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第8話 お洒落はお好き?

女二人に振り回される人々です。


「な……っ、何で私の……?」

「え? だって貴女元の世界の服のままじゃない」

 確かに私は元の世界の、しかも制服のままだ。

 ここでは色々な服装の人がいてそんなことはほとんど気にならないのだが。

「あの……でも私お金持ってません、から……」

「そんなのはあたしが払うわ」

「そんなことよりレイ、さっきから敬語よ」

「あ……」


 この人達の重要視するところはなんだかズレている気がする。

 もちろんそれを口に出すことはしないが。



「これなんかどう?」

 喜々としてムクモが差し出した服は、露出度の高く体のラインがくっきりと出てしまうようなものだった。

「えぇと……」

 選んで貰っているのは嬉しいが、さすがに言葉に詰まってしまう。

 

「ムクモ、レイにこれはキツすぎるんじゃないかしら?」

「そう?おっかしいなぁ」 

 さり気なく止めてくれたフォレスタに感謝した。

 どうやらムクモは自分が着ているような色気ある服が好みらしい。

 

「これなんかはどうかしら?」

「か、可愛い……」

「お、なんかレイっぽいね。着てみなよー」

 私っぽいとは一体何なんだろうかと思いつつも、二人に促され試着室らしきところへ入る。

 そして、慣れない服を試行錯誤しつつ着てみた。


「……えと……着てみました」


「!」

「あら」


 何故かフォレスタもムクモもひどく驚いた顔をしている。

 やはり着方を間違えるか何かしたのだろうか。

 知らなかったとはいえそれではあまりに恥ずかしい。

 そんなことをぐるぐると考え始めてしまった時だ。


「レイ、あんた肌白いね!」

「……妬ましいくらいに綺麗な白さだわ」

「……そんなこと……ないです……っ!」

「いやあ、これまで隠れてたから気づかなかったけど綺麗だよ」


 店員までもが「お綺麗ですよ!」などと言い出す次第だ。

 そこまで言われると気恥ずかしさのあまり何も言えない。

 だけどこれは、引きこもりの賜物とも言える。なんとも情けない気持ちだ。


「よしじゃあそれ決定でいいね」

「そうね」

「あ、と、はー……」 

「……まだ、買うんです……?」

「「当然。」」

「レイ、貴女も選びなさいな」 

「はい……」


 その後は、二人に差し出された服を試着しては脱ぎ、また試着しての繰り返しで、私自身が選ぶ必要はほとんど無かった。

 だけどその中でもやはり度々、露出の多い服をムクモが持ってきて、その度にフォレスタがさり気なく回避させてくれた。


「買ったわね」

「うん。買ったね」

「じゃあ次だ次。どんどん行こーう」

「……はぃ……」


 まだ行くのか、と内心呆れてもいるが、自身のためでなく私のためにそのほとんどを費やしてもらっているのだ。

 だからそれは、嬉しくもある。

 しかし買い物をするごとに魔法空間へとぽいぽいしまい込んでいるので手荷物は無いが、買ったものはもうかなりの量ではないだろうか。

 それに対して私はお金もなければそれを返す術もないのだ。いくらいいと言われてもやはり気になる。

 ――――いくら遠慮したところで押され負けてしまうが。



 その次に入ったのは小物屋だった。

 たくさんの可愛らしいものが置いてあって、中にはきらきらと光るアクセサリーなどもあった。

 そこではまた二人がそれぞれの好みの物を物色しつつ、私に合わせて選んでくれた。


 そして、それが終わってからはまたしばらく店を巡った。

 一頻ひとしきり廻って二人が満足すると、今度こそ私物ではなくちゃんと“旅の”必要品を買って宿に戻った。

 その頃にはもう陽が傾きだしていた。

 そして、宿には疲れた顔のカイラとムツキが待っていて、私たちの買ってきたものを見て、より一層顔に影が増した。


「楽しかったですか?」

「は、はい……」

「それは良かった。ぜひあの服を着てくださいね」

「へ?あ、服ですか……はい……」


 まさかカイラからそんなことを言われるとは思わなかったので少し驚いた。

 どの服を指しているのかはわからないが、読めない人だ。



「天然たらしか……?」

   ぼそりとムツキが零した言葉は誰の耳にも届かず消えたのだった。


カイラは紳士ですが天然たらしなところがあります。

天然故に本人は自覚無しですが。

ムツキだけは冷静に見てます。てか喋ってねええ!

たまにはムツキも喋らせてあげたいです。

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