どうやっても化けそうにないハズレスキル研究会
皆様こんにちはこんばんは、遊月奈喩多と申すものでございます!
このお話は、Twitter上で「こういうタイトルで書かれた話を見てみたい」という投稿を見かけたのをきっかけに考え、筆を執ったものです。
短めなので、すぐにお読みいただけるかと!
それでは、本編スタートです!!
太古の昔、異なる次元から現れて先住の神々を食らいつくし、この世界を創造し直した美貌の少女神・グラテア。彼女の統治する世界において外敵などおよそ脅威たりえず、異なる世界からの救い手なども必要とはされなかった。最北の地にはかつて別の世界を滅ぼしたことのある魔王も存在しており配下の魔物もいるが、グラテアの圧倒的な神威の前には魔王すらも無力に過ぎず、人類の生活圏への侵略なども企てようもなく。今はグラテアの計らいにより肥沃な大地をもたらされて平和に暮らしている──侵略の必要自体なくなっているのである。
そう、世界は平和そのものだった。
当然コミュニティにおける小さな諍いや犯罪はあったが、女神の敷いた法の下に統一された世界においてはそれ以上の争乱が起きることもない。人々の暮らしを脅かすものといえば、せいぜい憲兵の手を逃れた盗人が民家に押し入ったりしないかどうかという心配くらいのものである。
ところで、この世界に住まうものにはひとりひとつずつ『スキル』と呼ばれる特別な才能が備わっている。才能と呼ぶには超自然的で、いわば魔法のようなものでもあるが、魔法のように師から伝えられたり学習によって覚えられるものではなく、逆に何ひとつ学ばなかったとしてもそれだけは生まれつき行使できる──そんな代物である。
『スキル』の由来ははっきりとわかっておらず、グラテアがかつて喰らった女神たちの肉片や血飛沫が大気中に溶けて他の生物に影響を与えているのだとも、グラテアが自らを信仰する民への恩恵として下賜したものとも言われている。その研究に生涯を費やした学者も多くいるが、少なくとも日々を生きる一般市民にとっては大した関心を集める事柄でもなかった。
そして、そんな平和な世界だからこそ。
彼らのような者たちが現れたのである。
* * * * * * *
町外れの、廃業して久しい酒場跡。
ひとりの青年が半ば朽ちかかった戸を叩くと、中から声が聞こえる。
『わからせたいんじゃない』
「わからされたいんだ」
すかさず青年が答えると、それに答えるように鍵が開く。
『よし、おいで』
青年のまだ少年らしさも残る声に対して、屋内から誘う声は夜闇のような艶やかさを帯びた低音。聞く者が聞けば逢瀬の現場にも思えるそのやり取りの後、青年は扉の向こうへと消えた。
「遅かったじゃねえの、ティア」
「ごめんごめん、樽の中身調べてたら遅くなっちゃって」
中には中性的な顔立ちの少年が待ち構えており、まだ変声期を迎えていないと思しき声でたったいま合言葉と共に入室した青年──ティアをからかうように笑う。
「そういう君だって着いたのはついさっきだろう、リオ?」
「あっ! 言うなよへファイン! オレはやることあったの!」
耳を撫でるような低音で窘めるように笑う巨躯の男──へファインに噛みつくリオの姿は、その小柄さと声音も相まってまるで小動物のよう。
思わずクスッと笑ったティアにも噛みつこうとするリオを抱えるように止めて、へファインが「それじゃあ会員も揃ったところだし、始めようか」と声をあげた。
「今回聞いたのは、こんなスキルだ」
へファインがティア、リオ両名に紙を配る。そこには、『1日に1回、どこかで誰かの歯が抜けるのを察知できる気がするスキル』と書かれていた。思わず目を疑ったふたりに、へファインが「だよね」と言いたげな視線を向けながら、高らかにも聞こえる声音で宣言する。
「今日はこのスキルについてみんなで考えてみよう。なんでこのスキルがあるのか、どういうときに役立てられるスキルなのか」
その言葉に、紙から視線を上げたふたりも力強く頷く。
生まれながらに授かった固有の才能、『スキル』。
その種類は様々で、その多くは生活や、滅多にないことではあるが街を荒らす狼藉者を懲らしめるのに役立つようなものだ。このスキルによって生業を決めるものもいるくらいである。
しかし、中にはどうしてそんなスキルを持っているのか、そもそもどういう場面で使い道を見出だせるのかわからないものも少なからず存在する。
その謎は未だ解明されておらず、また目を向ける者もそう多くない。
しかし、彼らは違った。
氷の溶けるタイミングが何となくわかるスキルを持つへファイン。
建築物の窓の数を正確に当てられるスキルを持つリオ。
そして、1週間に歩いた歩数が周知されるスキルを持つティア。
3人はあるとき運命に導かれるように出会い、紆余曲折の末に結成したのである。役だてどころのわからないスキルについて情報を集め、話し合い、お互いの想像や感想を述べながら時折世間話も交え、食事をしたり何かしらの活動に励んだりする研究会──その名も、『どうやっても化けそうにないハズレスキル研究会』を!!!
彼らの活動が思ったより周囲に認知され、それによって何人かの心を救っていることについては、当人たちの知るところではない。
~終~
前書きに引き続き、遊月です。お付き合いいただきありがとうございます! お楽しみいただけましたら幸いです♪
Webサイトでの執筆を始めてそろそろ7年くらいになる遊月ですが、実は「スキル」という概念を登場させたことがなくて(近いのは別作品における『魔族』の固有能力かも知れませんね)、今回が初めての挑戦となりました。しかも「ハズレスキル」?
果たしてどういうのがあるかしら……と考えながら筆を進めていましたが、思いの外ハズレ(?)っぽいスキルが思い浮かんだような気がしております(笑)
スキルというと、私個人としては「眠ったら疲れが完全に引いているスキル」がほしいところですが、皆様はどのようなスキルをお望みですか?
また別のお話でお会いしましょう!
ではではっ!!




