砂に書いたラブレター
高校生×卒業式×片思い
暖かくなったり、また寒さが戻ったり。
そんな気候が不安定な3月の今日、3年間通った高校を卒業する日がやってきた。
卒業式が終わり、最後のホームルームが終わり、校庭は最後の別れを惜しむ子たちで溢れていた。
そんな子たちを、同じく校庭で眺める私。
先ほどまで一番仲の良かった友達と一緒にいたが、その子が帰ってしまったので、一人になってしまった。
最後の校舎、校庭を眺めた後、私もそろそろ帰るかと一息ついた時、後ろから名前を呼ばれた。
「菱田」
振り返ると、そこにいたのは向井くんだった。
向井くんとは3年間クラスが一緒だった。
1年の2学期から委員会が一緒になったことがきっかけで、よく話すようになった。
それから気が付けば3年間、たまにまた委員会が一緒になったり、毎日何かと話をする仲になっていた。
あぁ、そうか。もう向井くんと会うこともなくなるのか。
私の中の3年間の当たり前が、明日からなくなる。
そんなことわかっていたはずなのに、向井くんの微笑む顔を見て、今さら痛感した。
「菱田、もう帰るの?」
「あー…うん。そうだね。そろそろ帰るかな」
「そっかー。菱田と会うのも、今日が最後かー」
そう言った最後、「いや、同窓会とかで会うかな?」と付け足していた。
一人でブツブツ言うところ、3年間最後まで変わってないなぁ。
私はクスリと微笑んだ。
「同窓会かぁ~。私は行かないかも」
綺麗な青一色の空を見上げ、笑いながら言った。
「菱田、大勢でワイワイするの嫌いだもんな」
ハハッと眉を下げて笑う向井くんに、胸がきゅっと締め付けられた。
明日から、この笑顔も見られなくなる。
私も向井くんも、春からは県外の大学生になるから、本当に同窓会にでも参加しないと、会うことはなくなるだろう。
あ、二十歳の集いで会うかな?
え、やば、向井くんの一人でブツブツ言う癖が移ってない?
この3年間の向井くんの影響は、自分が思っていた以上に大きかったのかもしれない。
それが何だか嬉しかった。
「じゃ、俺もそろそろ行くよ。元気でな、菱田!」
そう言って右手を挙げ、パッと笑って見せた。
私もとびきりの笑顔を見せて、同じように右手を挙げた。
「うん。ありがとう。向井くんも元気でね」
そう言うと、ふっと笑って、背を向けて走って行ってしまった。
最後にしては、お互いに呆気なくあっさりとしたやりとりだった。
でもまあ、異性の友人なら、こんなもんかもしれない。
3年間隠し通したこの想いは、足元に記しておこうと思う。




