



〜 〜 〜



「あ、鈴木さん!」


 よく行く飲み屋で飲んでたら、急に声かけられたんです。見ると、節穴(ふしあな)刑事なんです。お気に入りの店なのに、もうここ来ない方がいいかなって思っちゃいました。だって、知り合いだと思われたくないんだもん。


 節穴刑事の隣には見慣れない男の人がいます。誰なんだろうの以前に大丈夫な人かなって不安に思った自分に危機管理能力の高さを感じました。


「浦原といいます」


 なかなかの好青年なんです。どうやらひょんなことから節穴刑事と友達になったらしいんです。とりあえず一緒に飲むことになりました。



※ ※ ※



「でも、節穴さんが刑事だって知ってびっくりしたんじゃないですか?」


「ええ。ですが、節穴さんのように社会のために尽くす人を尊敬しているので、驚きはありませんでしたね」


 節穴刑事は役立たずを集めた部署に突っ込まれてたはずです。社会のために尽くしてるというより、社会のお荷物みたいな扱いされてましたよね。


 なんて話しながら、話題は警察が扱う事件に移っていったんです。浦原さんが興味津々なんです。


「迷宮入りの事件なんかもあるんですよね?」


「まあ、あるけど、大したことないよ」


 意味の分からない返答を節穴刑事がしてるんです。酔っ払ってるからおかしいんじゃなくて、普段からこんな感じなんです。


「じゃあ、7年前にこの街で起こった殺人事件のことも知ってますよね?」


 なんだか浦原さんが物語の導入みたいなこと言い出したんです。すると、節穴刑事が言うんです。


「さあ、分かんないです。僕って物覚えが悪いんで」


 ずっこけそうになりました。そういうのって刑事は詳しいイメージありましたけど、それは有能な刑事に限るんでしょうね。そしたら、浦原さんが食い下がるんですよ。このおバカ刑事相手にしても時間の無駄なのにね。


「4丁目の路地裏で両手と目のない死体が見つかったじゃないですか」


 めちゃくちゃ目立ちそうな事件でした。節穴刑事もそうですけど、私も知らなかったんですよね。


「ええ……? そんなにマイナーな事件でした?」


 なんか浦原さんが落ち込んでんです。私、色んな事件に巻き込まれてきて、勘だけは鋭いんで気づいちゃったんですよね。この人、その事件の犯人なんじゃないのって。


「現場のそばの壁にドクロのマーク描かれてたじゃないですか! ネットで有名になってましたよ!」


「そのころ使ってたスマホがチャイルドセーフティかかってたからなぁ……」


 節穴刑事って20代後半くらいなんですよ。7年前なら大学生ですよ。なんでそのころにスマホにチャイルドセーフティかかってんのよ?


「いやいや、迷宮入りした事件として今も警察は追ってるんじゃないんですか?」


 浦原さん、めちゃくちゃ必死に警察の動き探ってんです。でも、節穴刑事のリアクションが全部ボヤボヤしてて、ついには、


「なんでだよぉ……! 警察に犯行声明文だって送られたはずですよ!」


 とか言ってどんどん情報出してくるんです。その前に、この人、めちゃくちゃ警察に構って欲しい人じゃん。要素盛り込みすぎでしょ。


「あ、なんか木偶野(でくの)警部がそんな話してた気がするなぁ」


「ほ、ホントですか! その警部さんは今どこに──」


「でも、確かラーメンこぼしたとかでバレたくなくてその手紙捨てたって言ってましたよ」


「何してんですかぁ!! 犯人からのやつでしょ! ラーメンのスープくらいどうでもいいでしょうがぁ! つーか、ラーメン食いながら犯行声明文読むなよぉ!」


「い、いや、僕じゃなくて木偶野警部が……」


「じゃあ、その迷宮入りの事件、調べてみたくなりましたよねぇ?! 調べてみましょうよぉ! 7年経ってんですから! 犯人だって待ってますよ、きっと!」


 節穴刑事に掴みかかって必死の形相で浦原さんが迫るんです。たぶんこいつに頼んでも意味ないと思うんですけど、浦原さんにしてみたらやっと刑事と友達になったから、ここが攻めどころなんだろうなぁ……。かわいそうですね。やっと出会った刑事が節穴刑事で。



※ ※ ※



 トイレに立って、出てきたら、短い通路のところに浦原さんが待ってたんです。


「どうしました?」


「どうしましたじゃないですよぉ。なんなんですか、あの刑事は……。鈴木さんからも7年前の事件調べるように言って下さいよぉ〜……」


「え……、いや、私、一般人だし……」


 なんかすんごい残念そうな顔なんです。この店の中で一番不幸そう。


「そもそもなんで警察なのにあの事件を把握してないんだよぉ……」


 警察やめるように仕向けられた部署の人だからなぁ、節穴刑事。仮に捜査開始しても、何も始まらないのと等しいんですよね。


「せっかくめちゃくちゃ計画練ったのに、7年も放置ってひどくないですか? 被害者の手とかずっと置いてあるからめっちゃ邪魔なんですよね。めちゃくちゃ干からびちゃってるし……」


 もう自白始めちゃったよ、この人。


「ホントは警察と心理戦とかやりたかったんですか?」


「そうなんですよ……。待てど暮らせど警察が動かないんで、ちょこちょこヒント出してきたつもりなんですけどね……」


 なんて健気な犯人なんでしょうか。だから、思わず提案しちゃいましたよね。


「じゃあ、またやったらどうですか? 同じ犯行方法でドクロのマークも残したら、さすがに気づいてくれるでしょ」

 

「ここだけの話、3年くらい前にやったんです。ワクワクしてたのに、なんの話題にもならなくて……」


「いや、諦めないでくださいよ」


「また今度もうまくいったらどうしようって……そんな夢ばっかり見るんです。その夢の中で、わたしは人を殺してるのに悠々自適に過ごしてるんです」


 じゃあいいじゃん。殺人者の理想の未来じゃん。甘ったれたこと言ってるよ、こいつ。


「だから、あの刑事と仲良くなって、迷宮入りした事件を追わせようとしたんです……」


「あー、たぶんそういうの気づかないと思いますよ、あの人」


「そうなんですよ! なんなんですか、あいつは! 『よくここまでたどり着いたな』って言いたいんですよ、わたしだって!」


「いや、知らないですよ……」


「お願いですから、もっと優秀な刑事の知り合いいませんか? 大切な家族なんかがいる刑事だと、その人をダシに色々やらせたりできるじゃないですか」


「えー、じゃあ、捜査一課長に電話してみます……?」


「ホントですか! ありがとうございます!」


 なーんで私が犯人と警察をマッチングさせなきゃいけないんですかね? とりあえず、浦原さんがメッセージを隠した場所があるらしいんで、それを伝えることにしました。


 浦原さん、次の日に速攻で捕まってました。ちょうどいい刑事いないの?

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