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黒猫の夜  作者: 大竹洸
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いつもの自分

黒猫を膝の上に乗せ、縁側で寛ぐ今では珍しい着物姿の男。この男の名は、芥川臨也。中性的な顔立ちであるが、頬は痩せこけてまだ20代と思えない。芥川は、10代に結婚し幸せな時間を過ごしていた。しかし、去年事故で妻を亡くして以来、人との関わりを止めた。妻を愛しすぎたせいなのか。それとも、妻が居ないと何も出来ないのか。

「黒猫は、何故寂しくない。私には分からないな。」

黒猫を撫でながらそう聞くが、答えるわけがない。そんなの知っている。だが、芥川は毎日懲りずに黒猫に話しかける。たまに、返事をする様に鳴く黒猫が気に入っているらしい。

「今日は、何故返事をしないのだ。まぁ、良いが。」

返事をせずに、ゴロゴロと喉を鳴らしている黒猫。芥川は、黒猫を膝の上に乗せたまま空を見上げてお茶を飲む。暫く置きすぎたせいかもうぬるくあまり美味しくはない。

「ーああ、独りは寂しいものだ。誰かと身体の関係にでもなるか。」

黒猫を降ろして、中に戻る芥川。携帯を持ち、唯一電話帳に残されていた男に電話をかける。直ぐに出て、携帯の向こうから超えが聞こえてくる。低めの声は、芥川をゾクゾクとさせる。

「私だ。今日、来れるか?」

相手は、短く「はい。」と答えて、芥川は直ぐに通話を切る。携帯を乱暴に机に置き相手が来るのを待った。

相手が来るのは早かった。相手の名は、木村豪。木村とは、喫茶店で出会い木村から声をかけてきた。木村は、男にしか恋を出来ないらしい。1度身体を重ねた事がある。それから、その熱が忘れられない。

「悪いな、急に呼び出して。」

「いいえ、嬉しいです。」

優しく微笑み、軽く口付けする木村。芥川は、木村を家に入れて直ぐ布団に寝転ぶ。

木村が身体を触る度、部屋に響く芥川の喘ぎ声。重なる身体の熱を感じながら、何度も訪れる快楽に芥川は何故か悲しくなる。そんな芥川を見つめる黒猫は、何を思うだろう。


・・・・・・・・・


行為が終わり、木村が帰った後、何故か吐き気に襲われた。気持ち悪いとかではない。何故か吐き気が急に訪れたのだ。食べたもの全て吐き出し、顔を水で洗う。目の下にくっきりとある隈。寝不足のせいだろうか。いや、寝不足などのせいではないだろう。

「ーなんだと云うんだ。そんなに嫌なのか、私の行為が。」

醜い自分が鏡に映る。あぁ、醜く汚い人間だ。どうしたらこんなに醜くなれるのだろうかと思う。

「ニャア。」

「どうかしたのか、黒猫。」

いつの間に入ったのか、芥川の脚に顔を擦り寄せる黒猫。チャランと芥川が付けた首輪の鈴が静かな洗面所に響く。


ー黒猫に慰められるようじゃ、駄目だな。


「腹が減ったのか。少し待ってくれ。今、準備する。」

洗面所から出て、台所の棚に入っている猫の餌を取り出して黒い皿に移す。音で飯だと分かったのか、軽やかに走って寄ってきた黒猫は勢いよく食べ始めた。

「悪いことをした。余程腹が減っていたのだな。」


ーそういえば、朝しか与えてなかったな。通りで良い食べっぷりな訳だ。


芥川は、餌を食べている黒猫を置いて自室に戻り小説を書き始めた。締切はまだ余裕がある。しかし、いつスランプが来るか分からない芥川は毎日余裕がないのだ。担当者に怒られないようにするのが1番良い。

芥川は、若いのにパソコンではなく手書きで小説を書く。機械音痴という訳でもないが、機械など使うのか嫌らしい。携帯を扱うのも少し気が引けるが、携帯が無いと案外不便だ。

「ーニャア。」

「黒猫、食べ終わったのか?」

餌を食べ終わった黒猫が、胡座をかいていた芥川の脚に乗ってきた。満足そうに退ける様子もなく眠りについた黒猫を撫でて、芥川は苦い口の中をお茶で誤魔化しながら1日を終えた。









小説を書くのは、あまり経験がなく下手くそですが読んでくださると嬉しいです。書くのは遅めですが、ご了承ください。

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