策略
「綺麗に写ってますね」
ニヤニヤとしながら取材を受けた雑誌に写っている自分の写真を見ている本庄マリナに狩野は言った。
「でしょ!こんなに可愛いんだから、私人気出ちゃうかなぁ?」
「ふっ」
その言葉を聞いた眼竜は鼻で笑った。
「なんか、言いたい事があるんですか?眼竜先生」
眼竜はベットから起き上がっていた。
「別に〜。ご飯行ってくるわ」
そう言い残すと、部屋から出て行った。
「何でああ言う言い方しかできないの!!」
「まぁまぁ、マリナ先生落ち着いてください」
「私は落ち着いてるわよ!」
「怒っているくせに」
狩野はマリナに聞こえないように小さく言い、コーヒーを淹れに言った。ちなみにこのコーヒーメーカーは狩野の趣味で持ち込んだものである。
「しかし、眼竜先生よくわからない人ですよね。患者さんの事になると一生懸命ですけど、それ以外は何というか……」
「ズボラ、怠け者、変態、ムカつく奴」
「……そこまで言ってません。」
眼竜先生について話していると電話が鳴ったので、狩野は電話に出た。
「はい、特別医療救急科です!……はい。……はい。わかりました。」
ガンシャンと電話を切った狩野は私に言った。
「マリナ先生。院長からの呼び出しです」
「要件は?」
「さぁ、お願い事があるから、至急、眼竜先生を連れてきて欲しいとの事です」
嫌な予感をしながらも、眼竜先生に声をかけて院長室に向かった。
院長室では怒りを抑えつけながら、指をトントンと机を叩いている院長が椅子に座っていた。何故か、その横に金田先生が立っていた。
「君達はいつまで、私を待たせるんだい」
「すいません!」
私は院長に謝りながら、隣であくびをしている眼竜先生に小声で言う。
「先生がいつまでも、ぐずぐずご飯を食べているから怒られてしまったじゃないですか!」
「……」
無視をする眼竜に苛立ちながら、院長に尋ねた。
「それはそうと、何で金田先生がいるんですか」
私が院長にたずねると金田が変わりに答えた
「それは、私から言おう。先日の週刊誌の記事で当病院の評判が高くなったのは承知していると思う」
「はぁ〜」
答えになってないと思いつつも話の続きを聞く
「そこで、当院としては、更に評判を上げる為、この企画に参加しようと思う」
金田から一枚の紙を渡されたので読み上げた。
「あなたの街を綺麗にしよう!ボランティア募集!」
「そう。この地域の清掃に参加し、地域密着をアピールする。そこで、雑誌の取材を受けて、有名になった君達の出番って訳だ。ちなみにこれは、業務命令だから、拒否は出来ないから」
「えっ〜」
「えっ〜。じゃない!!わかったなら、自分の仕事に戻れ!」
「はい、はい。わかりましたよ。眼竜先生行きましょう」
渋々了承しながら、部屋から出て行った。
「これで、いいのか?」
部屋に残っている金田に尋ねる院長。
「ええ、取材のおかげで彼らの上がった評判をまずは、他に落とさないと……」
「しかし、やってる事は逆じゃないか」
「ですから……」
ヒソヒソと院長に耳打ちする金田
「なるほど…ほぅ…」
院長は金田の策略を聞いてニヤニヤしていた。
数日後、私たち3人は朝早く起き、清掃ボランティアに参加していた。
「皆さん、朝早くからお集まりありがとうございます。」
このボランティアの主催者であろう男の人が話している。
「住みやすい街にする為には、まず街が綺麗でなければと私は思います……」
永遠と続くのかと思うほど長い話に飽き飽きしていた時後ろから声をかけられた。
「あの〜、もしかしたら、本庄先生ですか?」
「はい。そうですが…何か?」
「あ〜、やっぱり、あの雑誌を拝見しました。会えて光栄です!雑誌で見て綺麗な人だなぁ〜と思ってましたけど、実際はもっと綺麗ですね」
「え〜、そんな事ないですよ〜」
私は否定しつつも、嬉しくてたまらなかった。
しかし、私の耳元で
「社交辞令だよ」
と囁く眼竜先生の言葉が苛立ちに変わった。
「なんか、言いました〜?眼竜先生」
笑顔で尋ねる私
「……」
無視かよ!
「じゃあ、本庄先生、今日はよろしくお願いします。」
「こちらこそよろしくお願いします。」
清掃ボランティアに参加する前は嫌々だったけど、こんな風に地元の街の人と交流出来るのは楽しいかもしれないと思うと、嫌々だった、わたしは少し楽しい気分になっていた。そして、長い長清掃ボランティアはスタートした。
「結構、ゴミが落ちているね。」
「そうですね。マリナ先生」
狩野は答えた。
「眼竜先生ちゃんと拾ってください」
私はゴミを全然拾わない、眼竜先生に言った。
「先生が拾わないと、私たちが大変になるんですけど」
「……」
相変わらずの無視!腹が立つわ!
眼竜先生にイライラしながらゴミを拾ってると、
「本庄先生!疲れましたか?」
先程、主催者の挨拶の時に声をかけてきた男性が話しかけてきた。
「ええ少し」
「そうですか〜。あ、じゃあ、これどうぞ!」
新しいスポーツドリンクを彼は渡してきた。
「えっ!いいんですか。ありがとうございます。」
私は彼からもらったスポーツドリンクをごくごくと飲んだ。
「ありがとうございます。」
「いえいえ!よかった……うっ!」
急に彼は声を出してうずくまり、倒れた!
「大丈夫ですか!?」
声をかける私たち
「お、お腹が…」
「ちょっと失礼しますね〜」
私は彼のお腹を触って触診をした。
お腹の張りは無さそう。反跳痛もない。なんなんだ?
穿孔?イレウス?虫垂炎?どれも当てはまらなさそう。
「眼竜先生!」
私は眼竜先生を呼んだ。
眼竜先生は彼をじっと見つめ、言った。
「ふっ。金田か?」
眼竜先生はそう残すと振り向いて立ち去って行った
「えっ?ちょと眼竜先生どこ行くんですか?」
金田ってなに?そうそう、どこに行くんですか?見捨てるんですか?
「狩野くん。救急車よんで」
「はい!」
変人であっても、患者だけは見捨てる事はしないと思ってたのに!見損なったわ!
私は苛立ちながら救急車の到着を待っていた。




