第二話転生
次に目を覚ました時、二人の人間が俺の顔を覗き込んでいた。一人は50代くらいのおばさんと、20代後半のさわやかな男だ。
どうやら俺は本当に転生してしまったらしい。というか目を開けたら、顔を覗き込まれてるって言うのも結構びっくりしたぞ。
「ぁぅ、ぁ」
言葉を発してみようにもうまくいかない。体が未発達だからか?というか、産まれたばかりなら泣かないのは変、だよな。
とりあえず泣いてみることにした。
「おぎゃー!おぎゃー!!」
おい、なんだこれは。どんな罰ゲームだよ。今まで生きてきた中で一番恥ずかしいぞ。
今産まれたばっかりだがな!
「元気な男の子ですよ!おめでとうございます」
どうやらこのおばさんは助産婦のようだ。
「ありがとうございます!!
リーシャ!よくやった!男の子だってよ!!」
この男は俺の父親に当たるらしい。リーシャというのは母親の名前か?
「ええ、聞こえていますよ。でも無事に生まれてくれて本当によかった」
透き通ったきれいな声だった。
「お子さんを抱いてあげてください」
助産婦のおばさんはそう言うと、俺の体を母親のところへ移動させた。
母さん?はとてもきれいな顔をしていた。
「ふふ、かわいい顔してるわ。ねえ二クス、私たちの子よ。とても幸せだわ」
「ああ。本当にな。俺も幸せだよ」
二人とも本当に幸せそうだった。
だがここで一つ疑問に思った。
魂、といっていいのかわからないが、本来この体に宿るはずだった魂はどうしてしまったのかと。俺が無理やり割り込んでしまったのか。それとも元々この体は俺のために用意されたものなのか。考えていてもわかることではない。そんなことは重々承知している。だけど、もし俺が割り込んでしまったとしたら、この二人はどう思うだろう。
二人の反応からするに、本当に、望まれて産まれてきたことになる。それが実は中身が別人でした、なんて。
「どうしたのかしら?なんだか難しい顔をしてるわ」
どうやら顔に出てしまったようだ。
「気のせいだろう?それよりもこの子の名前なんだがな。アレクって名前にしようと思う」
「アレク、素敵な名前ね。元気な子に育ってくれるといいわね」
微笑みながらそういったリーシャの顔は、優しい母の顔だった。
ついさっきまで悩んでいたのが嘘のように、不思議とこの人たちが親なんだと思った。
そうして転生一日目は幕を閉じた。
次の日、俺はベビーベットのようなところで寝ていた。そしてやっぱり顔を覗き込まれていた。昨日はよく見ていなかったが父さんと母さんの顔立ちは整っていた。
これは俺の将来も期待できるな。なんて考えていると
「あ、笑ったぞ!」
どうやらまた顔に出ていたらしい。
というか赤ちゃんの頃から自我があるって言うのは不便だな。体が未発達とはいえ、ある程度は話すことはできるだろう。しかし、いきなり言葉を発するわけにもいかな・・・・・・あれ?
そういえばなんでこの世界の言葉がわかるんだ?
文字を見てないからわからないが、発音としては日本語なんだよな。この世界の体を持っているから理解できるとか?
まあ昨日と同様考えてもわからないが。
しばらくの間は自問自答を繰り返すことになるらしい・・・
とここで俺の体が抱き上げられた。
自分の体をいとも簡単に持ち上げられるって不思議な感覚だな。
明人にとっては10年ぶりくらいだった。アレクとしてはつい昨日のことだったが。
そしてリーシャからとんでもない発言が飛び出した
「アレクー、ごはんの時間ですよ」
「・・・あうあお!(なんだと!)」
ニコニコしながら言うリーシャ。それもそのはずである。リーシャにとって初めての息子への授乳なのだから。
しかしアレクの心境は穏やかじゃなかった。
ごはんっていうとつまり、”おっぱい”のことだよな・・・
これは不味い。非常に不味い・・・
と、思っていたがまったく興奮しない
だがリーシャのおっぱいは素晴らしかった。色といい形といい、まさに美乳だった。なおかつすさまじく柔らかかった。てか、おっぱい直に見るのは初めてだったりする。悲しいことに。
だけど、まったく興奮しない。
考えてみれば至極当然だ。体はまだ子供だし、何せ相手は母親だ。異常性癖者でもない限り興奮はしないだろう。
そんなこんなで人生初のビックイベントは過ぎていったのであった。