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残骸の翡翠  作者: こだわり竹刀
霊己武紀(クロスアーツ)編
20/28

No20 焼却される街

思ったより早く次話を投稿できました!

次もこの調子で頑張りたいです!!

 カルトロリア王子は幾万の高圧電撃によって破壊したマンムーナの土地を闊歩していた。王の血を受け継ぐ者には、神聖な血が流れている。

 霊己武記クロスアーツという武器は魔力を流すことで、魔法を行使することができる。魔法には、火、水、風、土といった四元素が存在し、その元素の特製に沿った形となって現出する。

 しかし、カルトロリア王子のような血統のように、亜種ともいえる例外が存在する。その属性は雷であり、王の血統でしか発動することができない魔法である。

 その力は全てを満遍なく破壊する力であり、まさに王の力だといえるものであった。


「ふむ。我の力を魔力増幅装置に介したものとはいえ、この光景には考えるものがあるな」


 カルトロリア王子は雷によって破壊されつくしたマンムーナの光景に目を背けることなく、注視していた。


「カルトロリア王子、少々いいでしょうか」

「なんだ、キータ」


 ミサエナと呼ばれた『ウリア』に属する唯一の貧民上がりの軍人である金髪の女性は、王子であると同時に艦長であるカルトロリア王子に質問をする。


「今回、マンムーナの土地を破壊する必要性はあったのでしょうか? あの土地に住み者は落伍者の集まりが住むところ。放置しても問題がなかったのでは」

「問題がないだと?」

「はい」


 キータの毅然とした声に対し、カルトロリア王子は雷撃で答えた。


「あああああああああああああああああああああああああああっ!!」


 全身に走る雷撃にキータは絶叫する。電撃がキータの体から抜ける頃には、彼女は地面に倒れていた。


「これだから貧民上がりは困る。これから周辺国との戦争が始まるというのに、国内に問題があったら満足して戦えないではないか?

 判らないか。マンムーナのようなクズどもが集まる場所というのは、スパイを送るにしろ、民衆を扇動するしろ、周辺国にとって最も利用しやすい場所なのだ。

 このような不穏分子が発生すると判っている場所を国が放置しないわけにはいかぬ」


 カルトロリア王子は、そう言った吐き捨てる。

 人口2千万人。吐き捨てるのは、あまりに多い数であったが、そう感じたのは貧民上がりのキータだけであり、その他首都民は何も感じていなかった。



◇ ◇ ◇ ◇



(ううっ…………)


 ようやく意識を覚醒させたキータは頭を起こし、状況を確認する。どうやら簡易的な作られた休憩所に自分が寝ていたようだ。頭に置かれていたであろう氷袋と回復効果のある緑色の錠剤が視界に入る。


「ようやく起きましたか?」


 皺の堀が濃い40代の男が声をかけてきた。男が着ている黒い軍服からして医者であることが判った。


「私は何時間寝ていた?」

「2時間程ですかね。カルトロリア王子は大規模な魔法を行使したせいで、少々加減が難しくなっていました。念のためメディカルチェックをしましたが、問題ありませんでした」

「……そうですか。ありがとうございます」


 私は医者に軽く頭を下げ、休憩所から出ようとしたところ、それを見た医者が「ちょっと」と言って止めに入る。


「これをどうぞ」


 渡されたのは回復効果のある錠剤だった。しかし、色は黄色であり緑色よりも効果が高い錠剤であった。


「これは?」

「カルトロリア王子からの命令です。大規模の雷撃魔法で破壊したとはいえ、まだマンムーナに残党がいるかもしれないということで」


 油断は禁物、ということか。さすが四兄弟のうち戦略に長けた王子である。隅から隅までよく考えている。


「了解しました。ありがたく受け取ります」


 そう言って私は休憩所から外に出る。外から目に入ったマンムーナは雷撃の破壊によって無残な姿に変わっていた。昔だが、私もお世話になった町である。思いでのある町の無残な姿に、私の胸が痛むのを感じた。


「キータ! もう大丈夫なの?」


 呆然と立っていた私に声をかけたのは、同じ階位であるシトラー・ホルケットであった。白い髪を短く揃えた彼女は、私と年が近いこともあり気心が知れた仲である。


「ええ。もう大丈夫です」

「そう、良かった! キータも気をつけないと。変なことでカルトロリア王子の気に触れることなんかするから! 注意しなくちゃ駄目だよ!」


 変なことか……。街も、人も、文化さえも破壊し尽くされたことを変なことを言う彼女は、やはり貴族なのだろう。私とは見える世界も、規律も倫理も違うのだ。


 それを理解したうえで、私は貴族と付き合いを取らなくてはならない。

 

 一人勝手に頭を悩ましている私に、シトラーは心配そうな顔で「大丈夫?」と訊いてくる。私は「問題ない」と答え、何か私に仕事がないのかを訊いた。


「今のところは残党狩りかな? いたとしても雷撃でかなりの深手を負っているのは間違いないし。それほど難しい任務ではないよ。でも、キータは今起きたばっかりだから、私と一緒に回ろうよ」


 そう一方的に決めて、シトラーは私の腕を掴んだまま、崩れた建物街たてものがいの所へ引っ張っていく。私の性格を知っている彼女は、私に休めと言っても無駄なことが判っている。だから、せめて自分の目の届くところに置きたいのだろう。


 貴族ならではの倫理観の違いがあるが、それでも彼女は優しい人間だなとつくづく思う。とこどき、彼女が貴族でなければ、本当の友達になれたのになと思うことがある。

 失礼なことは判っているが、それほど私にとって貴族という生物は腐っているのだ。



◇ ◇ ◇ ◇



 僕の名前は、ツバト。

 自分の名前を確認した後、僕は自分にダメージがないのかを確認し、見事五体満足なことを把握して、ようやく腰を下ろすことができた。


 突如、ガラクタの町を襲った雷撃。

 魔法というものを学園で繰り返し学んだ僕だからこそ、無事でいられたのかもしれない。学園に学んだ知識が、まさか異世界で役立つとは思わなかった。


 僕が行ったことは、魔法による結界だ。結界にも色々と種類があるが、今回行ったものは、前の世界で翡翠の髪の少女、ハスナが使っていた風を身に纏う技を想起イメージしたものである。

 雷撃が直撃する前、僕は全身に魔力を纏った。意図的にエネルギーの逃げ道を作ったその魔力の鎧は、雷を体に通さずに地面へと送ることができた。


 問題なのは、雷撃によって破壊された建物群の倒壊を防ぐことだった。一度に二つの対処ができなかった僕は、見事にガレキに襲われた。


 十分間。少しの間、気を失っていた僕は自分の身の安全を確認し終わり、現在に至る。


(それにしても…………)


 僕がガレキの中に身を隠しているのだが、そのガレキ越しに人間の、それも複数の気配を感じていた。しっかりと二足歩行する彼らは、どうみてもガラクタの町の住人とは思えなかった。


(となると、あいつらは『雷撃』の魔法を放った側の人間か)


 消去的に考え出されたその答えはズバリ当たっていた。しかし、ツバトはそれ以上の思考をすることはなかった。これ以上の推測は妄想の域である。


 だから、それ以上の推測をするために、彼ら会話、服装、仕種からどこの国の者か、どのような集団か、どのような目的があって破壊活動を行ったのか。その情報を集めることにした。


 冒険者時代の『聞き耳』という森や樹海といった魔物の気配を探る技能を行使する。己の集中力を絞ったその技のおかげで、彼らの会話が耳に届く。


『いや、見事に破壊されてるな。さすが、カルトロリア王子の『雷撃』だ。俺が魔力増幅装置を使っても、こうはならねえぜ』

『当たり前だろ。お前が使ったところで、せいぜい中規模魔法しかできねえよ。あれは、王族だからこそできる規模の魔法だぜ』

『判っているよ。ああ、暇だな。本当に残党とか出てきてくれねえかな』

『おいおい。余りそんなことを言うもんじゃねえぞ。王子の耳に入ったらどうするんだ?』

『おっと、いけねえ。そうだった、あの王子は地獄耳で有名だった』


 なるほど。幾つか分かった。この町を破壊した『雷撃』は王子の魔法らしい。そして、今は残党狩りを行っている。


 身の危険があることが判った僕は、とりあえず雷撃が届かなかったであろう『地下牢』へ向かった。この町の五つのルールを破ったものが行く場所。落伍者より、さらに落ちていった『失格者』が住まうところへ僕は足を進めた。

この小説を載せて一年が経とうとしています。

いや、よく放置しなかったなと思います。しかし、もう少し話しを書きたかったなと思います。いや、週刊で書く漫画家さんがどれだけ凄いか本当に分かります!

前の投稿のさいのも、同じような文を書いた気が…………。

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