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第21話 死期が近づいてる人にしかないオーラの見える子が眼精疲労で眼科行ってた

 皆さんのまわりにもオーラ見える人いると思うんですけど、たいていそういうのって新しい事件の始まりだったりするじゃないですか。


 便利っぽいですけど、それなりに苦労してるみたいですよ……。



〜 〜 〜



 最近コンタクトの度が合わないんで眼科行ってきたんですよ。病院って待ち時間長いじゃないですか。東京大阪飛行機で行き帰りしても余裕ありそうなくらい。


 ここ何年か編み物流行ってるんで、病院の待ち時間で病院の待ち時間より長いマフラー編んでやろうと思ってんです。できたら病院に寄贈しようかな。


 で、待合室の椅子でマフラー編んでたら、隣から女の子が声かけてきたんです。高校生くらいですかね。


「お姉さん、編み物するんですね」


「病院って暇だからね」


 そのJK、なんか疲れ切ったような顔してるんですよ。


「元気なさそうだね? 大丈夫?」


「はは……、やっぱ疲れて見えます?」


「大学生くらいに見えるね」


「わたしもすぐおばさんになっちゃうのかな……」


 若い頃って自分が歳とるって思ってないんですよね。私なんてこの子からしたら完全におばさんだよね。


「マフラー編んでるんですか?」


「そうだよ」


「えー、難しそう」


「そうでもないよ」


 なんかこの子、ずっと私のそばにいるんです。なにか話したいことがあるのかと思って、編み物の休憩とるふりして訊いてみたんですよ。


「順番待ってるの?」


「眼精疲労でして……」


「若いのに大変だね〜」


 JKが躊躇いがちに私を見るんです。


「あの、お姉さんってオーラ見えることあります?」


「めちゃくちゃ急だね。ないけど」


「……ですよね」


「オーラ見えるの? モヤモヤしてんの常に見えたら邪魔そうだね」


「そうなんですよ! 意外と透過率低いんですよ、あれ」


「へー、じゃあ教室の前の席の子がオーラ出てたらめっちゃ邪魔じゃん。っていうか、だから眼精疲労なの? ああいうのってそういう現実味ある副作用あるんだ」


 JKが今度こそ寂しそうな顔するんです。もう明らかになんか暗い過去ありそうなの。


「死が迫ってる人にしかオーラ見えないんです」


「じゃあ病院なんか最悪じゃない?」


「もう最近は病院ではスルーしてます。お年寄りとかも。申し訳ないんですけどね」


「めちゃくちゃトリアージできてんじゃん」


「わたしにはみんな助けられないから」


「病院とかお年寄り以外だったら助けてるの?」


「はい。でもうまくいかないことも多いんです。だいたいパターンがあるんですよ。交通量多いところだとその人が事故に巻き込まれるとか、若い人とか子供だと事件で死んじゃったり……。わたし、そういう人見ると何かしなきゃって思って、声かけたりするんですけど」


「聖人だね。私だったら知らないふりするよ」


 私がそう言ったらJKがめっちゃびっくりしてんです。私ってそんな薄情な人間なのかな? でも、これで分かりましたよね。このJK、だから眼精疲労なんですよ。


「自分のせいで人が死んじゃうかもって思っちゃいません?」


「私、よく事件に巻き込まれるからさ、感覚麻痺してるのかもね。でも、どうやったって助けられないことばかりだよ」


「ええ……そうなんですか……なんかショックだな……。助けられなかった時、わたしは何週間も落ち込みますよ。その間に別の人のオーラが見えて……また声かけて……」


「それやめたらいいのに」


「え、でも、この力はわたしにしかないし……」


 ちょっとだけヒロイン気質ありそうですよね、この子。可愛いし。悲劇のヒロイン枠に飛び込みそうな空気感がありますよ、危険ですね。こんな感じで実は犯人だったって人、私知ってますからね。


「私なんか、人死んでも、うわ死んでらーって思うくらいだよ。赤の他人ならね」


「……お姉さんって意外とサイコパス?」


「誰が冷血な非人道主義者だ!」


「いや、そこまで言ってないんですけど……」


「でもさ、私には腕が2本あって長さもこれくらいだからさ、抱えられるものもそれなりなんだよ。あっちもこっちも悲しみを抱えてたら自分がなくなっちゃうわけ。私は、誰よりも自分自身を助けたいんだよ」


 JKがため息をついてます。まあ、私だってこの境地に辿り着くまで時間かかったからね。


「この力を持ったからには、わたしにはやるべきことが……」


「アニメとかドラマとかいっぱいあるじゃん? その主人公ってそうやって危機を乗り越えていくじゃん? そういうの観すぎなんじゃない? あんなの鵜呑みにしない方がいいよ」


「そうなんですかね……?」


「酷い事件のニュース見ると、心痛むでしょ? ニュース見なかったら存在すら知らなかったことだよ。私たちはさ、色々知りすぎてんのよ」


「でも、知った以上は責任がありますよね?」


「知っただけで当事者になった気がしてるだけだよ。それで心痛めてるなら、ある程度は無関心でいた方がいい。少なくとも私はそう考えてるし、それで心が保たれてる」


 皆さん、分かりました? 私だってむやみやたらに現場でツッコミ入れてるわけじゃないんですよ。


「今から言う言葉はネガティブに聞こえるかもしれないけどポジティブに捉えてほしい……。()()()()


 なんか雷に打たれたみたいな顔してんです、JKが。いや、私もついに人に感動与えられる存在になったか〜って思ってたんです。


 新しいコンタクトにして1週間してまた検査で病院行ったんです。そこでまたJKに会ったんですけど、明るい表情してんです。


「お姉さん、さっきそこでめちゃくちゃ濃いオーラ出してる人いましたよー! そのうち死にそうでしたね、あれはー!」


 私はひとりのヒロインを殺してしまったのかもしれない……。なんかホントすまん。

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