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短編集  作者: スズムラ
彼氏×彼女-青春中-
2/3

ゆっちゃんとスズアキの場合~脳内戦争~

恋愛ベタ少年少女のじれったいラブストーリー(自分内イメージ


 夏前。そろそろ、暑くなってくる頃合いの季節。

 体育の時間後。

 体育館から教室に向かう、大半のクラスメイトは何もせず階段を上ってる途中だろう。

 反面クラスの数人は残り道具の片付けをしてる。黒羽(くろば)冬子(とうこ)はその片付けを行っていた。

 冬子はクラスでもあまり明るい方ではなく、むしろ暗い方である。腰まであり全て切りそろえられた真っ黒な黒髪と青白い肌という陰気な容姿から暗い印象を持たれ、近寄りがたい殺気を放ち彼氏以前より友達さえ居ないの高校生になっての現状。

 ボール籠を倉庫内に運ぶ。だが、積まれたボールが転げ落ちる。

 小さな声で「あっ」と言い、急いで拾おうとするが、

 ――ボールが消えた。

 上を見ると、背格好が良く、恐らく170㎝後半か、180㎝ぐらいである鈴原(すずはら)秋人(あきと)。爽やかで気さくな人柄を持ち、クラス内で冬子とは正反対で中心的な存在でこの風格(イケメン)のためモテる。所々は跳ねが目立つが押さえめなで茶髪であり、顔つきは高校生であるがが、少し幼さを残した童顔で、目つきは丸い大きな双眸を持ち、いかにも優しそうだ。

「大丈夫?」

「はっ!す、鈴原さん!?」

「あれ?黒羽さんと話のって……もしかして初めて?入学以来からずっと?あれ違ったっけ?違ったらごめん」

 頭を悩ませた。

「……そうです」

 と、冬子は下を向き無表情のままだ。

「顔を上げなよ。せっかくの美人が勿体ないよ」

 と、腰を下ろししゃがみ冬子の頬に手を当てる。

「そうやって。女を口説いてるの?」

 鈴原は大きな双眸をまた、大きく見開く。

 冬子は自分が嫌いだ。その為、自分を褒める奴は哀れみ無理やり褒めてるのだと、思っているのだ。

「そんな事ない。黒羽さんは美人だし可愛いよ。だって、この髪ちゃんと手入れされてキューティクルを持ってるし、肌だって潤ってる」

「なっ?!」

 冬子は女子らしく髪にもいいシャンプーを使い、肌にも気を使っている。今まで誰にも築かれなかった。

「(は、初めて築いてくれた……)」

「オレは。どんなに影でも努力している女の子は大好きなんだ」

 と、ニコッと笑った。恐らく、世の中の女は一殺だろう。だが、冬子は違った。

「口説く暇あるならボール返して下さい」

「あっ!」

 と、人差し指を立てる。

「やっと。まともに会話してくれた」

「????」

「それよりボ――」

「今日の昼食の時間暇?」

 冬子の言葉を遮るように割って入った。

「それ――」

「ねえ。どうなのさ?」

「友達いませんし、明いてますよ」

 言葉攻めをされ自棄になった。鈴原は「ヨシャッ」とガッツポーズをした。

「でさ、その時間に屋上来てくんない?オレ待ってるからさ」

 と、それだけ言い、手に持つボールを籠の山に戻し体育館を出て行った。

「(な、なんなの?!)」

 冬子は籠を戻すと、体育館から出て教室に向かった。


 昼前の授業だ。

 教師の話そっちのけで考え込んでいた。

「(一体何なの?鈴原は何を考えてるの?またイジメ……それなら行かない方が……でも、約束を破るわけにもいかない......)」

 ブツブツと脳内会議を行う。

「(あーもう!どうしろって言うの)」

 とうとう自分に自分に怒り出した。表の感情を押さえるのは得意な冬子は平然としたいつもの表情を浮かべている。

「(行くべか行かざるべきか。でも、本当に何かあればすっぽかすのはダメだし……でも、何かあっては……)」

 と、そうこうしているうちにいつの間にか授業終わりのチャイムが鳴り響いた。

 その音にはさすがに驚き我に返る。

「(あ、あぅ~~ど、どうしよう……今日一段と授業終わるの早くない?)」

 学級委員が号令をかけると、全員が机から立ち上がり、「ありがとうございました」とクラス全員が言った。

 号令が終わり、教師が教室から出ていくと、勢いよく後ろを振り返ると、後ろの席の鈴原がいつの間にか座り頬杖をしながらウインクをした。

「(ど、どうしよう……あーもういい!)」

 鈴原の近くで男子の声がする。

「スズアキー!」

 と、鈴原の愛称で呼ぶ。

 男子生徒はいかにも人生楽しんでそうな、雰囲気があり明るい印象があり誰とでも親しくなれそうな人だが、冬子にはまぶし過ぎた。笹谷(ささや)春樹(はるき)。ササヤンと呼ばれているクラス男子の中心的人物だ。

「昼一緒に食おうぜ」

「今日はパス。約束してるから」

「ふぅーん。珍しいな」

 そう言いながら、頭に手をやる。

「なら。しゃーねーか。また今度な」

 スタスタと自分の机に戻った。

「(なんで。引きさがる。そしたら潰れたかもしれないのに)」

 と、内心で愚痴をこぼす。

 そうこうしている中に鈴原が机から立ち上がる。恐らく、約束の場所に行くのだろう。

 渋々向かう事にする。昼なので、弁当を持ちながら教室を抜け屋上へ続く階段を上り、扉をあけた。

 大海原の様に広がる透き通った青空が一面に広がる。今日はギラギラに照らす太陽は暑すぎず心地良い気候だ。

「よっ」

 と、ドアを開けた真横に左手に弁当を持ち、右手に箸を持ち、壁にもたれかかり胡坐をかき座っていた。

「呼び出しておいて……」

「いやさ。来てくれないかと思ってさ」

「まあ。そのつもりだったけど……さすがに、すっぽかすのは嫌だったから……」

「呼んどいてありがとな。あ。でも、ちょっと待って全部食ってからで……」

 と、何時もと違う馬鹿みたいな発言をした。

「いいよ。私も食べるつもりだったし」

 その隣に座り、スカートの上に弁当を広げ、食べ始めた。

「じふんで(じぶんで)、ふふってるの(つくってるの)?」

 口の中にめいいっぱい詰め込みリスの様に頬がふれ上がり、口の外にエビの尻尾が見えている。それを見て冬子は中学校以来初めて笑った。

 鈴原は口の中のものをエビの尻尾ごと飲み込み、

「あ。笑った」

 自分が笑っている事に築いた。

「笑った顔も可愛いね」

「……嘘だ」

 顔をそらした。

「嘘じゃない」

 だが、鈴原はマジマジと見つめた。

「暗くて怖くて近寄りがたい……」

「そんな事ない。現にオレはここに居る」

「ならどうしたいの?」


 ――君のこと、黒羽冬子が好きなんだ。


「えっ」

 聞き間違いじゃないか耳を疑った。

「あー恥じぃ~」

 と、さっきまでの顔が赤くなり、顔を上げ口元を手で押さえた。

「あ。へ、返事は今じゃなくてもいいから」

 鈴原には珍しくしどろもどろになっている。

 まだ、茫然としている。自分よりも鈴原にはふさわしい女子がいるのに、

「どうして私なの?」

「一目惚れをしたから。君のその清楚な感じに惚れたんだ」

「え」

「馬鹿だよな」

「周りの目が……」

「そんなの関係ない。冬子が好きな気持ちの方が大きいから」

 もう、自分でも何を言ってるか分からず混乱している。

「了承します」

 と、二カッと笑った。


 高校2年の夏。

 それから、冬子と秋人は付き合い始めた。

 絶賛青春中!


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