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黒猫の夜  作者: 大竹洸
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自分の身体

ーあぁ、何故だろうか。抱かれても嬉しくない。果てても何も気持ちよくない。本当にどうかしたのだ。


「あっ、もうイってしまう…っ!」

喘ぎながらも、芥川は全然嬉しくなさそうな顔をして抱かれていた。弓なりに反る身体が快楽と共に崩れ落ちる。上から落ちてくる汗の雫を舐め、起き上がると服を直し男から離れた芥川。今まで自分を抱いていた男は、全く知らない相手。いや、知らなくはない。郵便を届けてくれる配達員がいきなり芥川を抱いたのだ。芥川は、拒むことなくそのまま抱かれた。

「もう、帰ってくれ。」

そう芥川が言うと、配達員は満足そうに家から出ていった。部屋に残る配達員の臭い。早く消そうと、窓を全開に開け光を浴びる。

「ーこんなに気持ちよくないのは初めてではない、か…。早く、こんな生活から抜けたいものだな。」

そう呟く芥川の元に黒猫がやって来た。今まで寝ていたのか、欠伸をし伸びながら芥川の脚に顔を擦り寄せる黒猫を目を細めて見ていた。

「黒猫よ。お前は幸せか。私も黒猫になりたいものだ。」

「ニャアー。」

「返事をしたのか?残念ながら何を言ってるか分からないな。」

腰を下ろして頭を撫でると、黒猫はゴロゴロと喉を鳴らしてその場に寝転んだ。もっと撫でろと言っているように寝転んだ黒猫の腹を優しく撫で、外を眺めた芥川の横顔は笑っている様だ。

「今日も眩しい太陽だ。何故、そんなに輝けるか聞きたいものだ。」


ー何故、お前は私の前から居なくなったのだ。独りでは、寂しい。寂しさを紛らわす為、男と身体を重ねた私は気持ち悪いか?自分でも気持ち悪いと思う。あぁ、何故こんな事になってしまったのか、自分でも分からん。


今の時代、男同士の恋愛が増えつつある。男同士では、赤ん坊は産めれない。だが、多くの男はそれでも恋をし実らせる。芥川の場合、そんな綺麗な恋でもない。恋はしていないのに、身体を重ねているのだから汚れているのだ。

「…あぁ、今日は久しぶりに絵でも描くか。」

ゆっくり立ち上がり、押し入れの中から画用紙と筆、絵の具を取り出し机に置くと、赤と黒、紫色の絵の具をパレットに出して画用紙に描き始めた。芥川は、風景や物を描いている訳ではない。今の心情を描いているのだ。最近じゃあ、明るい絵の具を使わない。これも、汚れている証拠なのか。

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