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お荷物じゃない!

「なんで、この部屋にはベットしかないんですか?」


私はベッドで横になっている眼竜を見ながら、何もない部屋で座りお茶を飲んでいる。


「なんでって、お金がないからなぁ」


「いやいや、いくら経営状態が悪い病院でも、机を支給するお金がないって事ないでしょ」


「あのなぁ」


眼竜は面倒臭そうに起き上がって答えた。


「ボンクラ、お前は何なんだ?こんな部署に回された、お荷物だろ」


「誰がボンクラよ!私は本庄マリナって名前があるし、私はお荷物じゃないわよ。」


そう、何故かここの新設された部署は病院側としてはお荷物部署として扱っているらしい。


「いやいや、ここに回された時点で、病院側としては、お荷物と思われてるんだよ!そんな奴に病院がお金をかけるとおもってるのか?ボ•ン•ク•ラ」


「ボンクラじゃないって言ってるでしょ!それに、私は希望して来たのよ。確かに一回却下されたから、人事に無理いったけど」


その言葉を聞いた眼竜は笑い出した。


「希望して来た?お前、変な奴だな。人事に刃向かって、希望通り、島流しにされた訳だ。あー、笑った、笑った」


眼竜はベットから降りて、私の顔の前に哀れそうな顔を突き出してきた。


「知らないようだら教えてやるよ。ここの病院の経営人は金勘定しかしないからな。だから、病院に刃向かったり、金を稼がない医師は病院にとって、邪魔でしかないんだよ。辞めさせる事はできないから、仕事をさせない部署を造って、自分から辞めさせようと考えたんだよ」


「でも、それって‥人の命をお金としか見てないじゃない。倫理的に間違ってる‥」


眼竜は再びベットに戻って腰をかけた。


「倫理的にはな。でも、俺はそれは間違った事じゃないと思ってる」


「えっ?」


「医者や看護師、コメディカルスタッフは人の命を救う為に身を尽くす聖職と思われてるけど、所詮はサラリーマン。会社だよ。病院を経営する為には稼がないといけないしな。わかっているけど、俺はその考えが嫌いだ。そう考えている奴も嫌いだ」


私はただ、人の命を救うのが仕事で、それが当たり前の事と思っていた、私にはなんか、身に染みる話であると思った。彼の続く話を聞く前は。


「お前だって、人の命を二の次に考えて保身に走ったろ。結局は、同じだよ。お前もな。だから、お前はボンクラで十分だよ」


確か、あの時は自分で、自分の将来の事を考え、諦めようとした。確かにボンクラと呼ばれてもしょうがない。しょうがない。でも、


「言いたい事はわかったわ。でも、だからと言って、何もしないで、ここで寝ているあなたには、言われたくない!」


「なに!?」


彼は立ち上がった。


「私はお荷物じゃないし。そう呼ばせない!あなたは、そのままでいればいいじゃない!私はこの現状を変えてみせるわ」


「ふん!勝手にしろ」


彼は私に背を向け、寝てしまった。

‥‥しまった!やってしまった。彼を怒らせてしまった。なんで目が緑になるのかを聞きたかったはずなのに‥。しょうがない、悶々とするがまた別の機会にしよう。


私は部屋から出ていき、京子の病室に向かった。特別救急医療科がお荷物の部署と言われてることについて話す為だ。


「聞いてよ!京子〜。明日から転科して、特別救急医療科に行くんだけど、なんか病院の経営陣にお荷物部署って呼ばれてるらしいの」


「らしいわね。まぁ、初めから知ってたし」


「えっ!」


私は京子がお荷物部署って呼ばれてら事に驚いてしまった。


「なんで?知ってるの?」


「実は私は特別救急医療科に配属命令が昨日出たの。理由に新設部署で、あまり忙しくないから、そこで良く休むようにって。変でしょ。普通は新設部署だからこそいろいろと、やらなきゃいけない仕事があるはずなのに。忙しくないって‥」


確かにその通りである。患者さんは見ることは少ないかも知れないが、普通は軌道に乗るまで、事務作業など色々なことをしなくてはいけないので忙しいはずである。


「そう‥なんだ」


「だから、わかったの。私はもう切り捨てるべきお荷物と思われんだって」


私はなんで言葉をかけていいか分からなかった。京子は私と違って直接、「お前はもういらない」と言われたようなものだ。それを知らなかったとは言え、自分の事しか考えていなかった事が恥ずかしくてしょうがなかった。


「でも、私は諦めないわ!お荷物とレッテルを貼った人達を見返してあげるんだから!それにそもそも、退院したら転科希望出すつもりだったしね!」


「そうだね。その通りだ」


意外にも京子が落ち込むのではなくやる気になっていたので安心したらふと疑問がよぎった。


「うん?そう言えばなんで眼竜先生は、お荷物って言われてるんだろう?ムカつく男だけど、技術はこの病院では飛び抜けてると思うけど。京子なんか知ってる?」


「う〜ん。よくは知らないけど、なんか、昔、患者さんの検査の事で上司と揉めたらしいよ。それ以来彼は患者さんに検査をしなくなったんだって」


「検査をしない?それじゃあ、病気かどうかもわかんないじゃない?」


「そうなんだけど、でも、彼に診察してもらった人は、悪性腫瘍や狭心症など、重症になりやすいもの全て見つけて、正確に治療してしまうって噂だよ」


「はぁ?意味がわからないんだけど、もし、それが本当ならすごい事じゃない。」


「そうなんだけど、検査をしない事が問題らしいよ。病院にとって、利益が無くなるからね」


そういえば、彼も稼がない医者は病院にとってお荷物だって言ってたな。


「だから、お荷物と‥‥」


「稼がないってのもあるけど、それだけじゃないかもね」


う〜ん。なんなんだ?彼は。


私の中で、悶々とした気持ちがさらに大きくなった。







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