神さまの本。
今日も沈みゆく夕日
とっぷりと闇に包みこまれる前の世界
世界の出来事は置き去りにされて
この地上で生きた僕ら
暗闇の帳に灯される家々の明かり
生きてる人たちの息づかいが聴こえる
ここが地獄でも天国でも
神さまたちは見守っている
変えられない自然を変えられないように
僕らは生かされている
まるで宇宙を回す時の歯車
僕らは時間そのもので
神さまたちが、そっと見守っている
数ある世界の中で、この地上でない世界の中で
幾万もの本たちのように
そっとしまわれている宇宙の何処かにある図書館
僕らは、その中で、ひっそりと生きている
神さまたちは、こっそりと
僕らの描かれた本を読み
物語を見守る……
そこに描かれた世界。
変えられないんだ──
だけど、僕らの物語は世界は本になって宇宙図書館の中の何処かにか、あって……
今日も、ひっそりとしまわれてて
今日も、こっそりと……ひとりの神さまが手に取った。
読んでみる……
そこに、描かれた僕ら。
僕らのことは、そんな風にして見守られてるんだけど
本に書かれていることは、神さまたちだって、書き換えられない。
違う神さまが、何処かにいる神さまが、僕らの本を物語を世界を書いて……描いて、宇宙図書館に、こっそりと置いて行ってしまったから──
──ただ、その本は、特別製で──
文字が動く。
僕らが、動くたび。
だから、目が離せない
今日も、何処かのひとりの神さまが、僕らが描かれた物語を世界を本を
こっそりと手に取った。
『只今、貸し出し中』
読み終えて返しに来た神さまの直ぐそばで
また違う神さまが、ひとり。
僕らの描かれた物語を世界を本を手に取る──
──どうやら、人気が、あるようだ。
僕らの物語は世界は、この宇宙図書館の中でも
目が離せないのだろう。
そして、繋がり合う幾万もの宇宙のように
また違う世界を物語を……僕らが呼吸するように
息づかいを息吹を吹き込んで
新しい世界を創る人たちが、いる。
今日も、この静かな宇宙図書館に
コツコツと足音を立てて僕らをまるごと世界ごと借りてゆく神さま
僕らの描く物語が、たくさんの世界と繋がり合って
また……何処か遠くへ
僕らは仮初めの本物の世界を
グルグルと回りながら渡ってゆく。
何度も、何度でも──
あの赤い夕日のように。
もうすぐ、夜の帳が降りる
宇宙図書館が、誰かのために、こっそりと開けられている
開館時間は眠っている間に
今日も、静かに──夢みる間に
ひっそりと、キラキラと、
合わせ鏡の中のように
何処までも無限に続く本棚が
遥か高い天井まで届く
神さまたちの乗る特別製の乗り物にのって
今日も僕らが描かれた物語が世界が本が
ひとりの神さまに、借りられてゆく──