マリナと京子と狩野
眼竜先生と関わってから、私の感情が落ち着かない日々が続いるのだが、今日は嬉しい出来事がある。
京子が退院するのである。
「眼竜先生、今日、京子が退院するので、早退したいんですがいいですか?」
あいかわらず、ベットに横になってなっている眼竜先生に尋ねた。
「あ?なんでだよ?」
「なんでて、一緒に住んでるだから、何かと手伝ってあげないと大変ですよね」
「‥‥ご勝手にどうぞ」
「ありがとうございます!」
眼竜先生に頭を下げて部屋から出て行き、京子と一緒に退院手続きをした後、家で京子の退院祝いをするため、ケーキ屋さんに寄ったのだがそこでちょとした事件が起きたのだ。
「京子、見て!どれも美味しそう!どれにする?今日は私の奢りだから好きなの選んで」
「ホント!やったー。えっと‥どれにしようかな?」
嬉しそううに京子はディスプレイを覗きんだ。
「そういえば、マリナ、特別救急医療科の方はどう?」
選びながら聞いてくる京子に私は言葉に詰まりながら答えた。
「えっ‥と。まぁ、そうね。問題がないといえば嘘になるかな?」
「何それ?どういう事?」
苦笑しながら聞き返す京子
「う〜ん。そうね。少し問題を私が起こしてしまって、1人の男性の看護師に迷惑をかけてしまって‥‥」
「そう‥なんだ。」
「そう、ちょうどあの男性のような‥‥あー!」
ちょうど会計が終わり帰ろうとした人が、ちょうど、迷惑をかけた看護師の背格好に似ていたので、指を指したのだがよく見ると本人だった。
私は謝ろうと思い急いで男性の所に行き、肩に手をかけて引っ張った。
「あの!すいません!」
ボトッ
ニブイ音がした。
「‥‥‥」
看護師が足元を見たいので私も足下を見た。‥‥ケーキの箱が落ちている。私が引っ張ったせいでケーキを落としてしまったのである。
「‥あっ!ごめんなさい!」
私は落ちたケーキを拾おうとしてかがもうとしたのだが、彼は私を遮り
「大丈夫。汚れるから触らないで」
と言い、ケーキを拾い始めた。
「あ、その‥‥」
私が何も言えなくなってるのを知ってか、知らずか京子が声をかけてきた。
「どうしたの〜?マリナ〜?‥‥あ、もしかして、彼の落としちゃったの?」
「どうしよう京子」
「そうね‥。そうだ!ねぇ、あなた、私たちこれから2人で、パーティするんだけど、マリナがケーキ落としちゃみたいだから、よかったら私たちの家で私たちが買ったケーキ、一緒に食べませんか?」
そう男性に話しかける京子に驚いた私は隅に彼女を引っ張って行き、問いただした。
「急に何を言ってるの京子!?」
「何って、彼なんでしょ。迷惑をかけた看護師って」
「そ、それは。そうだけど」
「だったら、直接謝罪しないと。いい機会じゃない」
「そうかも知れないけど‥‥」
「でしょ!じゃあ、決まりね!」
今度は京子が私の手を引っ張り彼の元に戻った。
「ね!謝罪の気持ちだから」
と彼に言う京子
「いや、大丈夫ですから。気にしないでください‥‥」
「そんな事言わないで!私たちが心苦しくなっちゃうからね!」
「大丈夫ですから」
「いいから!」
彼の腕を引っ張り、ケーキを買ってから、強引に連れ出し、家にむ
かう京子の後ろを歩いてついてく私はある重要なのでに気がついた。
う〜ん。本当は京子と2人で祝うつもりだったのに‥まぁ、いいか。‥‥うん?そういえばなんか、忘れてるような?‥‥あっ!
部屋が‥‥そう散らかっているのである。もう、それは人に見せられないほどの荒れようである。京子と住んでいた時はほとんど京子が家事をしてくれていた為、綺麗な部屋だったのだが‥‥私一人で生活するようになったら、なんか知らないけどいつのまにか汚くなっていたんだ。なんとかしなくては‥とにかく先に入って部屋を片付ける必要があるよね。
どうにかしようとあれこれ考えているうちに、家の前についてしまい、対策を立てる事ができなかった。仕方ない、なるようになれ!
「じゃあ、どうぞお入りください」
京子はガチャリとドアを開け中に入ったと、同時に立ち止まった!
「マリナ、急いで電話して」
「えっ?どこに?」
「警察によ!部屋が荒らされてる!」
「いや、京子それは荒らされてるんじゃなくて」
「何言ってるの!部屋がぐちゃぐちゃになってるじゃない!」
「‥‥すいませんでした!!」
私は京子の前で土下座をした。
「私が散らかしたんです。別に空き巣が入ったわけではないんです」
「へっ?何言ってる?空き巣が入ったわけじゃない?えっじゃあ、これ全部マリナが汚したの?」
「そうです。だから、もう、これ以上聞かないでください!すいませんでした」
私が泣きそうになりながら必死になってるとクスクスと笑い声がきこえてきた。
「こんなに誤っているんだから、許してあげたらどうですか?これからパーティするんですよね。私も手伝いますから。まずは片付けをしませんか?」
なんと人ができた看護師さんなんだろう。
「ふ〜。まぁ、しょうがないですね。すいません。こちらから招待したのに。ほらマリナも謝って」
「すいませんでした〜」
私はこの男性にあと何回謝らなければいけないのやら
皆で部屋を片付けた後、私は、ケーキと紅茶を入れ彼にだした。
「今日本当にすいませんでした」
「いえいえ、大丈夫ですよ!本庄先生」
「‥‥うん?」
自己紹介してないよね?わたし。
「本庄先生と西本先生ですよね?さっき部屋を掃除してる時に気づきました」
「スタッフがいっぱいいる中よく私たちの事ご存じですね」
部屋着に着替えてきた、京子が座りながら言った。
「それは、分かりますよ。お二人は病棟内では有名ですし、本庄先生は私に指示を出しましたしね」
「有名ってどう言う事?」
「そらは‥あの眼竜先生の部下の方ですから‥」
まぁ、なんとなく分かるような気がする。
「そうなんだ‥‥あの‥一つ聞いてもいいですか」
私が彼に指示を出した事を覚えてると聞いて少し恐怖をかんじた。
「なんでしょうか?」
「あの、私が原因で移動を命じられたってほんとうてすか?もし本当なら私たちあなたに謝らなければいけない。」
「‥‥先生は関係ないですよ」
彼の答える間が物語っている。彼は関係ないとは言ってくれたけど‥なんか、彼の優しさが今の私の心には剣が突き刺さったように痛く感じた。
「そう‥‥」
しばらくの間沈黙が続いた。その沈黙に耐えきれなかったのか、京子が手を「パチン」と叩いていった。
「はい!じゃあ、この話は終わり!せっかく同じ病院で働く仲間なんだから、仲良くしようよ!」
「そうだね」
私はうなずく。
「じゃあ〜、自己紹介しよ!君は私とマリナの事は知ってるみたいだから、君の名前をまずは教えてよ」
京子のこういう明るい性格は本当に助かる。
「名前ですか‥‥僕は狩野 実といいます」
「ほうほう。実くんですか」
いきなり下の名前で呼ぶ京子。
「実くんの年齢は?」
狩野はいきなり下の名前で呼ばれた事に驚きつつも答えた。
「28です」
「28!若いねー」
おばさんくさい事を言う京子。とういか、お前は29で一つ年上だけだろ!
「ご家族は?」
今度は私が訪ねた。
「弟がいます。両親は小さい頃に亡くなりました」
本当に空気が読めない私
「なんかゴメンなさい」
「大丈夫ですよ。小さい頃なんでほとんど記憶がないですから」
また、空気が重くなる。でも、やっぱり京子がその空気を軽くしてくれる。
「そうなんだ。それで看護師なるなんて頑張ったじゃん!凄いわ」
「そうですか?」
「そうだよ〜。私なんか親に言われるまま育っただけだもん。尊敬するよ」
狩野実は少し嬉しそうに笑った。
それから、私たちは京子のおかげで楽しいひと時を過ごす事ができた。
「じゃあ、もう時間も遅いしお開きにしましょうか?実くん。これから、病院で会ったらよろしくね」
京子は狩野の方を向いて微笑んだ。
「こちらこそよろしくお願いします!」
私が迷惑をかけた狩野くんと京子のおかげでなんだか少し仲良くなった気がした。
でもこの出会いが彼を苦しめる事になる事を私たちはまだ知らなかった。