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お荷物な天才との出会い

けたたましいサイレンの音が鳴り響く。

夜間救急を受け入れている城西東和病院では、夜も眠れない忙しい日々が毎日続く。

それは、命と向き合い、1人でも多くの人を助けたいとの思いで、医師やコメディカルスタッフが頑張って働いているからだ。

しかし、それはスタッフの言い分であり、病院の経営者は経営を安定ささるかを考え、お荷物であるものは切り捨てようと必死なのである。


そんな、病院で働いている、性格良し、見た目良し(自称)の私こと本庄 マリナは驚くべき男性医師と出会う事になる。いや、マジで、色んな意味で本当にビックリするから。


スズメの鳴き声とともに、夜の激しい日常が終わった日の事、一緒に当直だった西本 京子と話しながら更衣室に向かっていた。


京子と私は小学生からの付き合いだ。小さい頃はいつも私の後をついてくる可愛い妹的存在だったんだけど、色んなところが立派に成長したせいか、今では、私の方が妹みたいな気がする。


なんか‥ムカツク


そうはいっても、愚痴をこぼしたりできる本当にありがたい存在だ。


「しかし、昨日はいつも以上に大変だったよね」


私は京子の顔を見ながら話しかけた。


「確かに。交通外傷でしょ。それから尿管結石に‥缶から指が抜けなくなった人もいたよねー。」


「あ、いたいた。あれ、奥さんにバレないように貯金箱からお金を取ろうとして抜けなくなったんだったよね。」


京子との話に夢中になっている私の横から男の人の小さな声が聞こえてきた。


「AMI #6」


私は驚いて声がする方に振り向いた。

なぜなら、AMI#6!は急性心筋梗塞の事で血管の6番が詰まっている状態の事を言うからだ。しかも、#6は広い範囲に影響があり、重篤な状態になりやすいため、急ぐ必要がある。


振り向いた先には白衣を着た男性ゆっくり歩いているだけで、急いでいる様子は見えなかった。


「どうしたの?」


京子が不思議そうな顔をして尋ねてきた。


「いや、いま‥急性心筋梗塞って聞こえなかった?」


「えっ!そんな患者さんいるの?」


「いや‥」


私は気のせいかもしれないと思って振り返り更衣室に向かおうとした時


『スタットコール、スタットコール』


いきなり、病院内放送が鳴った!


『手の空いているスタッフは至急循環器病棟に来てください。繰り返します。手の空いているスタッフは至急循環器病棟に来てください』


「なんかあったみたいだね。いくよマリナ」


「あ、うん」


私は気になりながらも京子と一緒に循環器病棟へと走り出した。


循環器病棟につくと慌ただしくスタッフが走っていて、こちらに気づいていない様子だったので、私は1人の看護師を捕まえて尋ねた。


「ねえ、キミ、どうしたの?」


「あ、先生ですか?よかったぁ。801号室の患者さんが急に苦しみ出したんですけど、循環器の先生が全員、今手が離せない状態なんです。急いで来てください」


そういうと、看護師さんは走りだしたので、私と京子は看護師さんの後を追った。


「ねぇ、もしかして、さっき言っていた心筋梗塞の事じゃない?そうだったら、私たちの手に負えないわよ」

京子は私に話しかけてきた。


「そうかもしれないど‥」


病室に着くと直ぐに私はベットサイトモニターを確認した。


「STが上昇している‥心筋梗塞だ」


直ぐに検査して梗塞部位を治療しなくてはいけない。


「すぐに手術室の準備とPCIできる先生を呼んで来て」

私はそばにいる看護師さんに声をかけた。


「無理です。先生。PCIができる先生は今別の手術で空いませんし、手術室も全部埋まってて、すぐには開きません」


最悪の事態だ、このままだといずれはこの患者さんは‥どうすれば‥


最善の策を出そうと必死に考えていると肩をガッと掴まれ後ろに引っ張られた。


「どけ、ボンクラ」


顔を起こしてみると、更衣室に向かう途中でゆっくり歩いていた男が立っていた。


「そこの看護師、PCIここでやるから道具持ってこい!」


「えっ?」


「えっ!じゃねぇよ。早く持ってこいって」


「はい!」


コイツは何を言ってるんだ?ここでやる?どうやって?圧の調整は?そもそもどうやって心臓にカテーテルを通すつもりなの?

危険すぎる。辞めさせないと。


「無理よ危険すぎる!そもそもどこが詰まっているかわからないじゃない!」


そう言って私は彼の肩に手をかけようとしたが、彼は私の手を振り払い、彼は私に言った。


「俺を信じろ!」


俺を信じろ?何言ってんだコイツ。いきなり言われても、信じられるわけないだろ。止めなきゃダメだろ。


一緒に止めるように頼もうと京子の方に振り向いた。


「京子も一緒に止めて!」


「マリナ‥私は患者さんを救いたい。だから、少しでも可能性があるなら彼を信じてみようと思う。うんうん信じる」


そう言うと京子は彼の近づいて話しかけた。


「私も手伝う。何すればいい?」


男は少しにあつきながら答えた。


「おっ!いいね!そう言うやつ、好きだよ。じゃあ、助手をお願いするわ」


「わかった!」


2人は私を尻目に準備を行なっていく。

それを見つめているだけで何もしていない自分がだんだん惨めになっていく気がした。


「‥わかったわよ!私も手伝うわよ!何が起きても知らないからね!」


「マリナ‥」


「で、そこの男、私は何をすればいいのよ」


「あ、最初にひよった奴は使えないから、外に出てろ」


「なっ!」


ムカつく奴である。


「マリナ、私のサポートお願い。それならいいでしょ」


「ちっ!しょうがない。おいボンクラ!ここ持ってろ」


「なっ!」


本当にムカつく奴であるが、手際よく行なっていき、ガイドワイヤーを入れる手前まできた。


「これからどうするの?」


「少し黙ってろ」


彼は目をつぶって少し静止した。

何やってるの?まさかお手上げ?だから止めろって言ったのに。あーあ、これで私たちは終わったわね。


「ねぇ、今ならまだ間に合うからここで中止し‥」


私が言い合える前に彼の目が見開き緑色に輝き、ガイドカテーテルを入れ始めた。


「えっ!」


彼は迷いもなく手術を進めていく。どこが詰まっているのかもわからないはずなのに、モニターで確認ができないはずなのに‥なんで、こんな事が可能なの?出来るはずがない。


「終了。お疲れっしたー」

彼はそう言って部屋から出て行った。わけもわからずに手術が終わってしまったので、私と京子はあっけにとられて、その場に立ったままだった。


後日、確認のため検査を行い、#6番が綺麗に治療されていた事がわかった。


そう、彼が小声で言っていた#6。なぜ彼はスタットコールが放送される前に心筋梗塞の患者がいたのを知っていたのか?そして、どうして#6番が詰まっているのを知っていたのか?

何よりも、心臓が直接見れない中でどうやって、手術を行えたのか?


疑問は尽きないのである














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