表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/13

第7話 不平等

「レイの世界には竜はいなかったんだ?」

「はい」

「レイ、敬語に戻ってるわよ?」

「うっ……すみ……ごめん」


 話し始めてから時間が経つのは早くて、シエラや私の世界についてを始めとし、もうずいぶん話した。

 敬語も使わないようになった――否、半強制的に敬語禁止となった。

 こんな風に女友達と話すという感覚は久しぶりだった。

 二人の勢いに気圧されつつも、この空間が心地よく感じられる。

 最初に持っていた警戒心は、知らぬ間に消えていた。


 二人の会話を聞きつつお腹が空いたな、と感じ始めていた時だ。


『ぎゅるる』

「……お腹すいたわね」

「そうだねえ」

「わああっ!?」

「そんな照れなくてもいいじゃない」

「そうそう。レイ気分悪くてお昼食べてないもんね」

「いや、あの、その…」

「そろそろご飯も出来る頃だから降りましょうか」

「そうだね。行くようレイっ」

「はい…」


――――


 空腹時に食べた宿の食事は美味しかった。

 ただ知らない食材がたくさんあって、不思議な味が多かったのには驚いた。

 ここが異世界なんだと改めて感じさせられ、少しだけ寂しく思ったのは気のせいだろうか。


 部屋に戻っていく時にカイラがそっと、苦笑混じりに言葉をかけてきた。


「あの二人は凄まじいでしょう?」

「あ……はい」

「でも良かった。レイ、さっきまでより表情が柔らかくなりましたよ」

「え?」


 レイの返事を待つことなくじゃ、と言ってカイラは戻っていった。

 私の言葉遣いの変化に驚いていたようではあった。だがしかし表情が柔らかくなった、と。

 俄には信じがたいが、カイラが言うからにはやはりそうなのだろうか。

 周りに無愛想としか言われたことがないのに?

 無表情のまま固まってしまったような顔であるのは自覚していた。

 何を言うわけでもなく他人から敬遠されてしまうのにも慣れている。

 でもそれは、もう変えようが無いとも思っていた。

 そんな私が?



 その後も、自問自答を悶々と繰り返しながら眠りについた。


――――


 翌日。


「今日は買い出しね」

「うん、あと観光ね」

「観光って……」


 呆れるというか何というか唖然とするしかないのだが、この人達の旅はこういうスタイルなのだろうか。


「じゃ、重たい物は君らに任せるよ男衆!」

 自分たちはしっかり観光する気であるにも関わらず、この言いようである。

 しかし男二人は嫌がる素振りを微塵も見せず、カイラに関しては笑ってさえいる。

「はいはい。レイもどうぞ楽しんできてくださいね」

「え…あ、ありがとうございます……」

 ここではお礼を言えばいいのか私も行きますと言うべきなのか。

「じゃ、よろしくね。私たちもしっかり買い物してくるわ」


 その“買い物”は私物だろうなと思いながらも、私は力強い女性二人に付いて街へ繰り出した。


「んー、何処行こうね」

「とりあえず色々廻ってみましょうよ。ね、レイ?」

「は……あ、うん」



 歩いていくと、色々な種族を見た。

 半分位は人間だが、二足歩行をしているトカゲのような者もいれば、人間に似た狼擬もどきが歩いていたりもする。

 人間と同じように買い物をしたり、会話をしていたりするのだ。

 中には半獣と呼ばれる者もいて、人間に獣の耳が生えていたりもした。

 じろじろ見るのは失礼だと思いつつも、目で追ってしまう。


「この世界にいる種族は大きく分けて人間、獣人、竜、あとは獣よ。

中には人間と獣人の間で産まれた半獣って呼ばれている人もいるけどね」

 私のその行動を見かねてか、フォレスタが教えてくれた。

「……? 人間と人では意味が違うんですか……?」

「よく解ったね。人間と獣人を総称して“人”って呼んでるんだよ。まあ二足歩行しているものを指してるかな」

 今度はムクモが答えた。

 なんとなく表現に違和感を感じたのだ。人という表現を使ってはいるが“人”という言葉自体は種族の名前では無い。


「……そうなんですか……。面白いですね」

「あー、レイの世界には獣人や竜は居ないんだっけ」

「はい……」

「それはそれで見ていたいわ」


「あ、ねえあたしあそこ行きたい」

「じゃあ行きましょっか」


 ムクモが指した店は服屋のようだった。

 ガラス越しにたくさんの可愛らしい服が見える。着てみたいな、と柄にもなく少しだけ思った。


「「レイの服を買いに」」


 訂正。

 やっぱりさっきのは気のせいだ。



エルフは一応獣人の一種ですえ!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ