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第10話 フィー

三人で王都にやってきました。


 光が消えていき最初に目にしたのは、厳つい顔をした門番のような人たちだった。

 衛兵らしき人が二人、軍服を思わせる服装で、槍を構えて立っている。

 どちらも、普段から鍛え上げられているであろうことが容易に伺えるしっかりとした体つきをしている。

 私達の姿を見留、その一人が口を開いた。

「通行証を」

 通行証とは何だろうか。

 するとカイラは無言で、カードのようにも見える小さな金属板らしきものを取り出し、示した。

「……! どうぞお通りください」

 それを見たとたん、衛兵は何故か驚き表情を引き締めた。

「ありがとうございます。行きましょう」

 しかしカイラはそれを気にする様子もなく先へ進んだ。

 見るとフォレスタも涼しい顔だ。

 ――一体何なのだろうか。


「どうかしたの?」

 それが表情に表れていたのかフォレスタが訊いてきたが、触れてはいけない気がして答えることはできなかった。


――――


 流石は王都ということだろうか。

 表の通りにはたくさんの人が行き交い、華やかだ。そしてたくさんの種族がいる。

 もう何度か人間以外を見てきたが、それでもやはり獣人には慣れない。

 服を着た動物が二足歩行をしているのだ。しかも人間と同じ言葉を話す。

 ここではそれが普通なのだろうし、そんなことを思うのは失礼なのかもしれないがやはり私は異世界の人間なのだ。

 

 そんなことをぼうっと考えていると、立ち止まったカイラの背中にぶつかった。

「ぶっ」

「あぁっ、すみません。大丈夫ですか?」

「ごめんなさい……。大丈夫、です」

 知らぬ間に大通りから抜けていたらしい。少し遠くに人混みが見えている。

 ぶつけた鼻をさすりながら前を見ると、そこには大きなお屋敷があった。

「……わ……」

「大きいわねえ。流石貴族」

 とにかく大きい。そして煌びやかだ。

 お城かと見紛うほどのもので、いかにも“金持ちの家”といった雰囲気である。

 今立っている門から建物まではかなりの距離があり、広大な敷地内には綺麗な庭が広がっている。

 ぴらぴらのドレスを着たお嬢様が駆けだしてきそうでさえある。

 こんな所に何の用があるのだろうか。

「本当、無駄に大きいですね。大きいだけで中身がないのはここの主とそっくりだ」

「そりゃあんまりだー!」

「っ!」

 突然頭上から声が降ってきた。

 あまりに驚いて声にならない悲鳴を上げてしまった。

「吃驚したわ。レイ、大丈夫?」

「大丈夫……です」

「レイを怖がらせないでください、フィー」

 カイラがそう言うと、一人の男が突如カイラの前に降り立った。

「その子レイって言うんだ。へえ」

 何故かこちらに興味を持ったその男は、とにかく大きい。

 カイラも結構大きな部類に入ると思うのだが、このフィーと呼ばれた男は更に大きい。

 細身だが身長は2メートル近くあるのでは、と思うほどだ。

 髪は燃えるようなオレンジ色で、ウルフカットのように見える。瞳は翡翠色だ。肌は小麦色で健康そうである。

 服は上等そうなものを着崩している。貴族なのだろうか。


 この男はさっきから何故か私のことをじっと見ている。

 身長があるからか、少し怖い。しかもさっきから徐々に近づいてきているのだが。

「う……」

「だからレイを怖がらせないでと言っているでしょうが。バカフィアマ」

 そう言ってカイラはそのオレンジ色の頭を引っぱたいた。

「っで」

「でかいのが寄ってくから怖がってるでしょうが。しかもじろじろ見るなんて不躾ですよ。

大丈夫ですか? レイ」

 普段とはかけ離れて、“フィー”という男に対するカイラの口調は荒く、声音も違う。

 それにさっきからカイラの目は据わりっぱなしだ。

「えっ、あっ、大丈夫……、です」

「あー、そっか。やっぱ俺は威圧感があるのね……。ごめんね? えーっと、レイ」

「……いえ」

「うん。あとお久しぶり。フォレスタ」

「えぇ。久しぶりね、フィアマ」

「言ってた通りしばらく俺たちはこっちにいることになりましたので」

「あーはいはい。どこでも自由に使ってくれ」

 会話から察するにここの主である貴族はこのフィアマらしい。

 年齢も20歳前後のように若く見える上、私の想像していた貴族とはかけ離れているのだが、この世界ではこんなものなのだろうか? と失礼なことを考えてしまった。

カイラは結構猫かぶりです。

フィアマは貴族。カイラはフィーと呼んでますね。

どういう関係だ、っていうのはそのうちに。

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