悲しい方舟 後話
もう、長い時間が経ったような気がする。
ポルカとどうでもいい話をしたり、ザリファの掃除を手伝ったり、仕事したり。
特に、事件も起きず、毎日はとても平和で、俺の記憶が消されるまであと何年なのか言われる前に短すぎると答えられるほど、この生活を気に入っていた。
「そういえば、データの処理がなぜ宇宙船の燃料として消費、ということになったのか聞いてなかったな。」
「気になっていたんですか?」
「ああ、結構な。だってデータを消すなんて、発展しまくってる人間様にとっちゃ楽なもんなんじゃないの?。」
「そうでもないみたいですよ。記憶データは複雑で消去の過程でとんでもないエネルギーを必要とするそうです。ところが、燃料として消費する場合はその過程が入らないようでエコなんだとか。」
「じゃあ、地球のエネルギー問題の解決になるじゃん。」
「しかし、悲しみを含んだ電子ガスを発するようで、そうなると人の感情体に影響が出るので、大気圏外で消費ということらしいです。」
悲しみの循環を断つってわけか。
「ずっと他人事みたいな喋り方だな。」
「もう、昔のことなので。」
そりゃそうだ。
いつものようにポルカと話していた。が、唐突に日常は急変した。
「保管室A3で異常が発生しました。ザリファからの通信。「データが急激に増幅しました。至急A3に。」とのことです。」
俺は走った。
バグか?
データが急に増幅?そんなバグ知らないぞ。
保管室A3の扉を開けば、荒波のように押し寄せるデータの圧。
その中にザリファがいた、必死にこっちにこようとしてるが、実体化されたデータの波に押されている。
「ザリファ!!」
手を伸ばし、ザリファを掴み助け出す。
「バ、バグziゃないdeす。これ。」
「なに!?」
俺は膨張するデータの波を手の中に集約し握りつぶした。黒いつぶつぶが飛び散った。
「ウイルス!?特定!破壊!死滅完了。」
反射的に瞬間で死滅させたが、とても高度なウイルスだった。
まさか…地球からか?
「良kaった。でも、私、kan染しちゃっ29087、385240394。。。」
「ザリファのプログラム内に異常を発見。修理室まで運んであげてください。」
「ああ。」
ザリファを抱え、修理室へ走った。
ベッドの上にザリファを寝かすと、枝のようなアームがザリファをいじくりまわした。
「言語機能は修復しましたが、ウイルス汚染が激しいです。」
「マジか、何とかなんないのか。」
ザリファが話し出した。
「このウイルスは感染します。いや、ポルカは完全プログラムだから平気、ループ15もヒューマノイドだから平気。データが危ないです。私を主として拡散し始めます。」
「そんなの俺が全部死滅させていく。ザリファも俺が治す。」
ザリファは首を振った。
「無理ですよ。ループ15はデータ管理のヒューマノイド、データにいくら強くてもロボットをウイルスから救う術はないです。」
「俺が治す!」
「「ザリファ-ph2804-β」の解体の許可を…。」
ポルカがアホなことを抜かす。
「そんなのするかよ!俺が!」
「このままじゃ…。ウイルスが拡散したら、さっきどころの話じゃなくなります。この宇宙船の容量を超えて地球に逆流してしまいます。」
それがなんだよ。この宇宙船が無事ならそれで…。
「それの何がダメなんだよ!!」
「反意識を確認しました。ループ15を一時機能停止します。選択決定権が「ザリファ-ph2804-β」に移動しました。」
勝手に話を進めやがって。
「ちょ、待て!グッ!!」
「解体を許可します。痛くしないでくださいね。」
「大丈夫です。昔から機械いじりは得意なので。」
「なら良かった。伝言をループ15に。」
「何でしょう。」
「お酒の飲み過ぎは良くないですよ。と伝えてください。」
「わかりました。」
俺は真っ白で真四角の部屋で目を覚ました。
「おはようございます。ご気分は?」
なんだよ、これ?
「ザリファはどうした…?」
この気持ちは?
「…解体しました。伝言があります。「お酒の飲み過ぎは良くないですよ。」と言っていました。」
そうか。これが悲しみか。
「この記憶データを永久に保存。」
「できません、ループαは記憶保存を禁止されています。」
「なら、この記憶は悲しみが含まれているだろう。」
「はい、そうですね。」
「燃料として最劣後で消費。」
「わかりました。」
この記憶が消える時が、この旅が終わる時。
悲しい方舟 完
ザリファが可愛い。
ちょっと、設定が先行してますね。こんな壮大な設定じゃなくてもよかったよな〜。
個人的にこういう未来系の話は、書くのは良いんですけど、読むのが難しくて苦手です。
TPDD的な禁則事項がもうついていけません。
次へ。