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天才医師の片鱗

病院の職員が使う食堂には大きな掲示板がある。ここに掲示される物はだいたい、医局にあるそれぞれのパソコンにメールで届くのだが、うちの医局には当然の事ながらそんな物はない。だから、私はここで連絡事項を確認しなくてはいけない。とてと面倒くさいのである。


「しかし、よかったね。狩野くん。弟くんなにも問題がなくて」


新しく、仲間になった看護師の狩野と一緒に連絡事項を見に来ていた。


「はい。よかったです!」


嬉しそうに答える狩野を見てると私まで嬉しくなる。そう思って狩野の顔を見つめてた私に狩野から声をかけられ驚いた。


「マリナ先生!」


「えっ何?何?べ‥別に君のことなんて見てないよ!」


「何言ってるんですか?それよりアレを見てください!」


「えっ?何?」


狩野の指を指している場所を見るとそこにはこんな事が書いてあった。


「解雇通知


当院、消化器外科医 石 無音

この度、医療ミスの隠蔽により、当院に甚大な被害をもたらした事により昨日を持って当院を解雇とする。 

       

                 病院長 一 金丸」


「‥石先生、解雇されたんだ」


「眼竜先生が言っていた事が本当なら、解雇できる理由になりますもんね」


狩野と話していると後ろから声をかけられた。


「君たちも、そうならないといいね」


振り向くと、そこにいたのは救急科の金田だった。


「元気かな?狩野くん」


狩野に声をかける金田


「金田先生‥‥」


「全く、君には幻滅したよ。行った事をまともに出来ないなんてね。まぁ、新しい場所で頑張ってよ。」


ポンと肩を叩いて去って行く金田。


「何よ!まるで自分は何もしてないと言いたげなあの態度。気にしちゃダメよ!狩野くん!」


「分かってますよ。マリナ先生」


「うん!よく言った!」


本当に狩野はいいやつである


「じぁあ、ついでにご飯食べて行きましょ」


「あ、はい。」


私たちは食堂でお互い好きなものを買って席にすわった。狩野はハンバーグ定食とチーズケーキを買っていた。そういえば狩野と再会した時はケーキを買っていたから、甘いのが好きなのかなと思い尋ねようとしたら、食堂にあるテレビから緊急速報のアラームがながれた。


「速報です。先程、化学工場で爆発が起きて死傷者が多数出てるようです。繰り返します。先程、午後1時30分に化学工場で大規模爆発が起きました。」


「爆発!‥‥しかもこの場所って近くじゃない?と、言う事はここに沢山の患者さんが運ばれてくるって事!ご飯食べてる場合じゃない!行くよ狩野くん」


「わかりました!」


私たちは手をつけてないご飯を食堂のおばちゃん達に託して、食堂を出いき、救急室走っていった。


救急室は患者さんでごった返していた。一人でも多くの医師を必要としている感じだ。


「金田先生手伝います。何をすればいいですか?」


私は現場を取り仕切っていた金田に声をかけた。


「あ?お前らなんか要らないよ!よく知らない奴と組んでも時間が余計かかるだろうが!この部屋から即刻出て行け!」


「何を!」


「聞こえなかったのか?邪魔だ!」


ドスン!

金田は私の体を強く押したせいで私は尻餅をついた。


「何するのよ!」


私が立ち上がり歯向かおうとした時、白衣の襟を掴まれ後ろに引っ張られた。


「やめろ、ボンクラ!」


引っ張ったのは眼竜先生だった。


「ほら、狩野も行くぞ」


「あ、はい!」


眼竜先生は私を引っ張って救急室から出ていった。


「ちょと!眼竜先生!」


引っ張られた襟から手を振り解き、眼竜に言った。


「先生だってあの惨状見たでしょ!沢山の患者さんを助けられなくなっちゃうでしょうよ!」


「はっ!誰が見捨てるっていつ言った?」


「なっ!」


「ほらお前らはこのバックを抱えて俺についてこい!」


「えっ‥ちょと!」


私と狩野は眼竜先生の後について行くとそこにはドクターカーが準備されていた。


「ほら、乗れ!」


「眼竜先生、乗れって、許可取ってます?」


「そんなもん、とってないに決まってるだろ」


「ですよね〜」


狩野と私は車に乗り込んだ。そして、向かった場所は予想していた通り事故現場だった。


「なんだ、これは…」


誰が見てもわかるほど悲惨な状況だった。痛い痛いとの叫び声が聞こえ、多くの人が血を流し倒れている。消防隊員や救急隊員が走り回り、近隣から集められた、医師たちが治療に当たっている。防護服は着てないのでおそらく、有毒ガスは発生していないのだろう。


「ボンクラ!遅いんだよ!急げ!」


眼竜先生は本部に走っていった。


「城西東和病院の眼竜です!状況はどうですか?」


「今、患者さんを区画にわけトリアージをしている状態です。被害を受けた人が多く、とにかく人手ない状況です。ですから、まだ、手がつけられてないC区画をお願いします!」


「わかりました!おい!ボンクラ、狩野!行くぞ!」 


「はい!」


地図を見ると一目散に走り出す眼竜先生の後を必死に追いかけ、現場に急行した。

現場に着くと眼竜先生はじっと目を閉じてから見開いた。そう、あの緑色の目に変化したのである。


「おい!狩野!今から言うことをメモって、トリアージのタグを付けていけ!」


「えっ?あ、はい!」


「赤い服を着た女性、上腕骨骨折。その隣の黄色い服、右下腿挫創。その隣の男性、頭部打撲、顔面打撲…出血はしてないみたいだ…」


眼竜先生はどんどんと病名を狩野に伝えていく。私がその光景を呆気に取られてとガシッと後ろから腕をつかまれた。


「せ…先生、た…助けて‥」


腹部に鉄パイプが突き刺さって血を流している男性がいた。


「大丈夫ですか!大丈夫ですか!」


私はその光景を見て頭が真っ白になった。

その状況に気付いた眼竜先生が急いで走って来た。


「おい!ボンクラ邪魔だ!どけ!」


眼竜先生に場所を譲る私。


「脾損傷だな。おい、ボンクラ!急いで輸液をしろ!」


「はい!」


「まだ、意識はあるが、このままだと出血性ショクを起こしてしまう…」


少し考えた眼竜は、救急バックから消毒液を取り出し、患者にぶっかけた。


「先生何を!?」


「ここで止血するぞ!」


「えっ!?いくらなんでも、無理です!やめましょうよ!」


眼竜先生は私の顔見ていった。


「俺を信じろ!」


眼竜先生は麻酔を患者にかけ、メスをとり開腹した。お腹からは血が溢れ出て血の海になり、全く見えない状態だった。


「やっぱりこれじゃ無理だ」


「俺を信じろボンクラ、遮断鉗子をよこせ!」


私はもう無理だと思いつつ鉗子を眼竜先生に渡した。受け取った眼竜先生は血の海になっているお腹に行き良いよく差し込んだ。


カチカチ


……今まで溢れ出ていた、血が止まった。


「おし、このまま病院に運ぶぞ、ボンクラお前ついていけ!」


「あ、…はい。わかりました。」


私は言われるがまま、救急車に乗り込み、病院に向かった。今まで見た光景が信じられないと言う気持ちのまま…

そして、この患者は一命を取り止める事ができた。






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