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真眼の使い方

「あー、暇だ」


床に直接置いてある電話の前で座ってる私こと、本庄マリナは

転科してから、3日経ったが‥‥本当にほとんど仕事をしてない。


特別救急医療科と名がついているので救急医療専門の科なのだが、電話機一つすら置いていなかったので、経理に文句を言いにいたがダメの一点張りだった。穏やかな私も流石に腹がたったので、電話の必要性を経理に永遠と感じられるほどに文句を言い続けたら、ある条件の元、置いてもらう事に成功した。

条件とは、この病院には他にも、というよりも、メインの救急科があり、その救急科から要請があれば手伝いに行くこと、ということだ。

うん?メインの救急ってなに?じゃあ、こっちの救急科の特別ってなんだよ!全然特別じゃないじゃん。と思いつつも、その条件を了承した。

それで、たまに、手伝いの要請の連絡が入るのだが、意気込んで行くと、子供の面倒を見てくれとか、医薬品が切れそうだから、保管庫から、取ってきて、汚れたから掃除しておいてだの、やってることは、ただのパシリである。

しかも、私の科のお偉い科長様である、眼竜先生は一切手伝おうとしない!

この科がお荷物科である事がよくわかった3日間だった。


「お荷物かぁ〜。どうにかしなくちゃなぁ〜。どうしょうかなぁ〜」


この3日間、実は色々とお荷物というレッテルを剥がそうと努力していた。


例えば、救急室に「たまたま」いれば、救急患者が来た時は追い出されないだろうと張り込んでみたり、思い切って、救急科長に頼み込んでみたりね。結果は‥今の現状見ればわかるよね。救急室から追い出されるは、救急科長には小1時間説教されるし‥‥惨敗した。


 どうしようか、あれこれ作戦を立ててると、いきなり眼竜先生がベットから起き上がり


「俺、ご飯食べてくるわ」


と声をかけて来て、部屋から出て行こうとした。


「眼竜先生も何か考えてくださいよー」


「知るか!お前がやるって言ったんだろ。せいぜい頑張りな」


捨て台詞を言って部屋から出ていった。


ムカつく‥‥


「そもそも、お前の科だろ!べーだ」


眼竜先生が部屋から出て行ったから聞こえないだろうと思っていたら、ガチャリ、急にドアが開き眼竜が顔をだした。


「なんか言ったか?」


「いえ!別に」


ビックリしたー。聴こえてたのか?すっごい地獄耳だな!‥‥地獄耳?もしかしたら、眼竜先生って絶対音感を持った地獄耳なのか?

確か‥絶対音感を医療に使うマンガがあった様な‥‥それでこの前の心筋梗塞の患者さんの治療場所を特定したのか?‥‥てそれは漫画の話で実際には無理よね。う〜ん。なんか気になって来た。

気になった私は急いで立ち上がり、眼竜先生の後を追った。


「あ、いた!」


‥‥あれ?おかしい?


眼竜先生は食堂を通りすぎ、入院病棟にむかったのである。


眼竜先生はご飯を食べに行くって言ってたのに、今食堂通りすぎたよね?‥‥この方向は‥‥入院病棟?なんで?気になったのでさらに後をつけて行った。


眼竜先生は入院病棟に着くと一つ一つの部屋をじっと見つめながら歩いていき、時より止まって、病室をじっと見つめ、また歩き出す。その繰り返しをしていた。


何をやってるんだろう?不思議に思った私は、近くにいた病棟の看護師に尋ねた。


「ねぇ、あの先生。いつもこんな事してるの?」


病棟看護師は眼竜先生を見て答えた


「あー、眼竜先生ですか?そうなんですよ。いつも、ああやって、見回ってるんですよね。なんか不思議な先生ですよね」


「まあ、変な奴に間違えないからね」


「いや、そういう意味ではなくて」


病棟看護師は興味深い事をいいだした。


「たまに、入院患者さんの事聞いてくるんですけど、一度も眼竜先生が見た事がない患者さんなのに、患者さんの病気を知っていったり、危険な状態だから気をつけてと言われた患者さんは、数日後に

は状態が悪くなるんですよ。なんか、まるで病気が見えてる様なかんじですかね」


「病気が見えてる?」


「いや、実際に見えてるわけないと思いますけど、でも、そんな様に感じられるんです。」


「ふ〜ん」


それは、そうだよね。そんな目があったら、検査の必要ないよね。

‥‥検査の必要ない?確か、京子が、眼竜先生は検査をしなくなったて‥‥。まさかね。


「ちなみに、眼竜先生、最近何か言ってた?」


「眼竜先生がですか?ねぇ、誰か何か聞いた?」


「あ、僕、今朝指示をうけました。」

ナースステーションにいた1人の看護師が手をあげた。


「なんて言ってた?」


「えっと401号室の飯田さん。尿量をしっかり見とく様にって」


「尿量?その患者さん。実際の尿量はどうなの?」


「えっと、少し少なくなっていますが、出てはいますよ」


「少なくなってきてる?」


この情報だけでは、確信はできないけど眼竜先生が気をつける様にと言ってたから恐らくこの患者さんは‥‥うっ血性心不全になるのかもしれない。いや、少なくなってきてるのだから‥‥


「はい、でも気にする程度とは‥‥」


「ねぇ、今すぐこの患者さん胸部レントゲン撮って来て」


「えっ!じゃあ、担当の先生に連絡してから‥」


「だったら、早く連絡して!」


「はい!わかりました!」


私は眼竜先生の方をじっと見つめながら、こう思った。

彼は、本当に病気が見えるのかもしれない‥人間の病気が‥‥

もし、そうだとしたら彼は病棟を見回るだけで、患者さんの状態を知る事ができる‥‥効率の良い使い方だ。

まあ、使えたらだけどね‥‥


看護師さんは担当医の許可をもらえたらしく、急いでレントゲンの準備をして、患者さんをつれて、撮りに向かった。私はその後をついて行った。


撮影終わった、レントゲンを見たが、やはり胸水が溜まっており、心不全の可能性が高くなった。


「この写真担当医に、見せておいて」


私は病棟の看護師さんに告げると自分の科の部屋に戻っていった。

確かめないといけない事があるからだ。





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