一話
美結という少女は家族が恋しかった
別に虐待があったわけでも、酷い扱いをされていた訳でもない
ただ『母親は娘に関心がなかったのだ』
テストで100点をとっても、母親の大事にしていた鏡を壊しても母親は決まってこう言った
「そうね」と
褒めてほしかったし、叱ってほしかった
視界にほんの少し、写真のような見切りでもいい
ただ...入れてほしかったのだが、母親は何も言わず仕事に邁進していた
ご飯は、机に一万円札が一枚机の上に置かれており、殆どの時間を母は、外で過ごすことが多かった
顔を合わせるのには週に1回程度、一番少なかった時には一ヶ月に1回程度だった
よく問題を起こさなかった。と今思えば私は『立派』だったかもしれない
お金には、困ることはなかったけど、家族としての繋がりは摩耗して、薄く、細く、今にも切れそうになっていた
父親は私が生まれる前に亡くなり、女で一つ、私を育ててくれた
立派な母親だった。ので『愛』まで求めていたのは余りにも傲慢だったのかもしれない
だけどそれでも私は見てほしかった
(あれっここどこ?私って誰?)
変な夢?のようなものを見た
知らない女の夢?記憶?感情?思い?
一人の女の厭世と哀愁と妬みと短な怨嗟
が濁流のように頭に流れてくる
(私の名前は浅井美結?違うアリア違う)
ぶつぶつと言葉を心中で呟きながら、記憶の混濁を整理していると、
「■■■■■■。」と声がした
首を動かすと、茶色の髪がよく似合う青年が何を考えているのか分からない複雑な表情で私を見ていた。
何も言わず私を右腕で横抱きにしてベッドに移動して寝かし付ける
毛布を捲り私に掛けながら男は言った「■■■■■■■■■!」
それから私の頭をペタペタと触り安堵の表情に変化する
「■■■■■。」
話している言葉の意味は分からない
英語でも日本語でも中国語でもない
表情を見ると自分に言い聞かせるように呟く言葉にポカンとしてしまう
(なんて言ったの?この人誰?お父さん?違う?)
痛い痛い
頭が地味に痛い
色々な光景がフラッシュバックのようにチカチカと風景が浮かんでは消えたりしている。
私の頭の中を走り回ってるような感じで、気持ちが悪い。
それととても"痛い"
いたい!いたい!頭が割れそう!砕ける!
ガンガンと金槌で叩かれるように、情報が頭の中流れ込んでくる
私は頭の中で情報を整理する
あの夢?は何なのか、この混濁した記憶の混ざり方は?あの人は誰なのか私は誰なのかを。
えっと…あの人が父親で母親はどっち?
今私をベッドに寝かし付けた男が父親だろう
母親がどっちか分からない...
先程の夢に出てきた人か、それとは別の記憶の人
むむむむどっちだ〜~〜?
この世界の私はアリアという少女で、何歳か分からない
天井を見たり壁を見たり自分の手を見たり
う〜〜んう〜〜んと悩んでいるとガタッと部屋の片隅から音がした
ガタッと音がして振り向くと女の人が立っていた
青白い髪を短くした整った顔立ちの綺麗な人だ
「■■■■■〜〜■■■■」
と言うと私の近くに来て、私の顔を覗き込み抱き上げた
「■■■■」
あっこの人アリアという少女のお母さんだ。
この人が私の...じゃないアリアのお母さんなのだろう。
私の記憶の女性とは少し違うけど、そうだと何となく思った
「■■■■■ ■■■■■」
そう言って私を抱き上げ「■■■■■■」と笑みを作った
「おんや」(お母さん?)
誰の最後の記憶なのか分からない断片的な記憶がパズルのピースのように収まって、理解した
私死んだんだ...。
母は?
友人は?
仲の良かった親友と呼べる人は?
私の亡骸の前で何を思ってくれるだろう?
分からないけど...分からないままの方がいい
私事、西京美結は一度死に、アリアとして生まれ変わった
あれから数ヶ月経過して私は1歳になった...らしい
アリアの父親と母親の会話の内容を何とか覚えて、私の年齢が分かった
しっかりとはいかないが、ある程度は言葉を話せるようになったし、聞き取れるようになった
全てある程度なんだけど。と思った方私は言いたいことがあります。
仕方ないでしょ!だってこの世界の基準が分からないからある程度にしかできないの。それに私頑張ったよ!全く知らない言語なのに必死に覚えたの!
約一年も経てば分かったことがある
この世界は、私がいた世界とは、いろいろな意味で違う世界だということ
この世界には不思議な力?物質?元素?みたいなものがあり、それが私達の生活を支えてくれている
今見ただけでも部屋をを照らす白い宝石や、水が出てくる円筒などがある
漫画などでみたことがある異世界だ
「アリア〜〜今日もかわいいな」
と言って私を抱き上げる男
名前はランドル
毎日私に抱きついてくる変態だ。
「ランドル、アリアも疲れてるじゃない。寝かせてあげて」
と言ってランドルから私を取り上げて寝台に置いてくれた
この人がアリアの母親らしい
名前はミカリア
「そんなことよりランドル水の魔術具を持ってきて」
「分かったよー」
そう言ってランドルは、隣の部屋に向かっていた
ミカリア悲しげに「ごめんね」と粒やいた
えっ?
先程のランドルをからかっているような楽しそうな表情は一瞬だけ歪んだ
だけとランドルが戻ってくると直ぐにミカリアの表情は一変して、微笑に変わった
ランドルの左手には円筒、右手には木製の桶がある
「持ってきたぞー」
「ありがとうランドル」
あの理由の分からない呟きと表情は何だろう?
不思議に思って考えたけど私には分からない




