病院の闇
「眼竜先生!」
私は勢いよくドアを開けて部屋に入って行った。
いつもと同じように、彼はベットで横になっていた。
「五月蝿いな!なんだよ!」
ベットから起き上がり私の方に振り向いた彼の顔の前に私の顔をを突き出し迫って聞いた。
「眼竜先生。なんで心不全ってわかったんですか!?」
「なんの話だ?」
「昨日、病棟を歩き回って、看護師に指示を出しましたよね」
「なんの事だ?」
彼は舌打ちをしながら横を向いた。
「嘘つかないで下さい!ネタは上がってるんですよ」
「本当、五月蝿い奴だな‥‥」
眼竜先生は私の方を向いていった。
「で、その患者さんをお前はどうしたんだよ。」
「どうしたって、そんなの、担当医に許可をもらって、検査の指示を出しましたよ」
「お前が直接許可を得たのか?」
「いえ、看護師さんに聞いてもらうようにお願いして‥‥」
「ボンクラ、お前って、本当にこの病院の組織ってものがわかってないな。その看護師、今どうなってると思う?」
「どうって‥」
「だいたい、お前は患者さんの年齢やもともとの病気は何かを知って指示をだしたのか?」
「そんなの‥‥わかんないですけど」
「そんな事だと思った。その看護師さん無事だといいなぁ」
「えっ!どういう事ですか?」
眼竜先生はなにも答えなかった。
時は同じく病院の最上階にある院長室では、院長の一 金丸 救急科長 金田 丸 例の心不全の担当医である石 音無が話していた。
「石くん。どういう事か説明してくれるかな?」
一院長は院長室の一際大きな椅子に腰をかけながら偉そうにだずねた。
「はい!院長。例の患者さんは特別救急医療科の本庄マリナが指示を出して、それで‥‥」
「患者さんは助かったと‥‥」
「はい。すいませんでした。」
「いやいや、いいんだよ。例え、どんなに治療してもあと少ししか生きられない患者だとしても命が助かったんだから‥‥ね。‥でも、本庄先生は勝手に指示を出したんだよね?い•し•く•ん。」
「あ、いや‥」
「勝手に指示を出して、看護師が担当医の指示も聞かずに勝手てに、やったんだよね」
威圧的に石先生に詰め寄る院長
「やったんだよね!」
「はい!そうです。」
石先生は看護師から言われ許可を出したのにも関わらず、院長の威圧的な言葉に負けて、嘘を言ってしまった。
「うん。そうだよね。例え患者の命が助かったとしても、担当医の許可を得ないのは問題だよねー。金田くん」
不敵な笑みを浮かべとなりに立っていた金田にたずねた。
「その通りです。院長」
「そうだよね。うん。じゃあ、何かペナルティーを与えないとねぇ、お荷物達にね‥‥」
「院長、私に任せてもらえませんか」
金田は院長にお辞儀をしてお願いした。
「何かいい、ペナルティーを思いついたのかな?金田くん」
「はい。ちょっとお耳を」
金田は院長の耳元で誰も聞こえないように話した。
「なるほどね‥‥。うんいいね。よし、この件に関しては、担当医の指示を聞かなかった看護師を含め、金田くんに一任する」
「はい。お任せ下さい」
院長室で、院長と金田は2人は高笑いをした。それにつられて石も笑っていた。
次の日の朝、私こと本庄マリナは早めに出勤をした。眼竜先生が言ってた言葉が気になっていたからである。
看護師さんが無事だといい?どういう事なの?
私は病院に着くと急いで昨日いた看護師さんの病棟に行き、4階のナースステーションの中を覗いて探したが看護師さんはいなかった。
それで、私は。今日は夜勤なのかな?と思い、近くにいた看護師さんに聞いてみた。
「昨日、私が指示を出した看護師さんって今日はいないの?」
聞いた看護師さんは私を睨みつけながら教えてくれた。
「‥‥転属になりました!本当忙しいのに、なんで急に転属になるのよ!引き継ぎもできないじゃない!」
転属?どういう事?
「えっ!?なんで?」
「あなたが余計な事を言ったせいでしょ!だから、彼女、担当医の許可もえずに検査オーダーを出してしまったのよ!」
「担当医の許可を取ってない!?いや、そんなはずは‥‥」
確か、彼女はちゃんと許可を取っていたはず。私も無理やりにはさせてないはず‥‥多分。
「知らないですよ。もう、いいですか!忙しいんですから!」
「あ、はい」
おかしい、絶対におかしい!彼女はキチンと許可をとったいたはずだ。なんで取ってない事に?そして、私が勝手に指示をだしたことに?まぁ、指示を出した事は確かなんだけど‥‥でも、おかしい。なんで?
私は考えながら自分の局に戻ろうとした時、横から声がした。
「あ〜あ、やっちまったな。お前は」
「わっ!!い、いきなり、声をかけないでくださいよ!」
眼竜先生が耳元で囁いてきた。
「お前のせいで看護師さん。左遷させられたらみたいだな。なんでか、わかるか?」
「いえ、」
「病院経営としては、ベットの回転率を上げた方が儲けになるんだよ。で、あの患者さんは‥‥言わなくてもわかるだろ」
「そんな、人の命ですよ」
「そうだな。だが、経営陣は考え方が違うんだよ。それで、その方針がわかってない奴を切り捨てるんだよ。それに加担するやつもな」
「じゃあ‥‥」
「切り捨てられたんだろうな。お前のせいで」
そう言い残して眼竜先生は去っていった。
私のせいで切り捨てられた。そんな‥‥私はその場でしばらくの間立ちつくしていた。
一方、左遷させられた、看護師、狩野 実は救急科長の金田に呼び出されていた。
「なんで呼び出されたか、わかるかな」
少し怯えた表情で実は答えた。
「わかりません」
「そうかそう、まぁ、そうだよね。実は、担当医の許可を得ずに、検査をして患者を助けたにも関わらず、左遷させられる、優秀な看護師がいると、聞いてね‥‥優秀なのに、もったいない!と思って、うちの科で働いてもらおうかなと思って‥‥ね」
「ありがたい話ですが、私は優秀じゃありませんし、もうこの病院が信じられないので辞めようと思っていますので、すいませんが‥‥失礼します」
実は振り向いて、部屋から出ようとした時、金田が声をかけてきた。
「そうか、それは残念だよ。次の所、就職できるといいね。こんな、問題を起こした看護師を雇う心優しい病院があればね‥‥」
実は立ち止まり振り返って言った。
「どういう意味ですか?」
「別に深い意味はないさ!‥‥そういえば、君の弟くん元気かな?
たしか、この病院に入院してるんじゃなかったかな?辞めるだったら出て行ってもらわないとねぇ。転院先見つかるといいね」
「脅迫ですか?」
「いや、辞めるかどうかは自由だし、僕は事実を述べただけだよ。
まぁ、よく考える事だね」
金田は不敵な笑みをうかへながら、実の肩軽く叩いてから、部屋からでていった。
狩野の選択肢はもはや一つしかなくなった。そう、金田の言う通りに行動すると言う事だ。
狩野の両親は幼いころに亡くなっており、5つ離れた弟と親戚の家に引き取られ、育ってきた。
しかし、親戚の家では、食事はほとんど与えられず、家事を押し付けられ、気に入らないという理由で暴力を振るわれてきた。そんな生活から逃げ出す為、中学を卒業すると同時に、弟と一緒に、家を出て2人で暮らし始め、朝から晩まで働き、やっとの思いで看護師になったのである。
そして、これで、普通の生活を弟と送れると思った矢先、弟が意識を失い学校で転倒しこの病院に運び込まれのだ。そして、今も眠ったままだ。
「くそ!なんで‥」
狩野はしばらくの間、立ち尽くしていた。