第参話 第十二地区長 炎星 ニルヴァードキール
テントを後にし
第九地区に向かう二人
そこに待ち受ける運命とは
テントを離れてから丸一日がたった
どこも景色は砂漠や荒廃した建物ばかり
これが俺が住んでいた景色とは到底思えない
するとロルが何かを見つける
「キイチみて!」
ロルが岩陰に隠れている所に近づき
指をさしている方向を見てみると
「や、やめてくれ、、」
「だーめだ!今ある物資を
全部寄越しな!そしたら
見逃してやる!」
汚い格好をしている明らかな悪者が
男の人を襲っている。
しかも、手には銃を持っている
さてどうしたものか
助けるにしても手がない
そんなこと考えているとロルが
「まあ見てなよ」
そう言うと
ロルの胸のあたりが少し赤く光始めたと
同時に襲われている男性の周りが
一瞬にして凍ったのだ!
「あの旦那を助けにいきましょうか」
何が起こっているのかわからず
今理解できているのは
あの悪者は一瞬で凍っているということ。
ロルは男性の近くにいき
手当てを始めている
岩場から少し距離があるというのに
まるで瞬間移動したの如く
あっという間に下にいる
少し遅れて下にいき
手当てをしている男性の元にいくと
パリッと音がした。
音がした方向をみると
悪者らしき人物の氷が割れ始めている!
同じく音が聞こえていたロルは
「キイチ!相手は鉱石の力を使って
氷を割ろうとしているわ、その旦那を
担いだりして
今いる場所から離れなさい」
「わ、わかった!」
「あとは私に任せなさい」
そういう彼女を残し
男性を抱え少し離れた岩陰に隠れながら
ロルがいる方向を確認する
すると、
ロルの体から赤い煙みたいなのが
立ち昇っていた
一体なにが起こるんだ
氷が半壊してる中
悪者らしき人物が何かを喋っている
何かを話をしているがよく聞こえない?
そんなに距離が離れているわけじゃない
それに先程ロルと隠れていた同じ岩陰に隠れているのに
話声が聞こえないのはおかしい
まるでこちらに聞こえないように
してるかのようだ
すると
ロルの周りの赤い煙が一気に彼女に
吸い込まれるように入っていき
「グラセ コーレル」
彼女が声が聞こえたと同時に
悪者を纏っていた氷が
大爆発を起こしたのだ!
「くっ!!一体何が起きてるんだ!」
爆風にのまれないように岩場しがみつきながら
彼女の安否を確認しようとすると
目の前には赤いキノコ雲がたっていた。
「これがあの鉱石の力なのか、、?」
あの鉱石にこんな力があるなんて
私は何ていうものを研究してしまって
いたのだと後悔した。
しばらくすると砂埃が消え
ロルの姿を確認する
「おーい!大丈夫か!?」
「えぇ!平気よ!」
その返事に安堵したながら周りを
確認すると
あれ?
先程一緒にいた男の人姿がない
まさか、爆風に巻き込まれてしまったのか?!
そう思い辺りを見渡す
しかし、見当たらない。
あの人は怪我をしているはずだ
横になっているかもしれない
と思い辺りを探していると
ロルが近くによってきて
「あの旦那はどっか飛ばされたのかな?
私も探すよ!」
「すまない!俺が一緒にいたのに
いきなりの爆発で見ていなかった」
「気にすることはないよ!
早く探さなくちゃね!」
しかし、二人でいくら探しても
結局見つからなかった。
「一体どこに飛ばされたんだ」
乾いた体が汗まみれになっていた。
いくらなんでも暑い。
異常気象か?
と思えるほど暑い。
先程はこんなに暑くなかったのに
「ロルさん、見つからないですね」
額から汗を垂らしながら
ロルの方を見つめる。
「そうねー、
どこに行っちゃったのかしら」
ロルはどこか遠い目をしている
「それと凄く暑くないですか?
先程は普通ぐらいの気温だったのに」
そうロルに問いかけると
「あそこを見てみて」
ロルの指の指している方をみると
遠くにうっすら人影ようなものが
見える。
その周りの空気?空間?が屈折しているように見える
まるでその人影から熱を帯びている
ようだ。
「あの人影は誰なんですかね?
もしかして先程の男の人ですか?」
ロルにそう聞くと
ゆっくりと首を横にふる。
「あいつは第十二地区の長
ニルヴァード キールってやつだよ
さっきの爆発で来たって感じだね
キイチ!
私から離れないでね」
地区長とは言え、
得体の知れない人物だ
素直にロルの近くにいよう
そう思いロルの近くに行くと
遠くにいたはずの人影らしき人物が
すでにロルの目の前にいた。
「イザック!久しいなー!」
そうロルの近くに来て話かけているが
ロル自身は凄く嫌な顔をしている。
「ニルヴァード、むさ苦しいんだよ
近づかないで」
抱きつこうするニルヴァードにロルは
手でシッシッとやりながら
払いのける。
「もう阿吽星から追ってはきてないだろ?」
「きてないよ!あの時はありがとう、、。」
そう二人が話していると
ニルヴァートと呼ばれている男性がこちらを向き
「それはそうとその男は誰?」
ニルヴァードはこちらを
見つめる。
髪の毛はボサボサで
顎髭が生えた
中年の少しガタイのいい人って感じだ。
「この人はヒカゲ キイチって人
てか、あんたには関係ないだろ?」
呆れた顔でロルが答える。
キールは髭を触りながら
俺に問いかける。
「ヒカゲ キイチかあー
聞いたことねえ名前だな
俺は第十二地区の長をやってる
ニルヴァード キールってもんだ
それはそうと
お前何処からきた?」
その質問に俺は焦った
というか
何故ならこの人からはビリビリと
殺意が感じる
下手な回答すれば
死ぬというのを肌で感じるほどに
「えーっと、、、」
俺がフル回転で考えながら
話そうとした
その時!!
いきなり衝撃波みたいなもので
吹き飛ばされたのだ
何が起こったのかわからず
体の痛みに耐えながら
キールの方を見ると
やはり、空気が熱を帯びて
屈折していたのだ
おびただしい汗をかいている
俺をみて
キールがゆっくりと口をひらく
「まあいいや
事情がどうであれ
怪しいものは殺す」
そういうとキールの胸元が赤く光っているのが見える
これはやばい
絶対まずい予感がする
そう思っていると
ロルが
「ニルヴァード、あんたには感謝している
けどね、
キイチはこれから
第九地区に連れていく約束をしている
邪魔をするなら
あんたでも容赦しないよ」
そういうとロルの体からまた
あの赤い煙が立ち上り始めたのだ
二人の間の空間が
まるで異次元の如く
ねじ曲がっているのがわかる
するとキールが
「ははははは!!
冗談だよ!
イザック!
頼もしくなったなあ
お前が信用してるみたいだし
手は出さないでおこう
それにこのキイチとやら
どうやら俺が手を出さなくても
死ぬ運命みたいだ」
え?
どういう意味だ?
一瞬頭が真っ白になる
「イザック、人を信じすぎるのも
大概にしろよな?
それと今度あったら酒でも
呑もうぜ」
そういうとキールは俺達の前を通り過ぎて歩いていく
これほど生きていて死に直面したことはないと言っていいほどだろう
危機は去ったというのに
腰がぬけて
立てない
「キイチ、大丈夫か?
悪かったな
あいつはいつも部外者というか
知らないやつを見ると敵意むきだし
にするんだよ
悪いやつじゃないのは
確かなんだけどね」
ロルがそう説明しながら
手を伸ばしてきてくれている
ロルの手を掴み起き上がって
質問をする
「俺が死ぬ運命にあるってどういう意味なんですか?
それに
あのキールって人の周りが
なんかねじ曲がってる風にみえたのですが、一体何の能力を使う人なんですか?
まるで熱を帯びてるみたいな感じでしたけど」
そう質問すると
キールが歩いて行った方を
見ながら
ロルが答える
「死ぬほど苦労してる風に見えたから
そのままだといつか死ぬよって忠告じゃない?」
本当にそうなのだろうか
「あぁ、あとニルヴァードはね、、、」
シーンが変わり
数km離れた場所で
ニルヴァードが
悪者集団に囲まれていた
「おい!おっさん!
命がおしいなら身ぐるみ全部置いていきな!」
と笑いながら話す悪者
呆れた顔で答えるニルヴァード
「機嫌が悪いときに運がないやつら
だなあー」
そうボソッと言うと
衝撃波ともに悪者集団が
一瞬で炭と化したのだ
シーンが戻り
ロルが
「あいつは摂氏10000℃を超える
超灼熱の星の能力使いなんだ!
それに私の義理の兄でもあるのよ。
私は氷を扱えるからキイチに
近くいてって言ったのはそういうことだよ!」
「摂氏10000℃??ってあの人はニコレッタの
義理の兄なんですか?!」
再び、シーンがニルヴァードの方に
以前はあったであろう、
枯れた木、渇ききった草、ゴツゴツとした岩
その全てが炭と化し、
宙を舞う灰の中
「さあ、あいつは今後死をどうやって
回避するか楽しみだなあ」
そう独り言を言うと、また彼は歩き始めたのだ。
次回 第九地区 カザムドゥム