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代打  作者: たこみ
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行き当たりばったり

 高校の入学式のとき、同じクラスの列の中に、一分の隙もないというの佇まいの律子が目に入った。


話したことはないが、確か同じ中学出身の娘だと思った。


 他にも知っている顔はいないかキョロキョロ周りを見回すと、一瞬見落としてしまいそうだったが、やはり同じクラスの列の中にさやかの姿があった。


私は、あの目立たない娘は何さんだったかと小首を傾げた。



 式が終わって母親と共に校門へ向かって歩いていると、門の前にコンバーチブルの外車が止まっているのが見えた。


車の中には正真正銘の遊び人という風貌の派手な男が乗っている。


すごく気になるのであからさまに目を留めていると、背後からたったったとその車に向って瞳が私を追い越していった。


 私はぎょっとすると、彼女の残り香を嗅ぎながらヤツもうちの高等部にそのまま上がったのか、と思った。



 瞳は中学でちょっとした有名人だった。


 特に成績がいいというわけではなかったが、何をしても目立つ娘で、先生たちも彼女をひいきにするところがあった。


周りの生徒もそれを妬むということはなく、なんとなく教師たちの気持ちが分かった。



 見ているだけで瞳は関わりたくなる人だった。



 しかし私は中学一年生のときに同じクラスになったことがあるのだが、はっきりいって苦手だった。


忌み嫌っていたというわけではないが、なんというか私のような凡人にはアクが強すぎるというか、トゥーマッチな人だった。

 

 嫌な予感はしたのだが、高校の授業が始まると案の定瞳も同じクラスだということが判明した。


 そして私たちは大して仲がいいわけでもないのに、同じ中学出身だと言うだけで行動を共にすることになる。


 初めはあまりにも各々の個性が強すぎて、共通の話題といったら中学時代の話などぐらいしかなく、この先やっていけるのかと不安を覚えたものだが、徐々に四人でいることによって学校生活が活気づいてきた。



 私たちの学校は中高一貫校だったのだが、少しすると学業の面で外部から入学してきた生徒たちとの差が出始めた。


 私たちは四人とも頭のレベルが低いというか、クラスでは良く言って中の下だった。


うちの中学はお金さえあればわりと優遇して入れる学校だったので、それは仕方のないことだった。


そして私たち四人の家が若干裕福なせいか、私物も高価なものが多く、軽薄な人種の集まりに見えたようで、周りのクラスメイトからは少し距離を置かれていたように思う。



 さやかは外見からもわかるように天然ボケな娘だった。


 しかし蓋を開ければけっこうな曲者で、大人しそうな顔をして既に異性と肉体関係をもったことがあるということがわかった。


 当時男の人と手をつないだことも無かった私は心から驚き、人を外見で判断してはいけないと思った。


 そしてさやかからは瞳までもが後に酒やたばこを教わることになる。



 律子は見た目通りのしっかり者だった。たまに死語がぽろりと出ることがあるが、本人は意識していないようだった。



 瞳はというと、同性から見てもどことなく色っぽいオーラを放っている娘で、十六歳にして既に私は成熟した女です、という感じだった。


 なので学生服を着ていても、なんだかエッチな感じがして、コスプレとしか思えないようなところがあった。


 通学の電車の中で痴漢に遭遇する確率は断然瞳が皆を圧倒していて、順にすると瞳>さやか>律子>私だった。


 当時テレビでは高校教師というドラマが放映されていて、瞳は地で教師と生徒の恋愛というものを再現してみせてくれたものだ。



 中学の時はほとんど言葉を交わしたことなどなかったくせに、彼女は私にすごく馴れ馴れしかった。


まるで近所の幼馴染のような扱いだった。


 なんだこの女はと思うことはけっこうあったが、瞳と一緒にいるとリラックスしている自分がいることにある日気が付いたのだった。


些細なことで喧嘩をして瞳と口を利かないことがあったりもしたが、そういうときはさやかと律子が間に入ってくれた。




 色々な意味でピントがずれた四人組だったが、それなりに楽しい高校生活だった。



 うちの学校にはエスカレーター式で女子短大も用意されていたのだが、私たち四人の成績ではもちろん上がることができず、それぞれが外部の専門学校や短大に収まり、意外なことにみんなデスクワークをする一般職のОLになった。



 高校時代から長い間ずっと瞳の恋愛話を聞いていると、どうやら見境なく男と寝ているようだったので、タフというか、節度を知らないというか、私だったら身が持たないなとよく思わされた。



 「彼女っていう立場は何よりも優先されるべきなのよ」


 これはさやかが社会人になってすぐの頃、やたらと起伏の激しい、その日暮らしの男と付き合っていて、暴力を振るわれたりお金を貢いでいたときに瞳が私にこぼした言葉である。


 彼女の辞書に『男性優位』という言葉はない。



 「そりゃあんたみたいに自尊心がある人から見れば相手に尽くす人の気持ちはわからないでしょうよ」


 スポーツクラブの脱衣所で私はそう言いながら脇の下の脂肪を手繰り寄せてブラの中に胸を作り上げた。



 瞳と私はОLになってから、会社の帰りに週に一、二度アクアビクスを習っていた。


 瞳のほうに目をやると、既に彼女は素っ裸になっていた。


いつも思うのだが、いくら周りが同性だけだからといって、銭湯に来ているのではないのだから、タオルて隠すぐらいの恥じらいを見せてほしいものだ。



 「あら、さやかはあんたみたいに自分に自信がないわけじゃないわよ。自らああいう男を招き寄せてるの」


 ぽってりとした唇を突き出して瞳が反論する。



 「そうかもしれないけど・・・、あんたみたいに女を武器に使ってはいないと思うわよ」


 それを聞くと瞳はせっかく女に生まれたのにそれを利用して何が悪いのだという顔をしながら甘酸っぱい香りのする香水をシュッと手首にかけて擦り合わせた。



 「でもまあ、あのあのちんぴらみたいなアロハシャツの男は私もどうかと思ったわね」


 私がさやかの短大時代に付き合っていた男の容姿をけなすと、瞳もどうして彼女はあんなに人相が悪い人とばかり付き合うのか謎よね、と私に追随した。



 私たちが何気ない会話をしながら着替えている間に、周囲からの視線をときどき感じることがあった。


 一つ目の理由は単純に瞳の肉体美に目を奪われる人がいるということだが、二つ目は彼女はどこにいても場違いというか、なんだか浮いているように見えるのだ。


何と表現したらいいか分からないのだが、瞳は動物でいうと肉食動物という感じで、人間にしては美しすぎて下品なのだ。



 そんな外見の瞳だから、彼女は深紅の色の服など、とにかく原色の色がよく似合った。


瞳が肉食動物ならば、草食動物の私は、草もちのような色や、ベージュなど、アースカラーがなぜだかフィットしてしまう。



 昔から瞳の傍らにいると自分の存在が霞んでしまうということはよく分かっていたのだが、どうしても彼女との関係を断ちたいとは思わなかった。


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