第五話 事実と集う者
同僚の無事の安否が気になる中
ある衝撃のことを聞かせる
一方で第九地区に集う者達
それぞれの地区長達
中央にある城まで向かい、
中に入ると
衛兵達が立ち並んでいた
そこに軍服をきた先程あった男が
こちらに話しかけてきた
「地区長、ヴァンラーレ王国の
天騎士団長様から先ほど
通達がございました」
神妙な顔でニコレッタに
話をしている
それに対しニコレッタは
鼻でふんっと言わんばかり
の顔で聞いている
「副長、どーせろくな通達じゃあ
ないことぐらい分かるよ
それよりこのキイチとの話を
したい。
私の部屋には誰も入らないでくれ」
こちらをギロっと睨む副長と
呼ばれる男。
それを静止するかの如く
ニコレッタが話す
「このキイチって男は私の大事な
客人だ。
何かあればカフカ副長でも
守ってもらいたい
頼めるか?」
そうニコレッタが話すと
こちらに視線を向けていた
副長が下を向き
少し考えた様子で
ニコレッタに答える
「分かりました。ですが妙な行動を
すればすぐに逮捕します
今街の中はこのキイチという人の
話に持ちきりになっています
ニコレッタ地区長や自分なんかと
同じ雰囲気の男がきたと
街の住人が怯えていました
衛兵達も先ほどからピリピリした
雰囲気をずっと出したままです
なので
こちらの対応次第という形に
なりますがそれでもよろしい
でしょうか?」
その話を聞くとニコレッタは
頷き、
ホッとした様子で副長は
胸を撫で下ろしていた
副長がニコレッタに向けていた視線は
再度こちらに向き
俺に話してくる
「“我らの星々に幸あれ”」
そういうとカフカ副長は
その場を後にした
「話は済んだから私の部屋までいこう」
そういうニコレッタに俺は頷き
付いていく
部屋につくと
一般的にいうと執務室ってとこ
だろうか
いろいろな写真がある
勲章もいくつか飾ってあるのが
見える
そこには
義理の兄、ニルヴァードとニコレッタの
若い?ときの写真があった
相変わらずにニルヴァードがニコレッタの首後ろに腕を回し、
それを嫌がってるニコレッタが
見て取れる
少しニヤニヤしていたのだろう
「ゴホッ!そんなに気になる
写真か?」
咳払いをされて俺は慌てて
近くの椅子に座る
「さて、本題に入ろう
君の仲間についてだね」
いよいよだ
緊張と不安で手汗がびっしょりになる
「はい、宿舎にいた仲間は無事
でしょうか?」
「実は、、、」
ゴクリと唾を呑む音が響くほど
部屋が静かになっている。
「実は、、、?」
重いニコレッタの口が開く
「実はわからないんだ。
無事かどうかも情報がなくちゃ
どうにもならないでしょ?
それに少なくともこの街には
いないよ。残念だけどね」
そりゃあそうだよなと肩から力が
抜ける
宿舎にいた仲間は四人。
それすら話していないのに
分かるはずもない
期待を他所に余計疲れがドバっと
増した気がした
「あっ!話は逸れるけど
キイチはね
既にアルハルド鉱石の影響で
能力を使えると思うよ!
胸元みてごらん!」
大事な話の中なにをいってるんだ
と顔を傾げながら
胸元を見てみると
うっすらだが白く透明な光が
出ているのがわかった
「な、なんですかこれは?!」
先程まで仲間の心配していたのだが
それが吹き飛ぶほど
自分の異常事態に驚いていた
「ん?だからあの鉱石の力が
キイチと一致したんでしょ」
冷静な顔でニコレッタは答える
「能力を俺も得たってことですか?」
困惑している俺を横目に
ニコレッタが淡々と喋る
「そう!キイチはね地球の能力を
得たのよ!
まあ能力の詳細はわからないけどね!」
地球?
この星の能力得たってまず
意味がわからない
そもそも地球に能力なんてないだろうと
キイチ自身は思っていた
しかし、この能力が後々
全てを動かすことになることを
彼はまだ知らない
能力をどう使うのかを
ニコレッタに問おうとした
その時!
「はあー、、そういうことか、、」
ニコレッタが険しい顔をしながら
下を俯く
「え?どうしたんですか??」
ニコレッタの急な態度に
焦りながら俺は心配をする
「ごめんね、キイチ。話の途中だけど
また後でで大丈夫か?
いや、カフカ副長がさ
ヴァンラーレ王国の通達があるって
言ってたの覚えてる?」
凄く嫌そうな顔をしているニコレッタは
俺の顔を見ながら聞いてくる
「はい。覚えてますよ。確か
天騎士団長からの通達でしたよね?」
「そう。その通達はね
今回の総長会をここ第九地区でやること
なんだ。」
「総長会ですか??」
「うん。第九地区もそうなんだけどね
ヴァンラーレ王国に加盟してる
第一地区から第十三地区の長が
一度に集まって話し合いをするのを
今回はここでやるってことなんだ」
「なるほど。ってなんで通達も
カフカ副長から聞いてないのに
わかったのですか?」
「ん?あぁそれはね、私達加盟地区の
アルハルド鉱石にはある研究者が
付け加えたとされる信号があるんだ
例えば、昔でいうと
GPSみたいな感じ!」
「ある研究者ですか、、。なるほど
それが反応したってことですね。
俺はどうしたらいいでしょうか?」
そう聞くと何故かニコレッタは
困った顔していた。
少し下を向きながらニコレッタは
悩んでいた。
妙案を閃いたのだろう
ニコレッタは俺のいる方に
顔を向けたが
何故か俺の後ろをみている
ニコレッタは明らかに
血の気が引いた顔をしていた
恐る恐るニコレッタが見ている後ろを
振り向くと
「いやーこんにちは」
そこには盲目の老人が立っていた
どうやって音も無く
この部屋に入ったのだ?
という疑問と同時に
なんだろう
ものすごいなんてレベルじゃない
過去にどれだけの
死の直面があったとしよう
この盲目の老人の前では
それらは全てヌルかったとしか
言いようがないほどの
現実的な死が今ここにあると
実感される
この圧倒的な空間の中で
先に口を開いたのは
なんとニコレッタだった
「貴方自らがここに来るなんて
珍しい事もあるんですね」
明らかな強がりである
しかし
それを全て把握しているの如く
笑いながら盲目の老人が答える
「なあに、皆に伝えたいことが
あるからはるばる来たまでよ
それよりこれが例の男か」
そう言い終わると
盲目の筈なのに
こちらをジッと
見られてる気がしてならない
「おい、男よ」
不意に盲目の老人から
声を掛けられる
「な、なんでしょうか」
少し震えた声で俺は答える
「私は第20地区ヴァンラーレ王国
国王 ディナー スピリタス
という者だ
貴殿の名は何と申す?」
第20地区?
確かニコレッタは
第一から第十三地区しかないと
いっていたがどういうことだ?
そんなこと思いつつ
「自分はヒカゲ キイチと言います」
一体何者なのだろうと
考えていると
「キイチとやらも総長会に出ればいい
私が公認しよう」
優しい顔をしている国王スピリタス
きょとんとしている俺
すると
「あのバカ共に会わせるというのですか?」
少し血の気が戻った
ニコレッタが苦虫を噛んだような
顔になっている
「まあまあ、心配はするな。
ほれ、噂をすれば来たぞ」
第九地区
正面門前
衛兵達が急いで門を開けている
カフカ副長もそこにいた
門が開くと
三人の人物がいた
そのうちの一人がカフカ副長に
歩み寄る
「おぉー、カフカか!
元気にしてたか?」
「おかげさまでこの通りですよ」
とニッコリ笑うカフカ副長と
身長三mは云うに超える
厚手の軍服を着た
大柄な男性が副長に話し掛ける
その男性には胸に大きく“二番”
と書かれている
「“第二地区長サラザイカ様”
御足労大変恐縮ながら
すでに“ミルス地区長”様と
“ウィリアム地区長”様は中に入られ
ニコレッタ様のとこに
向かわれております
つきましては今一度
お急ぎをお願い致します
後ろにおられる
“第一地区長テンプル様”
“第五地区長ムーン様”
も御足労大変お疲れ様です。
ご協力の方をお願い致します」
大柄の男性の影に隠れて
見えにくくなっているが
厚手の軍服を引きずっている
黄緑の髪の少女がいる
この子の両手の甲には“一番”と
書かれている
その隣には
厚手の軍服を綺麗に着こなす
妖艶な美女がいる
その美女の首に“五番”と書かれている
「ミルスがいるなら私行きたくない」
黄緑の髪の少女テンプル地区長が不機嫌な顔をしながら
大柄の男性サラザイカ地区長の
足にしがみつく
機嫌を直させようと
サラザイカ地区長の大きな手でテンプル地区長の頭を撫でている
「仕方ないわよ。今回はスピリタス様も
お見えになるらしいから
地区長全員が集まるのは仕方ないことなの。テンプルはいい子だからわかって?」
妖艶な美女ムーン地区長が
テンプルと同じ目線で
語りかける
我慢しているのだろうか
不機嫌な顔から
泣きそうな顔に変わっていくのをみて
サラザイカ地区長が提案する
「じゃあ肩車してやる!」
それを聞いたテンプル地区長は
大喜びしながら
半透明になり
フワフワっとサラザイカ地区長の
肩にのる
「いこうか!!
カフカ副長、案内を頼めるか?
だいぶ久しいから道を
忘れてしまったわ!!
がははははは!!」
サラザイカ地区長が
そう言うとカフカ副長は
かしこまりましたと言い
カフカ副長を先頭にを歩き出す
この時何故かカフカ副長が
かすかにニヤけていた
次回
曲者揃いの猛者と奇襲