特別救急医療科
あの不思議、出来事から1週間が経過したが、私の中で悶々とした日々が続いていた。
今は妹分?である京子と昼ごはんをしているところである。
「ねぇ、京子。なんで、あの男、透視せずにできたのかなぁ?」
「さぁ、なんでだろ?でも、いいじゃない。患者さんが助かったんだから」
「そうなんだけどさぁ〜。気になるじゃん!しかも、途中で目の色が変わってたし」
「そうだった?」
京子のこのサバサバした性格がより一層私を子供ぽっくさせるんだよなぁと思いながら私はテーブルにつっぷした。
「そういえば、マリナ。今度新しい部署が新設されるらしいよ。なんだったかなぁ?」
「特別救急医療科でしょ」
京子の方に顔を向けて答えると、視界にあの男が入ってきた。呑気にお茶を飲んでいるのである。
「あ〜そうそう。そんな‥」
ダン!!
「どうしたの?マリナ?」
私は京子の話を遮るように立ち上がり、男の元に歩いて行き、男の机を叩いて言った。
「ねぇ、あなた!」
「何?休憩中なんだけど」
男は怪訝そうに振り向いた。
あの時は気づかなかったけど、目は細いが綺麗な二重で、鼻筋が通った、短髪で黒い瞳の、まぁ、世間で言うイケメンって言うやつだろ。性格悪そうだけど。
「何って‥色々聞きたい事があるんだけど!」
「忙しいから後にしてくれない」
「今休憩中って言たよね!」
「言ったか?そんな事」
やはり性格が悪奴である。
「言いましたー。嘘ついたらいけないってお母さんに言われなかったの!」
「お母さんって、お前、いくつだよ!」
しまった。子供っぽいところを、やな奴に見られてしまった。
「五月蝿いわね!いいから、私の質問に答えなさい!」
私は男の顔の近くに詰め寄り問いただした。
「あの時の目は何?なんで何処が詰まってるかわかったの?」
男は私の肩に手を置き立ち上がり、哀れそうな顔つきで、私を見つめて言った。
「お子ちゃま。五月蝿いぞ。もうお家に帰る時間だろ。早く帰りな」
カチーン
はい!天敵に決定!私の天敵ランキング、トップ10の中のダントツの第一位になりました。ちなみに2位はラーメンに指を入れて提供してきた、ラーメン屋のおっちゃん。どうでもいいけど。
捨て台詞を言って去っていった男を見ながら、いつか思い知らせてやろうと考え京子とランチをしていたテーブルに戻って座った。
「なんだって?」
京子が訪ねてきた。
「うん?いま忙しいってさ。あのヤロー」
「あのヤローって、なんか他に言われたの?」
「別に」
子供扱いされた事を京子に言うのも、なんとなく嫌だった。だって、私は京子のお姉ちゃん(自称)だもん。
「さぁ、午後の仕事始めようか」
私はこれ以上聞かれないように、仕事に促した。
午後の仕事を終え帰ろうとしたら、偶然にも京子とバッタリ会い2人で帰る事にした。ちなみに、私と京子は今はルームシェアをしている。寂しいわけじゃないよ。この方が何かと便利だからだ。‥なんか文句ある?
今日のあった出来事を話しながら帰ってると突然、ボールが私たちの前に転がってきてそのまま、車道に出て行った。
何かやな予感がする、と思った束の間、子供が飛び出してきて、ボールを拾ったのと同時に大きなクラクションがなった。
ガシャーン!
交通事故である。
私は急いで現場に、走って行った。
‥‥
「なんで‥」
そこに倒れていたのは子供ではなく京子だった。子供は泣いていたが傷ひとつなかった。京子が子供をかばって助けたのである。
「京子、なんで‥」
「子供‥大‥丈夫‥?」
意識が朦朧としている中、尋ねてくる。
「大丈夫だよ、京子」
「‥‥‥」
言葉が返ってこない。
「京子、京子!‥救急車、誰か救急車呼んで!京子、必ず私があなたを助ける!絶対に!」
救急が来るまでの間私は必死に彼女名前を呼び続け、応急処置をしたいた。
救急車が現場に到着するとあの男が救急バックをもって出てきた。
「どけ!」
男は私の肩に手をかけると後ろに引っ張り、私を放り投げた。
「何するの!」
私はすぐに立ち上がり男に掴みかかったが、男は私の目を真っ直ぐ見つめ、深い声で言った。
「俺を信じろ!」
私はその言葉を聞くと座り込んでしまった。
男は京子の方に振り返ると、ゆっくりと目をとじた。前と同じだ。
あの時は、数秒後に男が目を開くと、目が緑色に変化した。こんどは?
男の目が見開く‥緑色の目だ。
男は救急バックから消毒液を取り出し、京子の腹部にぶっかけた。
そして、メスを取り出し、腹部を切って開いた。切り口から真っ赤な血が噴き出てきた。どこかの動脈が切れているのである。
男は遮断鉗子を取り出し、腹部を切った場所に突っ込んだ。
カチカチカチ
動脈を遮断する音が鳴り響くと同時に噴き出ていた血が止まったのである。
「よし、このまま、病院のまだ運んでくれ」
男は救急隊の人に頼んだ。
「わかりました」
京子が救急車に乗せられていく。
「おい!ボンクラ。お前はどうする?」
男は地面にへたり込んでいた私に声をかけてきおかげで、私は平常心を取り戻した。
「と、当然よ。京子は私が助けるんだから!」
私は急いで救急車に乗り込んだ。
男、うんうん。彼のおかげで、京子は一命をとりとめたのである。
1週間後、私は京子病室へ見舞えに来ていた。京子の回復は早く傷跡もあまり、目立たなそうだ。
「ふ〜ん。そんな事があったんだ。感謝しなきゃね」
京子が言った。
「そうなんだけど、なんか釈然としないんだよね」
「なんで?」
「う〜ん。なんとなく」
「なによ。それ〜」
笑い声が病室内に響いた。
「そういえば、マリナ、この前の特別救急医療科が開設されたって、院内ニュースに出てたよ。それで、ビックリしたんだけど、ほらこれ見て」
京子が院内ニュースを出して私に見せてきた。
「ここの科長さんなんだけど、ほら見て」
私は覗き込んで京子が指差す先をみた。そこには、目が細いが綺麗な二重で鼻筋の通ったイケメンが写っていた。
「げっ!」
「眼竜 真っていうらしいよ。マリナ、釈然としないんだったら、転科希望出してみたら?私も退院したら彼の所に転科してみようと思っているの。」
「そうなの?」
「うん」
「そっか〜。う〜ん。まぁでも、京子と一緒ならいいか。わかった!じゃあ、転科希望出してみるね」
翌日、早速私は転科希望を出したのだが、認められなかった。なんで?新設された場所だから希望者が多いのか?でも、私の周りには京子以外、行きたいと言う話は聞かない。
却下された理由はよくわからなかったので私は人事部に理由を聞く事にした。
「失礼します。あのー、転科希望を出した本庄マリナといいますが、却下された理由を知りたくてきました。どなたに尋ねらばいいですか?」
「本庄マリナ先生ですね。聞いて来ますので少しお待ちください」
しばらくすると男の人を連れて戻ってきた。
「本庄先生ですね。ここではなんですので、奥でお話ししませんか?」
そう言われると私は事務長室に案内された。きっとこの人が事務長なのだろう
「お掛けになってください。何か?飲まれますか?」
「あ、大丈夫です」
私はそう答えながら、事務長室にある、高そうなソファーに腰をかけた。
「理由でしたよね‥‥そうですね。一言で言うならあなたには向いていないって事ですかね」
向いていない?能力がないって言いたいの?失礼じゃない?と心の中で怒りで一杯になりながら聞き返した。
「向いてないってどう言う事ですか?やってみなきゃわからないじゃないですか?」
「憤慨されたなら、申し訳ございません。別にあなたに能力がないって訳じゃないんです。どちらかと言うと、眼竜先生の方に問題があるといいますか‥」
事務長と思われる男性は歯切れ悪く答えた。
「あの男が性格が悪いのは知っています。でも、彼の技術は目を見張る所があり、きっと学ぶ事があると思います」
自分で言ってて笑いそうになるぐらいの嘘である。ただ、目が緑に変化したりする彼に興味があるからだ。
「私は、あなたの為を思って却下したんですけどねぇ」
「大丈夫です。後悔はしません」
「う〜ん。絶対後悔しますよ」
「何があっても後悔しません!」
「じゃあ、もう一回だけ、話し合ってみますよ」
「よろしくお願いします。」
事務長と思われる男性は渋々、了承した。数日後。私は転科希望が認められ、特別救急医療科に転属となった。
転属日の前日、私は、特別救急医療科に私物を移動させる為、荷物を段ボールに入れ持ち運んでいた。そな時、私は浮き足立っていた。新しい場所に移動するのは、少し楽しみだったからだ。
コンコン
私は特別救急医療科である事を確認してから扉を叩いてこら、あけた。
「失礼します」
「‥‥」
私は思考が一時停止した。そこにあったのは、部屋の中心に置かれたベットだけだったからだ。
「‥あれ?部屋を間違えたかな?」
もう一度、部屋の外にあるプレートを確認した。プレートにちゃんと特別救急医療科と書かれていた。
「間違ってないよね。机は?電話は?パソコンは?えっ?なんでベットだけ?どう言う事?」
私が訳が分からずにテンパってると後ろから聞き覚えの声がした。
「邪魔だ。どけ、ボンクラ」
振り返りってみると、あの緑の目に変わる眼竜 真が立っていた。
「ねぇ、どう言う事?ベットしかないんだけど」
「あ、お前何をいって‥あ、お前か明日から来る、お荷物は」
「はぁ?何を言ってるの」
「だから、お前だろお荷物」
「誰がお荷物よ」
「お前こそ何言ってるんだよ。ここは、特別救急医療科、別名、特別お荷物科。病院にとってお荷物な奴が回される部署なんだよ」
「‥‥」
「なんだ、知らなかったのか」
お荷物?この私が?
「おーい」
この私がお荷物
「なんでなのよー!」
私は病院中に聞こえるほど大きな声でさけんだ。